千年来の超巨大地震

 (2011年3月17日作成)

 東北地方太平洋沖地震は、これまで日本周辺で発生した最大規模の地震です。
 869年7月13日(貞観11年5月26日)夜、三陸沖で発生した貞観(じょうがん)地震以来の大地震でした。貞観地震のマグニチュードは8.3±1/4で、城郭・倉庫などが倒壊し、人は倒れて起き上がれないほどの揺れでした。多賀城では津波により死者が1,000人に及びました(宇佐美龍夫,1996,新編 日本被害地震総覧.33p, 東京大学出版会)。

 今回の地震では、何と言っても津波による犠牲者が1万人を超える事態に深い悲しみを覚えます。
 活断層のトレンチ調査や津波堆積物の調査に関わってきたものとしては、もう少し犠牲者を減らすことは出来なかっただろうかという気持ちが強いです。

 1983年の日本海中部地震、1993年の北海道南西沖地震、1995年の兵庫県南部地震、2003年十勝沖地震などの調査にも携わりました。これらの地震では建物の崩壊、津波の想像を絶する破壊力を目の当たりにしました。

 陸上を上ってくる津波は、波ではなく激流です。50cmの激流に飲み込まれたら大人でもバランスを崩します。津波にさらわれるというのは激流に飲み込まれると言うことです。そして、この激流では壊れた家の柱や屋根などが一緒に流れてきます。これにぶつかれば怪我をしますし、気を失うこともあるでしょう。とにかく「津波てんでんこ」で高いところに逃げることです。

 北海道太平洋沿岸での津波堆積物調査では、1600年代(17世紀)に巨大津波が発生していて、このような巨大津波が400年くらいの周期で起こっていることが分かりました。この巨大津波が北海道太平洋沿岸の湿地を遡上する様子は、今回の津波で被災した仙台市若林付近の低地の浸水状況とそっくりと感じます。

 今回の地震を機に、本当に災害に強いまちづくりを考える必要があります。それは、防潮堤や堤防を強化するということだけでなく、都市計画そのものから考え直すことが大事だと思います。その際、どの程度の災害に対応できるようにするのかという判断が重要になります。すべてを構造物で対応するのではなく、一定の規模以上の災害では避難態勢を整えて、とにかく人命を救うことに焦点を絞る必要があるでしょう。

 そのために地質技術者、土木技術者の果たす役割は非常に大きいと思います。土地の条件に適合した町並みの配置から始まり、多少の地震では壊れない公共施設や住宅の建設、避難態勢の一層の整備、災害についての啓蒙など、やるべき事はたくさんあります。


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