2012年が明けました.
札幌のお正月は,私が経験したことがないほどの雪が積もっています.私は札幌に来て約50年になります.
北海道の釧路と根室の中間付近に浜中町があります.ここには霧多布湿原があります.この湿原の中を調べた結果では,海岸から約3kmまで津波堆積物(Ts-3と呼ばれる)が確認されています.
今回の東北日本太平洋沖地震の時に,仙台空港を含む仙台南部の低地に津波が浸入していく様子がとらえられていますが,まさにあの状態が,北海道東部太平洋沿岸で17世紀に起こったのです.
この津波堆積物は,樽前山の1667年(Ta-b)と有珠山の1663年(Us-b)のプリニー式噴火の降下火山灰の直下にあります.つまり,この大津波を伴う地震が発生したのは1660年のちょっと前です.広域的な津波堆積物の対比によって,北海道東部太平洋沿岸では平均400年間隔で大津波が発生しているので,現在は,次の大津波がいつ発生してもおかしくない状態にあると言えます.
東海,東南海,南海,日向灘沖から場合によっては琉球海溝を含む南海トラフで巨大地震と津波が発生する可能性もあります.その場合の被害は想像を絶する甚大なものとなり,日本が国家としての機能を長い期間にわたり失う可能性があります.
日本の人口の将来予測はいろいろありますが,2025年で人口総数1億2千万人程度,2050年には同1億人を辛うじて保つか,9.5千万人程度まで減少するとされています.
地質調査の役割は,このような状況の中で重要性を増すと思います.計画段階でどれだけ精度の高い情報に基づいて設計できるかが,信頼性があり経済的な構造物を造る鍵だからです.
また,事業で発生する負の側面をどれだけ正確に予測するかも重要な役割になります.それには,地質だけでなく化学や生物学を含めた総合的な知識が必要です.
考え方を大きく転換して,身の丈に合った生活を送れる環境を整えることが,これからの大きな課題だと思います.