2014年11月22日長野県北部の地震

(2014年11月24日作成/同11月27日追記)

 2014年11月22日22時08分にマグニチュード6.7(暫定値)の地震が発生した。最大深度は長野市や小谷村,小川村などで6弱を記録した。震源の深さは約5kmで,白馬観測点で南東方向に約29cm移動し,上下方向の約12cm沈降した。震源近くには,糸魚川ー静岡構造線活断層系の神城断層があり、この一部が活動した可能性が高いとされている。余震域は姫川沿いに小谷(おたり)村から白馬村まで約20kmにわたって分布している。
(http://www.jishin.go.jp/main/chousa/14nov_nagano/index.htm 参照)


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神城断層のトレンチ調査

 1995(平成7)年11月に神城断層のトレンチ調査(白馬トレンチ)が,産総研地質調査総合センター(当時,地質調査所)によって行われた。このトレンチ調査は,糸魚川ー静岡構造線活断層系の一連の調査の一つである。
 深さ5mほどのトレンチの底近くに,ほぼ水平の低角逆断層が現れた。上位には泥炭層があり見事に撓曲していて,上盤側が東から乗り上げたことを示している。トレンチの位置は,北緯36.654度,東経137.857度付近の水田の中である。
 このトレンチの北面のスケッチは,奥村ほか(1998)に掲載されている。

 奥村ほかによると,神城断層の最新活動期は1538年前以降(西暦460年以降)で,トレンチ調査によって確認された4回の地震の平均再来間隔は,約1,100〜2,400年とされている。つまり,現在は神城断層が活動してもおかしくない時代であったことになる。
 今回の地震が,神城断層の活動だとすると,調査が行われた活断層が動いた初めての例ではないかと思う。

 なお,神城断層の写真は,下のウェブサイトに載っている。
(http://www.solid-earth.com/blog/2010/05/21/露わになった恐ろしい断層の姿3/)
 この写真は,トレンチの北面のもので右側が東で,東から西に上盤側が低角で乗り上げている。

 地質ニュース529号(1998),64−65に「地質標本館だより,No51《として神城断層(白馬トレンチ)のはぎ取り標本の写真が載っている。この写真は,トレンチの南面のもので左側が東になる。

糸魚川ー静岡構造線活断層系の活動

 糸魚川ー静岡構造線活断層系が活動した場合の影響は,かなり大きい。
 この断層系は,全長140〜150kmあり,北から神城断層・松本盆地東縁断層からなる北部,牛伏寺断層・諏訪断層群・釜無川断層群・下蔦木断層からなる中部,白州断層・下円井断層・市ノ瀬断層群からなる南部に分けられている。
(http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/katsudanso/f041_042_044_itoshizu.htm 参照)

 このうちの北部と中部の100kmの区間が,約1,200年前に一緒に活動したと考えられている。マグニチュード8前後の地震が約1,000年おきに発生している可能性が高いとされている。
 この断層沿いには,北から大町,松本,諏訪,甲府と言った都市が並んでいる。
 JR大糸線は何カ所かでこの断層系を横断している。
 長野自動車道は安曇野インターチェンジの北,明科トンネルに入る手前で横断する。諏訪湖は東西両岸の横ずれ断層(岡谷断層群と諏訪断層群)で形成されたプルアパートベイズンで,西岸沿いに通る中央自動車道は断層沿いである。

 今回の地震では,狭い範囲で大きな被害が発生しているのが特徴のような印象である。この断層系が活動した場合,住宅はもちろんであるが,道路や鉄道,その他のライフラインへの影響は非常に大きなものとなると予想される。
 今後どのような地震が起こるのか,注目される地域である。

参考文献


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