イチャンコッペ山溶岩の下位には,おそらく漁川層の金山沢頁岩層(黒色の泥質頁岩)が分布していて比較的なだらかな地形を呈しているものと考えられる.また,周辺には支笏火砕流堆積物も広く分布している.
図 イチャンコッペ山ルート図(TrailNoteにより作成)
国道453号のヘアピンカーブから上り,尾根伝いに頂上に至る.岩場は全くなく遊歩道のような登山道である.距離が長く多少の上り下りがある.785m峰から頂上までの道は支笏湖を眺めながらの散歩である.帰りの最後の急な下りはちょっと辛い.
札幌から国道453号を支笏湖に向かい支笏湖畔へ降りて行く最初のヘアピンカーブの手前右側に駐車場がある.この駐車場から少し下った道路反対側にイチャンコッペ山の入山口がある.
標高370mの登山口から標高550mまでは南南東に張り出した尾根上の道で,ほぼ直線の急な登りである.この付近はイチャンコッペ山の頂上も含めて恵庭岳の火砕物で覆われているため,露頭はほとんどない.わずかに転石があるだけである.
最初の急な登りを過ぎると,なだらかな道が続く.足下は石が転がっていないので歩くのが気持ちよい.785mのピークが見え出すと頂上かと思うが,頂上はさらに,ここから30分ほど歩いたところにある.この785mピークには,かつて反射板があったそうであるが今は更地になっている.
ここから頂上までの道は,支笏湖とその向こうの風不死岳,樽前山,恵庭岳,さらに徳舜瞥山とホロホロ山を見ることができる.イチャンコッペ山の頂上は,平坦で笹原に覆われている.
写真1 イチャンコッペ山の入山口
国道453号のヘアピンカーブの先に入山口がある.中央右手の電信柱のところが登山道入口で,登山道は左手の擁壁がある崖の上を登っていく.右手前に駐車場がある.
写真2 アオイスミレ
目立った花はないが,麓付近はスミレが多い.
写真3 マイズルソウ
最初の急登の標高475m付近に咲いていた.
写真4 恵庭火山の降下軽石
この付近一帯の表面を覆っている恵庭火山の降下軽石である.おそらく,1万7千年前に恵庭岳が噴火した際の「恵庭a降下軽石」と考えられる.標高540m付近.
写真5 ミヤマオダマキ
最初の急登が終わった標高580m付近に二輪だけ咲いていた.
写真6 ズダヤクシュ
花は小さいが可憐な花である.前の写真とほぼ同じ場所である.漢字では「喘息薬種」で,喘息に効くのだそうだ.
写真7 785m峰
785m峰手前の鞍部から望む785m峰である.火山らしい山容を示す.この付近一帯の笹は枯れかかって茶色になっている.
写真8 空沼岳
多分,空沼岳である.北西―南東に延びる尾根を南東側から見るとこのような形になるであろう.尾根の左右とも巨大地すべりの滑落崖となっている.こんな,独特の山容を示すとは予想だにしていなかった.前の写真とほぼ同じ場所から.
写真9 軽石
785m峰の急登手前に落ちていた軽石である.恵庭火山の噴出物であろう.
写真10 イチャンコッペ山溶岩
黒い輝石の斑晶が特徴的なイチャンコッペ山溶岩である.785m峰手前の680m付近で,露頭はなく転石である.
写真11 恵庭岳の爆裂火口
785m峰手前から見た恵庭岳の爆裂火口である.785m峰を過ぎると恵庭岳は一時見えなくなる.
写真12 ミヤマツツジ
多分,ミヤマツツジである.盛りを少し過ぎているが見事な色である.785m峰の直ぐ手前である.
写真13 風不死岳と樽前山
頂上から見た風不死岳と樽前山である.樽前山の独特のドームが雲の間から見えた,
写真14 恵庭岳と徳舜瞥山
手前から785m峰,恵庭岳,左に徳舜瞥山とホロホロ山である.支笏湖の向こうの平坦面は支笏火砕流堆積物の台地である.
写真15 支笏湖と風不死岳
785m峰からの下り道である.トレイルランニングの人が下からあがってきている.この人には,下る途中であっさりと抜かれてしまった.支笏湖を眺めながらの行き帰りは,得がたい風景を見ることができる.
老人トリオではあるが,ゆっくりと風景を楽しみながら6時間20分の登山であった.標準登山時間は3時間50分である.
参考にした図書など
- 谷口弘一・三上日出夫編,2005,北海道の野の花 最新版.北海道新聞社.
- 土居繁雄,1957,5万分の1地質図幅および同説明書.北海道開発庁.
- 山田秀三,2000,北海道の地名―アイヌ語地名の研究 別巻.草風館.