若い地質技術者へ

 (2020年7月13日作成)

はじめに

 

 1974年に地質コンサルタント会社に入り,路線,ダム,地すべり,トンネルなどの調査に従事してきた.その中で得られた知識をできる限り公開しようと,2001年4月からホームページ「地質と土木をつなぐ」を開設し,いろいろな記事を書いてきた.
 2002年には「山岳トンネルの地質調査」と題した冊子をまとめ,2015年4月にホームページで公開した.
 2006年と2007年に,先輩の後を継ぐ形で大学工学部の2年生を対象とした「応用地質学」の講義を受け持った.この講義資料をもとに2016年9月に「土木地質調査のための基礎知識」をホームページに公開した.

 2010年1月に地質リスク学会が発足した.地質リスクを体感するには,自分が調査した現場の施工状況を見るのが一番である.地質の見立てや,それに対する対応をどこで間違えたのかを直につかむことができる.「地質と土木をつなぐ」は,そのような問題意識で始めたものである.

 現在,様々な新しい調査手法が開発され現場で用いられている.いわゆる暗黙知もAIを活用することで現場に適用出来るようになってきている.そのような先端技術とは別に,やはり人間の第六感を含めた感覚を磨いておくことは,現場の問題点を抽出するには大変重要だと考える.
 そのようなことを考えると,失敗例を含めて経験してきた現場の具体的事例を紹介するのも意味があるのではないかと考える.

 最近は,税金を使って開かれている「専門家会議」の議事録を概要しか公開しないといったことが行われている.あるいは,記録そのものを残さないということも行われている.これは,知的財産の大きな損失である.
 一方で,業務に関わる情報を漏らしてはならないという守秘義務がある.技術士法の第四五条は「技術士または技術士補は,正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなつた後においても、同様とする。」と規定している.ここで言う「秘密」とは何なのか判然としない.国や自治体から発注された業務は報告書として提出される.この内容は,「秘密」には当たらないであろう.おそらく,他者の権利や利益を侵害するような内容について言っているのだと思う.

 と言うことを考えながら,若い地質技術者に伝えたいことをできるだけ具体的に述べてみようと思う.
(つづく)

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