佐幌岳

 (2020年7月18日山行:2020年7月20日作成)

概 要

 

 佐幌岳は日高山脈の北東端にある標高1060mの山である.北から東の斜面はサホロリゾートスキー場になっている.標高640mの狩勝峠から尾根伝いに登山道がついている.上り下りを繰り返しながらのちょっと足場の悪い遊歩道と言ったところである.

 登山道に出現する地質は,ホルンフェルス化した粘板岩(混在岩),岩相の異なる中新世の花こう岩それと,斑れい岩である.佐幌岳の山頂付近は,細粒の黒雲母角閃石花こう岩である.この花崗岩類は,十勝ダムの北東にあるピシカチナイ山周辺に分布しているほか,南へはオダッシュ山,日勝峠の東側,剣山や帯広岳周辺に分布している.道東自動車道の広内トンネルは,この花こう岩中に掘られたトンネルである.


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図1  佐幌岳登山道(TrailNoteにより作成)
 狩勝峠の駐車場に車を置くことができる.尾根伝いに上り下りを繰り返し頂上に向かう.登山道が「くの字」に曲がっているコブは,桜山という表示板が出ている.国道38号を上ってくる車のエンジン音が桜山付近まで,ずっと聞こえている.下の高度図で頂上の平坦面にある切り込みのような凹みは,スキー場側に少し降りて上ってきたためである.

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登山道の地質

 登山道は,ほとんど尾根をたどっていくので,あまり露頭はない.十勝平野側の急斜面の表層崩壊で少し出ているのと,幾つかあるコブの頂上付近で見ることができる.
 佐幌岳の頂上には立派な露頭がある.コアストーンの残存であろう.


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写真1 登山口
 狩勝峠のお土産物屋の国道側裏手に登山道の入口がある.この写真で道路の向こうに看板が一杯立っているところである.向こう側が十勝平野である.
 この日の峠は,車のライトが必要なくらい霧(雲)がかかっていた.登っているうちに,標高935mくらいで雲を抜け,周囲の山々を見ることが出来た.


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写真1 登山道入口の粘板岩
 入林届けの直ぐ先は急な斜面を登る.そこに出ている粘板岩である.ホルンフェルス化を受けて,硬質である.多分,黒雲母が形成されている.


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写真3 最初に出てきた花崗岩の転石
 標高715m付近の登山道に転がっている花こう岩の転石である.風化を受けているが石英が認められる.


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写真4 花こう岩露頭
 登山道の標高725m付近の東斜面に表層崩壊があり,風化した花こう岩の露頭がある.


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写真5 花こう岩露頭の近影
 風化して鉱物が砂状になっているが,原岩組織ははっきりと残存している.比較的粗粒な岩相で斑れい岩の分布域までは,この岩相の花こう岩が続く.


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写真6 中粒の新鮮な花崗岩
 標高842mのコブと778mの中間付近で見ることのできた露頭の石である.5万分の1地質図幅「新得」でいう黒雲母花こう岩の中の「やや斑状の花こう岩」であろう.


写真7 雲を抜ける.jpg
写真7 雲を抜ける
 標高949mの桜山の手前,標高935mで雲を抜けた.正面左は佐幌岳で,頂上のちょっと下にスキーリフトの鉄塔が見える.遠くにウペペサンケ山などの東大雪の山々が見える.


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写真8 斑れい岩
 佐幌岳の頂上から南西に延びる尾根の標高930mほどのコブ手前から斑れい岩となる.5万分の1地質図幅「新得」では,花こう岩体中に北北西−南南東方向の伸びを持った岩体(かんらん石はんれい岩)として描かれている.ただし,この岩相は細粒角閃石はんれい岩に酷似している.


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写真9 佐幌岳頂上
 南西に延びる尾根の最後のコブ付近から見た頂上である.頂上の尾根は北西−南東方向の伸びを持っていて,南東側から見るとゆったりとした山容である.


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写真10 角閃石黒雲母花こう岩
 頂上への最後の登りの標高990m付近から頂上まで,この花こう岩が分布している.


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写真11 頂上の花こう岩
 侵食作用により形成されたコアストーンの残存物であろう.一見モニュメントように見える.


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写真12 雲海
 十勝平野は一面,雲で覆われている.この下に佐幌川と佐幌ダムが見えるはずである.手前にスキーリフトの鉄塔が見える.


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写真13 頂上の花こう岩
 頂上には最大3mほどの岩塊が点在している.新鮮な角閃石黒雲母花こう岩である.


写真14 富良野岳から十勝岳.jpg
写真14 富良野岳から十勝岳
 十勝連峰の山々が一望できる.


写真15 夕張岳から芦別岳.jpg
写真15 夕張岳から芦別岳
 遠く左に夕張岳の巨大ブロック山塊,右に芦別岳である.中央の尖った三角の山は,蛇紋岩地帯の西にある1415m峰と思われる.

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