2022年8月5日から12日まで春採湖の湖底堆積物採取の手伝いをしてきました。
産業技術総合研究所・地質調査総合センター、島根大学・エスチュアリー研究センター、静岡県・ふじのくに地球環境史ミュージアムなどの研究者が行った調査です。
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湖底堆積物の試料採取には、空気圧入式ピストンコアラー(マッケラスピストンコアラー)を使いました。この採泥器は1958年にイギリスの堆積学者、F.マッケラス(F.J.H.Mackereth)が考案したもので最大4〜6mのコアが採取できます。
コアラー(アルミのアウターパイプと塩ビ管の採泥パイプ)と一体の「外とう」とよばれるドラム缶のような管を湖底に着底させた後、外とうの中の水を抜いて水圧で湖底に押し込んで反力とします。外とうに接続しているアルミのアウターパイプの中の塩ビパイプ(採泥パイプ)を圧縮空気で湖底に押し込みます。押し込んだ塩ビパイプは、外とうに空気を送ってその浮力で回収します。
外とうにかかっている水圧で、どの程度の反力が取れるか決まるので、水深が浅い場合は充分に押し込めないことになります。
今回、湖底表層付近の試料は、ロシア式ピートサンプラーを使いました。これは、特殊な形をしたハンドオーガーです。
作業状況を見ている側としては、コアラーが水上に浮かび上がってくる時がクライマックスです。
今回は、軟X線用の試料、地磁気測定の試料、放射性炭素年代測定の試料、珪藻化石の試料、DNA測定用の試料を取り分けました。
地磁気測定では、走磁性バクテリア(磁性細菌)による古地磁気の測定が可能です。
走磁性バクテリアは、地磁気のN極(南極)またはS極(北極)に向かって移動する性質を持っていて、化石として残っています。そこで、微小な磁気を計ることによって古磁気を復元することが可能なようです。
走磁性バクテリアは古くから知られていて、マイクロ磁気センサーとしての利用が考えられていました(例えば、松永、1989)。
今回の調査では、走磁性細菌による古地磁気測定やDNAによる環境復元など、びっくりするような手法があることを知りました。
春採湖は、釧路の炭鉱が周辺にあったため、かなり人工改変されています。また、湖の水はいつも濁っていて、水質改善のために浚渫が行われているようです。海水が湖に流入しないように、海に繋がっている春採川には可動式の堰が設けられています。
春採湖を一周できる遊歩道が設けられています。週末でなくても市民が散歩やジョギングをしていて、親しまれている場所だと感じました。
最後に、今回の調査で得られた試料についての分析などは、これから行われます。この文中には、私の勘違いや思い違いがあるかもしれません。その責任は、全て私にあることをお断りしておきます。
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