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ホテルで朝食を取る.午前10時15分くらい.朝食は4つの中から選ぶようになっていて,日本語併記のメニューである.この日は一番無難そうなやつを頼んだ.ハムとスクランブルエッグとジャガイモの千切りを茹でて焼いたものである.一皿料理であるが量が多いのでこれで十分腹一杯になる.
12時にホテルを出発する.フェアバンクス校はホテルの北西2kmくらいの小高い丘の上にある.
昼の12時半くらいにSyun-Ichi Akasofu Building に入り,2階の実験室でオーロラ発生装置を見る.
空気を抜いて濃度を薄くした透明な筒の中で放電させるとオーロラが発生する.空気の濃さによりオーロラの色が変わる.また,わずかだけどもダンスをしているようにも見える.
ここまで案内してくれた人もオーロラ発生装置の説明をしてくれた人も日本人である.ここでは多くに日本人が働いている.中には,長く居て顔つきが外人っぽくなっている人もいる.
次は,玄関にホールに置いてあるオーロラプラネタリウムを見る.コンプレッサーで空気を送り込んで膨らませたドームの内面の壁にオーロラの動画を映し出す.クリアリーサミットやチェナ温泉で撮影したものもある.数時間分を5分程度に短縮して写すので忙しい.それでもオーロラの雰囲気は伝わってくる.
アラスカ大学構内 赤祖父俊一ビルからフェアバンクス市街を望む.左端に見える半ドーム状の建物が博物館である.霧が出ていて残念ながら遠くは見えない. |
赤祖父俊一ビルの入口 真新しいビルである.入って直ぐのロビーにオーロラプラネタリウムのドームが置いてあった. |
オーロラ発生装置 上から電子ビームを発射して下の半球との間でオーロラが発生する.空気を抜いて希薄にするとオーロラが見えるようになる. |
オーロラプラネタリウム コンプレッサーで空気を送り膨らませる.入口はファスナーで開閉するようになっていて,素早く出入りしないとドームがしぼむ. |
赤祖父俊一氏のレリーフ 玄関ホールの入って右側の壁に掲げられている. |
このSyun-Ichi Akasofu Building は赤祖父氏が総合的な北極研究を行っていたことを讃えて命吊されたという.レリーフが設けられている.レリーフには次のように書かれている.
赤祖父俊一
所長,地球物理学研究所
創設者,所長 特別な卒業生,学者,開拓者,指導者
この建物は赤祖父博士の国際的な科学的融合を構築した
大学はこの建物にSyun-Ichi Akasofu Building と
「科学における進歩は,効果を失ったパラダイムを繕うことによってではなく,投げ捨てることによって,そして新しい考えを生み出すことによって達成される.《 |
福西氏のビデオを見る 座っているのは福田正巳氏で,このあとの凍土トンネルの案内をしてくれ,翌日のウォルター・ニューマン氏の講演でも司会を務めた. |
放送大学で作られたもので,語るのは東北大学理学研究科の福西浩教授である.福西教授はオーロラや磁場擾乱現象を研究している人で地球とその周辺の宇宙空間の相互作用を解明する必要があると考えている.東北大学インターネットスクールに福西氏の講演動画がある.
(http://www.istu.jp/contents/special/fukunishi/real.html)
講演中の赤祖父氏 |
質問に答える赤祖父氏 |
午後1時40分から別の講義室に移って赤祖父氏の講演となる.
なお,この講演の内容を詳しく知りたい場合は,赤祖父俊一,2006,北極圏のサイエンス.誠文堂新光社.を読むことをお奨めする.
赤祖父市は長野県佐久生まれで母が「オーロラの唄《をよく歌っていた.中山晋平作曲,北原白秋作詞の「行こか戻ろかオーロラの下を《という歌詞である.
オーロラはアラスカのネイティブの間では死んだ人の精霊だと考えられている.カーテン状になり下は緑色で上の方は赤くなる.フェアバンクスではゴールドラッシュの時代,オーロラは金の蒸気が地表から立ち上っていると考えられ,オーロラが地面に着くところに金があると信じられていた.
成層圏は10km,オゾン層は25km,夜行雲(a noctilucent cloud)は80km上空に現れる.
オーロラ研究のために,ISO100万のビデオで撮影する.
オーロラというのは上層大気での放電現象である.では,高速のプラズマを発生させる発電機はどこにあるのか.太陽から100万℃のプラズマが地球に向かって飛んでくる.地球は磁場を持っているので,このプラズマは地球の磁気圏に沿って流れる.この流れが電気を発生させ地球に向かう電子ビームを作る.このビームが地球の磁力線に沿って北極と南極に集中し空気の分子と衝突してオーロラが発生する.
太陽系に近い恒星の周りの惑星で緑色のオーロラが発見されればそこには酸素がある証拠であり,生命が発生している可能性がある.そんな研究も始められている.
午後2時半頃講演が終わる.
凍土トンネルはアメリカ軍の管轄(US Army Corps of Engineer)で,寒冷地調査技術研究所(Cold Regions Reserch & Engineering Laboratry) となっていて,それをアラスカ大学と共同で研究フィールドとしているようだ.
トンネルは比髙約10mの平坦な段丘面の下に掘られている.大きさは幅約3m,高さ2m程度で真ん中に通路が設けられている.見学で入れるのは入口から200mくらいで,それより奥は崩落が激しく立ち入り禁止になっている.
堆積物は角礫混じりの細粒土でかなり速い流れで堆積したものであろう.入って直ぐの所に鏃やバイソンなどの骨の化石が壁面に露出している.パレオモンゴロイドが住んでいた証拠だという.さらに進んでいくと幅2mくらいの見事な氷楔(アイスウェッジ)が見られる.アイスウェッジが形成されている砂礫層の年代が4.5万年前でその上の堆積物が1.2万年前である.この頃にベーリング海が陸続きになり人類が渡ってきたと考えられる.
アイスウェッジの成長速度は1年間に約1mmであるという.氷期の頃は現在より10℃ほど気温が低かったと考えられている.アイスウェッジの上部に気泡のたくさん入った氷がある.これは気温が一度上昇した時の水溜まりにできた氷だそうだ.
このトンネルのサンプルを使って古環境の復元を精度良く奥なうのが研究所の主な目的なのだろう.トンネルの入口に小さなプレハブの建物がある以外施設はない.
凍土トンネルの入口 正面がトンネルの入口で,比髙約10mの平坦面の下に掘られている.左端のプレハブの建物が事務所になっている. |
凍土トンネルの入口 人一人がやっと通れる扉から入る. |
トンネル内で説明する福田氏 中は有機物の臭いで最初はたじろぐが直ぐに慣れた. |
トンネル全景 真ん中に通路があり,両側のスペースがサンプリングや観察に利用されている. |
アイスウェッジ 幅は最大2m 程度である.1年に1mm 成長すると1,000年でこの程度のウェッジが形成される. |
アイスウェッジ拡大 縦に気泡が並んでいる.年輪みたいなものか. |
動物化石 人のいた証拠と大型動物の化石が同時に出土する. |
アラスカ横断原油パイプライン アラスカは地震が多いのでその対策を施してある.また,夏と冬の90℃近くの温度差による金属の延び縮にも考慮している.直径1.2m で日本製とのことである. |
このパイプラインは70℃に熱した石油を北極海に面したプルドーベイからアラスカ湾の奥のプリンス・ウィリアムズ湾にあるバルディーズへ送っている.延長は1,300kmでブルックス山脈,アラスカ山脈を越えて続いている.当初70℃であった石油はバルディーズでは17℃になっている.この石油のもうけは州民に還元され昨年(2008年)は約36万円が貰えたという.
午後4時半から5時まで博物館の見学とお土産を買う時間になった.
博物館は駆け足で見ただけであったが,マンモスの骨と歯に触ることができた.
ツアー旅行というのはどうしても時間に縛られてしまう.この博物館などはじっくりと説明を読みながら見たかったものである.
マンモスの頭部と牙 |
マストドンの歯(左)と マンモスの歯(右) |
マンモスの骨 この骨とマンモスの歯は触って良いよと書いてある. |
バイソンの遺体 凍土から掘り出されたバイソン.中期〜後期洪積世にはヨーロッパからシベリア,北アメリカ,メキシコ北部にいたる大バイソン帯があった.これは大陸氷河を取り巻くようにバイソンが分布していたことを示しているのだろう. |
オーロラ撮影機 全天を撮影できるもので下に見える金属の半球で反射した映像を取り込むようになっている.オーロラプラネタリウムで見せて貰ったのはこの撮影機で撮ったのものである. |
午後7時から晩飯を食べる.スペシャルディナーとビールとワインでしめて70ドルくらいである.蒸した白鮭もビールも旨かった.
午後8時にプリントを受け取りに行く.ちょっと画面が荒いが無事写っていて一安心した.プリント屋のおばちゃんに「あんたのは露出が長すぎる《と言われ露出表をくれた.ISO1600だと2秒くらいで良いみたいだ.実は,フィルムを巻き戻す時完全に巻き戻せなくて,フィルムの端が出たままケースに収めたので未使用のフィルと区別が付きにくくなっていて,端の長さで撮影フィルムを推定して出したので予想が外れていたら2本ダメになるところだったのだ.
午後10時,今日もまたホテルを出発する.天気予想では今日は曇り空で,見れないだろうと言うことだった.予想通り,雲が厚くはっきりと見ることは出来なかった.しかし,雲を通してのオーロラの写真を撮ることが出来たし,うっすらとであるが頭の上に出たオーロラを採ることもできた.
雲の上に現れたオーロラ 肉眼ではぼやーっとしてよく分からなかったが写真だと雲の上に出ている様子が分かる. |
雲の上に現れたオーロラ 天気さえ良ければと思う. |
雲の上に現れたオーロラ かなり頭上近くに現れた. |
雲の上に現れたオーロラ 多分真ん中の明るい部分はカーテン状になっているのだろう.雲を通して踊っているのが分かる. |
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