「チバニアン」

 (2017年12月17日作成)

概 要

 「チバニアン」の露頭を見てきた。
 市原市田淵の養老川右岸の崖をつくっているシルト岩を主体とする地層である。前期〜中期更新世の上総層群・国本こくもと層とされていて,東北東−西南西の走向を持ち,北西に10°ほどで傾斜している。上総層群は半深海〜陸棚の環境で堆積したもので,その堆積速度は周辺に比べて小さいものの1,000年当たり数十cmであること,鍵層となる50枚以上の火山灰を含んでいることなどの特徴を持っている。また,この地層は,微化石を多く含んでいることも特徴である。
 このようなことから,更新世前期と中期の境界の国際的模式地として検討されてきて有力な候補地となった。

 2017年12月現在,第四紀更新世の中期(78.1万年前〜12.6万年前)と後期(12.6万年前〜1.17万年前)には,地層吊(時代吊)が付いていない。

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「チバニアン」露頭

 養老川右岸の高さ5mほどの崖に境界層が見えている。地層は全体に約10°で下流側(北)に傾斜している。走向は,ほぼ東西である。
 約77万年前に御嶽山が噴火したときの火山灰,白尾びゃくび火山灰層(Byk-E)が目印となっている。松山−ブリュンヌ極性反転境界は,この白尾火山灰層の約1m上である。


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図1  「チバニアン」露頭付近の河床
 左手の木が倒れかかっている影に境界層の露頭がある。地層は下流(手前)に10°ほどで傾斜している。下流から上流を見たものである。


図2 「チバニアン」.jpg
図2 上流から見た境界層の崖
 上流から見た境界層の崖である。奥の立て看板のやや上の筋が白尾火山灰層である。


図3 「チバニアン」 .jpg
図3 同じく上流から見た境界層
 崖の上部の筋が白尾火山灰層である。


図4 「チバニアン」.jpg
図4 境界層
 右から2本目の杉の木のすぐ横の小さな白い標識が白尾火山灰層E(Byk-E)である。この火山灰層付近を境に,下から逆帯磁帯,磁極遷移帯,正帯磁帯と変化する。


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図5 白尾火山灰層
 数cmのByk-E火山灰層である。この上にも火山灰層がある。

「チバニアン」露頭への行き方

 今回は千葉駅から内房線に乗り,五井駅で小湊鐵道に乗り換えた。月崎を通過したのは午後3時頃で,もう現場に行く時間ではなかったので養老渓谷駅まで行った。
 小湊鐵道は上総牛久駅までは30分に1本程度あるが,上総牛久から先は約2時間に1本である。時刻表をよく見て行動計画を立てないと帰れなくなる。

 土曜日と日曜日・祝日は月崎駅からシャトルバスが現場入口の田淵会館まで出ているようであるが,運行している時期や時間を調べてから行くのが良い。

 小湊鐵道の月崎駅からでも,その先の上総大久保駅からでも県道清澄養老ライン(県道81号)を歩いて約30分である。県道からの入口には看板があるので注意して行けば間違えることはない。
 「チバニアン」周辺の地形を見るのであれば,上総大久保駅から歩くのが良いが最初に露頭の位置を頭に入れておかないと分かりにくいので,月崎駅から現場に行き帰りに上総大久保駅に行くのが良い。


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図6 「チバニアン」露頭への入口
月崎駅から歩いて約30分で入口に着く。右の電柱の下に「チバニアン」の看板がある。月崎駅から行った場合の写真である。(北緯35度17分51.16秒 東経140度9分2.60秒)


図2 「チバニアン」入口.jpg
図7 田淵会館
 右の建物が田淵会館で,その前に10台くらい駐めることのできる広場がある。ここからは歩いて行くが,道は良く整備されていている。この日,午前9時頃には6台の自家用車が駐まっていた。
 広場の先に日本とイタリアの国旗が掲げられていて,「チバニアン」を解説したチラシが置いてある。

養老渓谷

 養老川は,標高250mほどの丘陵の中を蛇行しながら流れ下っている。両岸は,ほとんど直立した崖で河床には岩盤が露出している。東北東−西南西方向に延びる地層の分布に直交するように,ほぼ北に向かって流れ下っている。
 養老渓谷付近では,典型的な穿入蛇行谷を形成している。現流路付近には5段以上の河成段丘が発達している。


図8 二階建てトンネル.jpg
図8 二階建てトンネル
 県道清滝養老ラインの弘文洞バス停から養老川沿いの中瀬遊歩道に向かう町道に掘られた共栄隧道である。上部に旧トンネルがあるそうである。


図9 養老渓谷.jpg
図9 養老渓谷
 弘文洞跡の下流にある大露頭である。上総層群・太田代おおただい層の砂岩泥岩互層(約百万年前の地層)と思われる。

参考にした図書など

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