めがねトンネル

 めがねトンネルというのは,二つのトンネルを接近して構築したもので,二つのトンネルの間にセンターピラーと呼ばれる隔壁を造り支保工や覆工の一部を共有するトンネルある.
 トンネルを2本並行して掘る場合は,一般にトンネルセンター間を30m程度(二つのトンネルの壁と壁の距離がトンネル掘削幅以上)離して相互の干渉を防いでいる.これに対して,めがねトンネルでは,センター間の距離が12m程度で二つのトンネルの側壁は1m程度の離れしかない.
 めがねトンネル採用の理由は,用地確保の困難さが最も多い.おそらく沖縄県が最も多く,資料が手に入っためがねトンネル38カ所のうち6トンネル(16%)が沖縄県にある.また,日本で初めて施工されたのも沖縄県の伊祖トンネル(1975年竣工,延長90m)である.

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図1 3導坑式めがねトンネル

伊祖トンネル以来の最も安全なトンネル構造である.側壁導坑先進トンネルを二つくっつけて中央の導坑を共用することで上半の脚部沈下を防止するという考え方である.

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図2 1導坑式めがねトンネル

福島県の小名浜港トンネルで最初に採用された方式で,ふたとのトンネルの相互干渉を防ぐために中央のみに導坑を掘削しセンターピラーを設置した.

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図3 無導坑式めがねトンネル

左の先進坑の側壁部の覆工を厚くしてセンターピラーの役割を持たせる.右の後進坑は先進坑の覆工に支保工を支持させる.二つのトンネルが構造的に結合している.


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1.めがねトンネルの特徴
2.めがねトンネルの日本での歴史
3.めがねトンネル設計の考え方
4.めがねトンネルから“超近接トンネル”へ

1.めがねトンネルの特徴

 2001年9月号の「トンネルと地下」に「わが国におけるめがねトンネルの頑丈と課題」(青木他)という報告が載っている.めがねトンネルの施工記事を収集・分析しているほか,設計・施工技術者にヒアリングを行っている.この報告を参考に,この記事を書くに当たって収集した資料を加えて,めがねトンネルの特徴を列記すると以下のとおりである.

(1)施工された個数
 2006年4月時点で施工されためがねトンネルは,38カ所の資料が得られている.この中には,2007年竣工予定の沖縄県の比屋根トンネルが含まれている.
 また,トンネル全線のうち,一部のみをめがねトンネルで施工したものが,北九州市の下到津(しもいとうず)トンネルや中央環状王子線の飛鳥山トンネルなど4カ所ある.

(2)施工延長
 これまで建設されためがねトンネル中では白川トンネル(阪神高速道路神戸山手線)の938mが最も長い.施工延長300m以下のものが全体の70%を占めている.

(3)最大土被り
 最大土被りは35m以下である.4−5m程度の土被りしかないトンネルもある.

(4)めがねトンネルを採用した理由
 最も多い理由は用地が確保できないためである.沖縄県にめがねトンネルが多いのも用地の確保が困難であることが大きい.特にうるま市から南の中新世−鮮新世の島尻層群や琉球石灰岩の分布地域では,人家が密集しており,用地の確保が難しいと考えられる.
 大代古墳(おおしろこふん)トンネルのように,当初切土で計画していたが4世紀の前方後円墳がルート上に見つかり急遽トンネルとしたものもある.
 土被りが小さいめがねトンネルが多いのも,切土で通過するには周辺への影響が大きいのでトンネルを採用せざるを得ないためと考えられる.

(5)掘削方式
 トンネルの掘削方式には,大きく分けて発破掘削と機械掘削がある.めがねトンネルでは,両方の掘削方式を併用しているのも含めて,発破掘削を使用しているのは5トンネル,それ以外は機械掘削である.
 土被りが小さいことや対象地質が土砂に近いトンネルが多いためである.ただし,白川トンネルのように花崗岩中を割岩工法(かつがんこうほう)で掘削している例もある.この工法は,割れ目の少ない硬質な岩盤にくさびを打ち込んで掘削する方法で,発破では堅すぎて効率が悪い場合や周辺に発破による振動を与えたくない場合に採用される.

2.日本のめがねトンネルの歴史

 日本におけるめがねトンネルは,1975年に竣工した沖縄県の伊祖トンネルに始まる.このトンネルは,中央と両側壁の3本の導坑をで建設されたトンネルである.
 1979年に福島県の小名浜港トンネルが,中央のみの1導坑式で建設された.導坑1本のめがねトンネルの最初である.
 その後は,西原トンネル(沖縄県,1987年竣工)に始まって,導坑1本のめがねトンネルが10以上建設された.
 本州四国連絡橋児島−坂出ルートの瀬戸大橋の一つである下津井瀬戸大橋に繋がる鷲羽山トンネル(倉敷市,1985年竣工)は,上が道路,下が鉄道の4連めがねトンネルである.鉄道トンネル坑口部は無導坑式で建設された.つまり,先行して掘削するトンネルの断面を大きくしてセンターピラーを構築し,その後もう一本のトンネルを掘削するという方式である.これが無導坑式めがねトンネルの最初である.

 2002年に竣工した下到津トンネルは全長280mのうち40mが,めがねトンネルでその他の区間はセンターピラーを構築しない“超近接トンネル”で建設された.
 “超近接トンネル”というのは,「めがねトンネル程度の離隔距離を前提としても,中間地山を残し,センターピラーを構築しない近接トンネル」のことで,めがねトンネルとの違いは二つのトンネルが構造的に独立していることである(上村ほか,2004).導坑を掘削しないために,狭い空間での作業が無くなり施工中の安全性が高まること,工期が短縮されること,工費が低減することなどの利点がある.
 現在までに,下到津トンネル(北九州市),大門寺トンネル(茨木市)の2トンネルが “超近接トンネル工法” で施工されている.

 国内のめがねトンネルおよび“超近接トンネル”の一覧表を示す.
 この表は,青木ほか(2001)の表に,それ以後に施工されたトンネルを加えたものである.

 注意点は次の通りである.
(1) 分かる範囲で地質条件などの修正,施工者・竣工年次を追加している.
(2)「−」は情報が得られなかった項目である.
(3) 延長の括弧内はトンネル全体の延長で,そのうち,めがねトンネル区間を示した.
(4) CP形状は,センターピラーの形状である.中央導坑の真ん中に両本坑に対して対称のセンターピラーを構築する方式(対称)と,先進坑側に中央導坑を寄せて構築する方式(非対称)とがある.
(5) 施工順序は,先進坑の一次支保工のみを施工して後進坑を施工する方式(一次支保状態) と,先進坑の二次覆工を施工してから後進坑を施工する方式(覆工状態)とがある.
(6) 覆工構造は,一次覆工と二次覆工の両方をセンターピラー頭部で支持する方式(上部支持),一次覆工のみをセンターピラー頭部で支持させ二次覆工はセンターピラーの脚部に支持させる方式(脚部支持),両トンネルの一次覆工のみセンターピラー頭部で支持し二次覆工はトンネルのインバートに接続する方式(インバート支持)の三つがある.
(7) 導坑数0の中には,下到津トンネル,大門寺トンネル,北山トンネルの“超近接トンネル”が含まれている.
(8) 施工者,竣工年次は不明なものが多い.現地の銘板を確認する必要がある.わかる範囲で竣工年次の順に番号を振ってある.( )はトンネル貫通年月.

表1 日本のめがねトンネル(2006年4月現在)
番号トンネル名路線名施工箇所延長(m)土被り(m)地質条件掘削方式導坑数CP形状施工順序覆工構造施工者竣工年次
1伊祖
(いそ)
一般国道330号沖縄県
浦添市
90max 22新第三紀凝灰岩
川尻粘土,固結シルト
機械掘削3対称一次支保状態インバート支持國場組1975
2貝塚京葉道路千葉市191min 4
max 6
粘土および細砂 の互層手掘り掘削
機械掘削
3非対称覆工状態上部支持ハザマ
3横浜第2横浜横須賀道路横浜市90min 9
max 20
鮮新世野島層
凝灰質砂岩,
泥質砂岩−砂質泥岩
機械掘削3非対称覆工状態上部支持
4井吹阪神高速道路
北神戸線
神戸市195≒19鮮新世−洪積世
大阪層群(砂礫,粘土層)
機械掘削3非対称覆工状態上部支持西松建設
5小木津常磐自動車道日立市37
(≒200)
max 28 白亜紀 花こう閃緑岩発破掘削3非対称一次支保状態脚部支持
6小名浜港幹線臨港道路
2号線
福島県
いわき市
17215中新世白土層群
凝灰質シルト岩−泥岩類
機械掘削1対称一次支保状態上部支持五洋建設1979
7朝田一般国道9号線バイパス山口市84.1min 5
max 20
古生代砂質片岩,泥質片岩機械掘削3対称覆工状態
(先進坑供用後)
上部支持
8十王常磐自動車道日立市330min 3
max 35
鮮新世多賀層群
花崗岩質砂岩(マサ土化)
機械掘削3非対称覆工状態上部支持
9鷲羽山
(わしゅうざん)
瀬戸中央自動車道倉敷市205max 30花こう岩,閃緑岩,
花こう閃緑岩
発破掘削
(機械掘削)
3対称覆工状態上部支持奥村組
鉄建建設
1985
1988
10三川内
(みかわち)
長崎自動車道
武雄佐世保道路
佐世保市≒240min 4
max 15
古第三紀砂岩,
砂岩−頁岩互層
機械掘削3非対称覆工状態上部支持鴻池組1987
11西原一般国道330号
西原バイパス
那覇市128.518中新世−鮮新世
島尻頁岩
機械掘削1非対称覆工状態脚部支持1987
12喜舎場
(きしゃば)
沖縄自動車道北中城村215≒35中新世−鮮新世
島尻層群 泥岩
洪積世 琉球石灰岩
機械掘削3非対称インバート支持1987
13若山山陽自動車道山口県
周南市
152max 45黒色頁岩発破掘削
(機械掘削)
1非対称一次支保状態脚部支持
14山館国道103号
大館南バイパス
秋田県
大館市
198min 15
max 22
中新世
泥岩,凝灰岩類
機械掘削3非対称覆工状態
(先進坑供用後)
脚部支持
15比治山 比治山東雲線広島市259min 5
max 15
中粒−粗粒黒雲母花こう岩機械掘削1対称一次支保状態脚部支持1993
16私市円山
(きさいちまるやま)
舞鶴若狭自動車道京都府
綾部市
≒120max 21夜久野迸入岩類
(輝緑岩)
機械掘削3非対称覆工状態
(先進坑供用後)
脚部支持
17富岡上信越自動車道群馬県
富岡市
99max 12中新世−洪積世
泥岩,シルト混り砂礫層
機械掘削3非対称覆工状態インバート支持
18永犬丸
(えいのまる)
県道200号
引野−中間線
北九州市130不明中新世−鮮新世
芦屋層群(礫岩・砂岩・砂岩・頁岩互層)
機械掘削3非対称覆工状態脚部支持
19石川一般国道329号
石川バイパス
沖縄県
うるま市
322max 20古第三紀名護層(千枚岩)
第四紀琉球層(琉球石灰岩)
機械掘削3対称一次支保状態脚部支持1994
20御前崎みなと臨港道路
4号線
静岡県
御前崎町
373max 25中新世−鮮新世
相良層群(砂岩・泥岩互層)
機械掘削3対称覆工状態脚部支持
21小束山第2神明道路
(改築)
神戸市620min 5
max 25
鮮新世−洪積世
大阪層群(砂,砂礫,粘土層)
機械掘削1対称一次支保状態上部支持前田建設工業・住友建設JV1998
22女夫岩
(めおといわ)
中国横断自動車道
尾道松江線
島根県
宍道町
≒139max 26中新世
砂岩,凝灰岩,泥岩
機械掘削3非対称覆工状態インバート支持奥村組2001
23塩津山一般国道9号線
(安来道路)
島根県
安来町
72max 5安山岩質火砕岩
(強風化岩)
機械掘削3対称覆工状態
(先進坑供用後)
脚部支持2001
(暫定2車線)
24大代古墳
(おおしろこふん)
高松自動車道鳴門市7710+(機械掘削)3対称インバート支持2001
25飛鳥山首都高速
中央環状王子線
東京都
北区
108
(≒650)
min 5
min 17
洪積世 本郷層,東京層
(砂礫・砂質土・粘土の互層)
機械掘削1非対称一次支保状態上部支持2002
26前田国際センター線沖縄県
浦添市
92max15中新世−鮮新世
島尻層(砂岩・泥岩互層)
機械掘削3非対称一次支保状態脚部支持
27休山一般国道
185号
呉市55
(1,700)
強風化花こう岩機械掘削1対称覆工状態
(先進坑供用後)
インバート支持フジタ2002
28下到津
(しもいとうづ)
都下到津線
(下到津ランプ連絡道路)
北九州市40
(280)
min 5
max 15
古第三紀
出山層砂岩,礫岩
機械掘削1
0
対称一次支保状態インバート支持前田建設2002
29上郷飯島飯田線
座光寺−上郷バイパス
長野県
飯田市
171max 12洪積世段丘堆積物,
扇状地堆積物
 砂質土,砂礫
機械掘削3非対称一次支保状態脚部支持熊谷組
30菱野都市計画道路
菱野線
瀬戸市325min 5
max 19
鮮新世矢田川累層
粘性土,砂礫土
機械掘削1対称一次支保状態インバート支持三井建設2002
31阿部倉都市計画道路
久里浜田浦線
横須賀市40720中新世葉山層
(泥岩,蛇紋岩,硬質砂岩)
機械掘削3対称一次支保状態インバート支持前田建設2003
32白川阪神高速道路
神戸山手線
神戸市938min 10
max 20
中新世神戸層群
六甲花こう岩
機械掘削
一部割岩工法
1対称一次支保状態上部支持鴻池組
飛島建設
2003
33大門寺府道茨木亀岡線大阪府
茨木市
242max 35花こう閃緑岩発破掘削
機械掘削
0先進坑非対称一次支保状態地山支持前田建設2004
34五ヶ丘
(いつつがおか)
東海環状自動車道豊田市321max 28花こう岩,マサ土機械掘削
発破掘削
0先進坑非対称一次支保状態地山支持ハザマ2004
35戸吹南多摩新滝山街道八王子市600min 10
max 50
洪積世 加住礫層,凝灰質粘土層,細砂層機械掘削1対称一次支保状態上部支持前田建設2004
36涌波
(わくなみ)
金沢外環状道路金沢市663min 11
max 17
洪積世 大桑(おんま)層,卯辰山層の砂層機械掘削1対称(一次支保状態)地山支持
プレサポーティングシステムアーチ
熊谷組(2006.2)
37今里第一第二東名高速道路静岡県裾野市今里230min10
max17
愛鷹火山 裾野溶岩層機械掘削
制御発破掘削
0対称
システムロックボルト+事前地盤改良
地山支持清水・アイサワ・ピーエス三菱 JV(2006.3)
38北山国道455号盛岡市北山-三ツ割923.5(上り線)
950.5(下り線)
min2-5
max20
緑色岩・泥質メランジェ機械掘削0非対称一次支保状態地山支持
上半脚部補強工
前田・ハザマ・梨子 JV(2006.12)
39比屋根
(ひやごん)
県道沖縄環状線沖縄市259max 25中新世−鮮新世 島尻層群
砂岩・泥岩互層,泥岩,砂岩
機械掘削0先進坑非対称一次支保状態インバート支持2007
40小路
(4連めがねトンネル)
第二京阪道路寝屋川市≒27510+洪積世 段丘堆積物,大阪層群
粘性土層・砂質土層・礫質土層
機械掘削3対称一次支保状態インバート支持ハザマ(2008.5)
41識名真地久茂地線
(まあじ・くもじ)
那覇市識名559min14
max40
鮮新世-前期更新世
島尻泥岩層
機械掘削0(対称)一次支保状態地山支持大成・仲本・内間 JV(2008.10)
*2007年12月29日,伊祖トンネルの施工者「國場組」追記.
**2009年8月6日,小束山トンネルの施工者を修正しました.
 情報を頂いた方に感謝します.


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3.めがねトンネル設計の考え方

 初期のめがねトンネルでは,二つの側壁導坑と中央導坑を構築し,上半支保工の脚部沈下を抑止して地山を安定させていた(図1 3導坑式めがねトンネル).つまり,中央導坑に構築されるセンターピラーによって二つのトンネル相互の干渉を抑止し,安全にトンネルを施工して長期的耐力を持たせるかが問題である.しかし,センターピラーに作用する荷重の設定,ピラー形状に関する設計基準が確立されていない.
 これに対する一つの考え方として,上村ほか(2004)は土被りが1D以下の場合は,めがねトンネルのセンター間分の土荷重がセンターピラーに作用すると考えた.

 この考え方にもとづいて,センターピラーなしのめがねトンネル(“超近接トンネル”)が提案された.


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図2 めがねトンネルのセンターピラーに作用する「土被り荷重」の定義
(上村ほか,2004)

 この場合の土被り(h)が30mで,地山の単位体積重量が20kN/m3とすると,初期地圧は600kN/m2となる.地山強度比を2以上を確保するには1,200kN/m2程度の一軸圧縮強度があればいいことになる.めがねトンネルの中心間隔を12mとして,ここで想定している土被り荷重が幅1mのセンターピラーにかかるとしても,中心間隔12mとして7,200kN/m2の強度があればぎりぎりセーフとなる.

 田中ほか(2005)は,戸吹トンネルでセンターピラーに作用する応力を測定した.その結果と多くのFEM解析によってセンターピラーに作用する荷重の検討を行い,図1に示した荷重がセンターピラーにかかると考えてよいと結論した.
 ただし,この場合,土被り(h)が全トンネル幅(D)より大きい場合は,作用荷重高さは全トンネル幅,小さい場合は土被り高さが妥当であるとしている.

 めがねトンネルの設計・施工上の留意点を列挙する.

(1)めがねトンネルではセンターピラーの構築が必要であるが,センターピラーに作用する荷重の設定やセンターピラーの形状に関して基準が確立されていない.
(2)センターピラーは先進坑掘削時に先進坑側に傾斜し,後進坑掘削で元に戻るという挙動をする.先進坑通過後にセンターピラーのバランスが崩れることがある.
(3)センターピラー自体が地耐力不足となることがあり,センターピラー下部地盤の補強が必要となる場合がある.
(4)センターピラー頭部に空隙ができ,トンネル全体の弱点となりやすい.
(5)導坑掘削,センターピラー構築まで本坑の掘削ができない.このことが工期が長くなる原因となっていて,工費も高くなる.
(6)導坑内でのセンターピラー構築は作業効率が悪く危険が多い.また,導坑支保部材の撤去によって発生する産業廃棄物の増加も工費が高くなる原因となる.

4.めがねトンネルから“超近接トンネル”へ

 めがねトンネルの問題点を解消するために,考案されたのものの一つが,“超近接トンネル”である.この工法の特徴は,二つのトンネルが構造的に独立していることである.二つのトンネルの間の地山(中間地山)のへの作用荷重を予測し,FEM解析により精度の高い設計を行うことで,この工法の採用が可能となった.

 沖縄県で建設中の比屋根トンネルは,先進坑の側壁を厚くしてセンターピラーの役割を果たす方式である.この工法では,1導坑式に比べて工費が約5%減少し,工期が10%程度短縮される見通しである.また,解析結果では,変位も導坑式に比べ少ないという結果になっている.

 さらに,注目すべき工法として,金沢市の涌波トンネルで採用された「プレ・サポーティング・システムアーチ工法」によるめがねトンネルの建設がある.この工法は,中央導坑から両方のトンネル予定断面にアーチ型の鋼管を横断方向に挿入し薬液注入を行い,本坑掘削前に支保工を構築するというものである.
 このトンネルは,めがねトンネルの上部に連絡道トンネルが重なるという三つ目トンネルとなっている.

参考文献など

 青木宏一,上村正人,椙山孝司,中川浩二,2001,わが国におけるめがねトンネルの現状と課題.トンネルと地下,第32巻,9号,53-62.

 *この時点までのめがねトンネルの一覧が載っている.設計・施工の技術者にヒアリングを行い,その結果から課題を提示している.

 上村正人,梨本裕,椙山孝司,青木宏一,進士正人,中川浩一,2004,センターピラーを構築しないめがねトンネル工法の実用化と検証.土木学会論文集,No.756/6-62,75,87,2004.3.

 *センターピラーを構築しない“超近接トンネル”の理論的根拠について述べている.下到津トンネルの解析結果とそれにもとづく支保工と覆工の設計について述べ,実際の施工結果について考察している.

 森田篤,宮野前俊一,梨本裕,,今田徹,2006,めがねトンネルから超近接トンネルへ.トンネルと地下,第37巻,1号,55-63.

 *めがねトンネルの歴史・問題点,“超近接トンネル”の作用荷重の考え方を述べ,下到津トンネル,大門寺トンネルの施工結果の分析を行っている.

 土木工学社>トンネルと地下バックナンバー検索システム
<http://www.tunnel.ne.jp/>

 *「めがねトンネル」で14件,「メガネトンネル」で6件ヒットする.

 高速道路技術センターのHP>技術情報誌EXTEC>バックナンバーサービス>70号
 <http://www.extec.or.jp/>

 *4連メガネトンネルの小路トンネルの設計と施工計画が載っている.3導坑式で各導坑は杭で支えるという構造をとっている.  

 (社)沖縄建設弘済会技術環境研究所 「しまたてぃ」>バックナンバー>No.37

 *比屋根トンネルのかなり詳しい紹介記事が載っている.  


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