断層岩

 日本で断層岩が分布している代表的な地域は,中央構造線沿いの領家帯である.断層岩は再結晶の程度,形成深度により分類されている.深部では延性変形が,浅部では脆性破壊が卓越する.


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断層岩の分類

 断層岩の分類を示す.

表1 断層岩の分類案(高木ほか,1996,171p)

破砕融解再結晶
ランダムファブリックあるいは葉片状葉片状
非固結固結
断層角礫

断層ガウジ

プロトカタクレーサイト
カタクレーサイト
ウルトラカタクレーサイト

シュードタキライト
プロトマイロナイト
マイロナイト
ウルトラマイロナイト
*1 最下段は,下ものほど変形が著しくなり,粒径が小さくなる.
*2 非固結,固結の用語は,Inconhesive,Conhesive である.

表2 断層岩の細分類(同上)

名称破砕岩片の割合破砕岩片の粒径

断層角礫

>30%

メガブレッチャー>256mm
メソブレッチャー10〜256mm
マイクロブレッチャー<10mm
一般的には<10mm
断層ガウジ<30%一般的には 10mm

名称破砕岩片の割合破砕岩片の粒径
プロトカタクレーサイト
カタクレーサイト
ウルトラカタクレーサイト
>50%
10〜50%
<10%
一般的には <10mm

名称ポーフィロブラストの量基質構成鉱物の粒径
プロトマイロナイト
マイロナイト
ウルトラマイロナイト
原岩の種類により多様
プロトからウルトラへと細粒化する
>100μm
20〜100μm
<20μm
*1 これら二つの表は,Higgins(1971),Sibson(1977),高木(1982),McClay(1987),田中(1991) などに基づき,高木(1996)が改訂したものである.
*2 狩野ほか(1998,21p) に表2が載っている.


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断層岩に関連する用語

断層ガウジ:
 手で壊せるほど軟弱で粘土状の基質部の多いもの.

断層角礫:
 手で壊せるほど軟弱で粘土状の基質部が少なく,角礫状の岩片が多いもの.

カタクレーサイト(破砕岩):
 断層岩のうち基質と岩片が固結しているもの.

マイロナイト:
 再結晶を伴い,細粒で数mm間隔以下の葉片状組織(流動組織)が発達した緻密で固い岩石. 石英は細粒再結晶粒子の集合として基質を構成し,細粒化を免れた“斑晶”(ポーフィロクラスト)としては全く存在しない.最も重要な特徴は,鉱物結晶中での転移により細粒の結晶粒子(亜結晶)が形成されることである.現在の考えでは,マイロナイト化は破砕作用ではなく再結晶作用で形成されるとする.

シュードタキライト:
 脈状またはネットワーク状を呈する細粒,緻密な岩石で,その内部に大小さまざまな破砕岩片を含んでいるもの.
 成因は,地震断層運動の衝撃波によって形成されたとする粉砕説と地震断層運動の摩擦熱により溶融した高温の液体が破砕岩片を伴って破断面に貫入し,細粒基質部は急冷に伴って形成されたとする溶融説とがある. 溶融現象が認められるものをシュードタキライトとする考えが主流になりつつある.

ポーフィロクラスト:
 マイロナイト化の過程で相対的に細粒化しにくい鉱物が,斑晶状の粗粒結晶として残留したもの.花崗岩質マイロナイトの場合は,斜長石,カリ長石,角閃石などがポーフィロクラストを形成し,石英や黒雲母は細粒化して基質部を形成する.

ポーフィロイド:
 石英や長石のブラストポーフィリティックな結晶を含み,基質は細粒の石英,長石,雲母類などが片状構造を示す岩石. 流紋岩,石英斑岩,同質凝灰岩が圧砕作用を受けて生じる.

ブラストポーフィリティック:
 残留斑状組織.残斑晶.もともとの火成岩の斑晶が変成岩中に残留している組織. なお,ブラストマイロナイトという用語はマイロナイトの定義が変わったため使われなくなってきている.

ポーフィロブラスト:
 斑状変晶.変成作用時に他と比べて大きく成長した結晶.ザクロ石,斜長石,紅柱石,菫青石,十字石などがなりやすい.変形作用による細粒結晶の凝集と焼結によって粗粒化するとされる.

ヘレフリンタ:
 石英,長石を主成分とする微粒緻密の変成岩.しばしば石英,長石の残留斑状結晶を含む.成分的には,石英斑岩,流紋岩,デイサイトに対応する.

(以上は,地学事典,1996,平凡社 による)

参考文献

狩野謙一,村田明広,1998,構造地質学.朝倉書店.
高木秀雄,小林健太,1996,断層ガウジとマイロナイトの複合面構造−その比較組織学.地質雑,102,171-179.

(2002年12月8日)


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