富良野盆地の西にある芦別岳から続く山群が,空知川で切られる手前にあるのが富良野西岳である.富良野盆地に面した斜面は,富良野スキー場として開発されている.日本の多くのスキー場が火山の斜面に設けられているが,富良野スキー場は主に白亜紀の地層からなる山の斜面で,麓には御料断層,中富良野断層が分布している.
なお,富良野スキー場の富良野ZONEの上部には二つの地すべりが判読されているほか,スキー場上部で富良野ZONEと北の峰NONEを結ぶ「連絡C」は,地すべり移動土塊がつくる緩斜面を利用している.
地形図を見ると,富良野西岳は北北東−南南西に長く延びた山体をしていて東斜面は尾根から崖となり,標高900m〜1,000m付近から下がなだらかな斜面となっている.急崖部は非常に硬質な優白質岩類からなっているのに対し,なだらかな斜面は蛇紋岩などの超塩基性岩類で構成されているためである(5万分の1地質図幅「山部」および同説明書.以下,図幅という).
富良野スキー場富良野ZONEの南側にある沢沿いに登るコースである.
ただし,2016年7月現在,コースは十分に整備されていないのでルートを見失いがちになるのと避難路(エスケープルート)がないので,沢歩きの経験がない人は行かない方が無難である.
図幅によれば,この沢沿いでは登山ポストのある砂防ダム付近に北西−南東方向の断層があり,これより下流側には新第三紀の金山夾炭層が分布し,上流は中部蝦夷層群の馬内川頁岩層が分布している.標高470m付近を境に断層で主夕張川珪質岩層に接している.
最初に登山道に出てくる露頭は,標高540m付近の右岸にある粘板岩で,主夕張川珪質岩層に属するものと考えられる.かなり片状化している.
標高540m付近からは超塩基性岩の分布域となる.露頭としてはあまり蛇紋岩化を受けていない黒色・硬質な岩が出てくる.
標高753mで右岸(上流に向かって左側)に湧水がある.この場所は,図幅では超塩基性岩(下流側)と優白岩類(上流側)の境界となっている.水量はかなり豊富で,水温は10℃以下であろう.
登山道が沢を離れる手前右岸,標高805mの所に金鉱跡がある.この少し手前で斜面崩壊がありほとんど露頭に近い優白質岩が露出している.坑道は,有色鉱物をほとんど含まず長石と少量の石英を含む優白質岩中を掘削している.金属鉱床に特有の褐色化した部分(黄鉄鉱の酸化による)はない.この岩石は図幅で曹長斑岩と言っているものであろう.
金鉱跡を過ぎると登山道は沢を離れて富良野西岳の山頂から北北東に延びる尾根に取り付く.沢を離れる地点には板に赤い矢印が書かれた「標識」がある.今回登った時には,登山道は伐開された形跡はなかったが,踏み跡を見つけて辿れば迷わずに行ける状態であった.
ほとんど蛇紋岩化していない超塩基性岩で,黒色緻密である.ドレライトであろう. | 蛇紋岩特有の青灰色を呈する礫まじり粘土が崩壊している.これ自体は崖錐堆積物と考えられる.標高670m付近の登山道対岸である. |
尾根に取り付くと登山道は完全に優白質岩類の分布域になり,登山道に転がっている石はすべて優白質岩である.この斜面の平均傾斜は36°で,道はジグザグを繰り返しながら登っていく.緩やかな尾根に達するまでの比高は300mである.
標高1,200m付近からなだらかな尾根道となり歩くのは楽になるが,東側は断崖となり結構怖い思いをする.出ている岩石はほとんど優白岩であるが,標高1,180m〜1,190m付近の登山道に超塩基性岩類が見られる.岩相は,珪質凝灰岩,黒色泥岩,弱い枕状組織を示す玄武岩などである.
露岩した急崖を左に見ながら頂上を目指す.富良野盆地と十勝連峰が一望である.出ている岩石は優白岩であるが,標高 1,245m付近の登山道右手にある露頭は超塩基性岩の可能性がある.図幅で超塩基性岩が北西方向に延びている位置に当たる.
幾つかコブを越えてようやく頂上にたどり着く.
頂上からの眺めは素晴らしい.東には十勝連峰と火砕流台地,その手前に蛇紋岩を含む空知層群の緑色岩の丘陵が広がる.北には芦別岳,布部岳とその間の蛇紋岩地帯のなだらかな地形が広がる.
富良野西岳の頂上を南に降りたコルから富良野スキー場に行く登山道がある.このコースは,尾根道なので比較的気軽に登ってくることができる.この日は富良野ロープウェイが動いていたので,これを利用すれば1時間40分ほどで頂上に立つことが出来る.
頂上からコルへ降り,やや急な斜面を下って行くとなだらかな尾根道となる.急斜面には緑色岩の転石が落ちていた.沢にはまだヤチブキの花が咲いていた.
標高1,124mのコブ付近では緑色岩の転石が見られる.露頭らしい露頭はほとんどない.
登山道は富良野ZONEの最上部,標高1,060mの地点に出る.ここからはスキー場の中の道を標高340mのロープウェイ始点駅まで下っていく.
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