地質リスク学会が発足

 (2010年1月24日作成)

地質リスク学会とは

 地質リスク学会が2010年1月に発足しました.この学会は「新しい地質リスクマネジメントの仮説の検証・確立・普及を目指して」(会長挨拶より)設立されたもので,初代会長は高知工科大学の渡邊法美(わたなべ・つねみ)教授です.
 この学会の特徴の一つは,ウェブサイト上の“バーチャル学会”として活動を開始した点です.そこでは,地質リスクに関する事例収集を行い,学会での会議や検討結果をベースにホームページ上で意見交換を行い,電子掲示板を設けることとしています.そして,今後2年間の成果をもとに,学会の方向性を決め正式な学会として活動を継続する予定となっています.

地質リスク学会のHP<http://www.georisk.jp/>

 学会としては,すでに2009年8月に「地質リスク分析のためのデータ収集様式の研究 報告書」((財)日本建設情報総合センター研究助成事業)を作成しています.
 この中では,地質リスクマネジメントを3つのパターンに分類し,収集した93事例の中から8つの事例について詳細に検討しています.
 詳しくは上記ホームページの<地質リスク関連資料>を見て下さい.地質が関係する事業を効率的に実施する方策を考えるための重要な内容となっています.

地質リスク学会への期待

 地質に関わる事業では,上流側の調査・設計が全体の事業費を左右する場合があり,実際に地質調査を行ってきた中でそのような事例に遭遇しています.最近の事例で多いのは,付加体堆積物への対応,風化岩地すべりのような不明瞭な地すべり地形の見落とし,想定外の規模の地すべりの発生,有害重金属を含む掘削土の処理などです.
 このような地質への対応で事業費が予想を大きく上回ったことについては実感としては分かりますが,リスクマネジメントの効果として節約できた,あるいは増加した金額を示すことはできませんでした.
 このような分析には当然,発注者側の資料提供などの協力が不可欠です.数事例ですが,これを実現したことは画期的だと思います.

 このような活動が活発になれば,地質調査に対する期待も大きくなる可能性があり,地質調査の精度を向上させるきっかけになります.また,リスクマネジメントの観点からは,地質予測の不確実性をどう扱うかという課題の解決が迫られます.
 そして何よりも,地質調査の重要性が,建設に携わる人たちに理解されることが期待できます.


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