この試験は,ボーリング孔内で一軸圧縮強さや変形係数を求めることのできる試験である.例えば,参考文献 a を見てもらえば分かるように,コンクリート構造物劣化部の細かい位置を判定するために使われてきた(NETIS KT-090056-A).
コンクリート構造物や岩盤にボーリング孔を開け,ボーリング孔内に円筒形の測定器を設置し,ボーリング孔壁に直径6mmの半球状の載荷先端を貫入させて,荷重(P:kN)と貫入量(L:mm)を測定する。この測定値から貫入抵抗値(kN/mm)を算出する。
コンクリート供試体の試験では,「一軸圧縮強さ=3.9×貫入抵抗値」の関係が得られている。
橋梁の床板や下部工,トンネル覆工,えん堤での測定では,局部的な一軸圧縮強さの低下を把握することができた。
貫入抵抗値とコア試料による一軸圧縮強さおよび変形係数の関係を求めた。
岩石試料による試験では,最初,急激な立ち上がり(貫入抵抗値(1))を示し,その後やや緩やかな直線的な変化(貫入抵抗値(2))を示す。
貫入抵抗値(1)は,載荷初期の荷重と貫入量であるので初期の変形係数を示していると考えられる。これに対して,貫入抵抗値(2)は,変形が進んだ平均的な変形係数を示している。
文献 a に載っているデータでは,最高80MN/m2くらいの一軸圧縮強さが測定できている.「地盤工学会の岩の分類」で言えば,ほぼ硬岩系B(岩の硬さ=100〜50MN/m2)の範囲をカバーできている.
以上が,孔内局部載荷試験の概要である。
このような局部的な岩盤の力学特性を取得できる方法を適用してみたいのは,多亀裂性岩盤である.
多亀裂性岩盤では,試験に使える棒状コアが採取できないため供試体によって一軸圧縮強さや静弾性係数を求めることが難しい。
多亀裂性岩盤の露頭で,シュミット・ロックハンマーで一軸圧縮強度を求めることは難しい.打撃を与えるので試験面の岩塊が動いてしまい,岩塊としての強度を得ることができない.
この試験では,ゆっくりと押し込むので,ある程度押し込めば岩塊自体の強度を求めることができるかもしれない.場合によっては,グラウトで岩塊を固定したあと,孔壁をきれいにして試験するという方法も考えられる.
2013年6月にGoTENコンソーシアムが,地質コンサルタント,計測会社など15社が参加して設立された.トンネル,橋梁,えん堤などのコンクリート構造物の劣化診断で実績を積み上げてきている.
岩盤への適用が広がれば,これまで力学的物性値の得られにくかった岩について,より精度の高い情報を得ることができる.
<参考文献>
参考文献 b に掲載されている文献のうち,次の文献がウェブから入手できる.この中では,北川ほか(2010)が,分かりやすい。