地盤汚染対応マニュアル

 (2012年4月18日作成/2014年9月9日追記)

 独立行政法人 土木研究所編の「建設工事で遭遇する地盤汚染対応マニュアル[改訂版]」(鹿島出版会:以下,「マニュアル」と呼ぶ)がようやく発行になりました.

 2002(平成14)年5月に土壌汚染対策法が成立し,2003(平成15)年2月から施工されました.その実施状況を見て,2010(平成22)年4月に改正土壌汚染対策法が施行されました.
 この施行に合わせて,2010年1月には「建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル(暫定版)(案)」(土木研究所資料 第4156号)が,同年3月には「建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル(暫定版)」が公開されました.これらは,現在も土木研究所のウェブサイトからダウンロードできます.

 今回の「マニュアル」は,2004(平成16)年5月に発行された「建設工事で遭遇する地盤汚染対応マニュアル[暫定版]」(土木研究所 編:鹿島出版会)の改訂版です.


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「マニュアル」の構成

 今回の「マニュアル」は,「土壌汚染対策法の改正を踏まえた見直しを行うとともに,公共建設工事遂行上必要となる全般的な内容について整理し,土壌汚染対策法の適用外の場合においても土壌汚染対策法の措置と同等の対応がなされるよう配慮して,ほぼ全面的に書き直しました.」(改訂版の発刊に当たって)という趣旨で作られています.

 「マニュアル」の構成は次のようになっています.
 §1 総説
 §2 有害物質の性質
 §3 緊急調査と応急対応
 §4 調査
 §5 影響予測と評価
 §6 対策
 §7 モニタリング
 §8 関係法令
 資料

 2004年版との違いは,「§3 緊急調査と応急対応」が調査の前段に来ていること,「§4 調査」と「§6 対策」の間に「§5 影響予測と評価」が入っていることです.

 緊急調査は,施工中に刺激臭や異臭,異常な色をした土壌など通常の地盤の状態でない状況に遭遇した場合,応急対策を行った上で公定法による分析あるいは迅速分析を行うことにしています.
 応急対策では周辺住民や作業員の急性障害や危険を回避すると同時に,汚染の拡散を防止するための対策が必要としています.応急対策の状況と応急対策の例が表にまとめられています.とりあえず,この内容にしたがって必要な対応をすることが大事でしょう.

影響予測と評価

 影響予測と評価の方針は次のようになっています.

表1 直接摂取の場合
摂取経路検討事項対策
基準値を超える有害物質を含む土壌が飛散・拡散して飲み込んだり吸い込んだりして直接体内に取り込む場合その場所に人が立ち入るかどうかの検討立ち入る可能性がある場合は,汚染土壌の除去や覆土などの飛散防止を行う

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表2 地下水を飲用して摂取する場合
予測方法進め方評価その他
標準予測方法発生源の設定:土壌溶出試験(平成15年3月環告第18号)で得られた濃度を発生源の濃度とする.
評価地点:発生源から下流の飲用井戸などの保全対象を評価地点とする.
地盤状況:帯水層の透水係数,有効間隙率,動水勾配,遅延係数などを設定する.
・評価地点での100年間の地下水中の重金属濃度を算出して,地下水環境基準より濃度が大きい場合は対策を実施する. ・発生源での対策はない.
・GERAS-2(産総研)や1DTRANSU(土木研究所)などの解析ソフトが提供されている.
詳細予測方法 発生源の設定:標準予測方法と同じ.
ただし,現場試料で有害物質の濃度・特性・存在範囲を把握する.長期的溶出特性も考慮する.
評価地点:リスク低減対策の有効性を確認するため,下流側敷地境界を評価地点とする.
地盤状況:標準予測方法と同様である.
ただし,現場条件に応じて調査・試験を実施し,各係数の空間分布を把握する.
対策効果の設定:土壌汚染対策法に定める措置やリスク低減対策など現場条件に応じた対策の効果を求めるため,対策場所と周辺地盤の諸係数を設定する.
・構築したサイト概念モデルを用いた多次元移流分散解析などで100年間の敷地境界における有害物質の濃度を予測する.
・リスク低減対策などを考慮して評価地点で基準を超えた場合は再度対策を検討する.
・保全対象の近傍でモニタリングを行い,その結果を反映した解析を行う.

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参考資料


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