幌加内トンネル沼田町側坑口 |
この坑口は旧国鉄深名線(深川ー名寄間)のトンネル掘削ズリ捨て場となっていた場所であるうえ,左(西)側の斜面に地すべりが分布している.地すべり対策は押え盛土を主とする工法で対処している. |
幌加内トンネルの特徴は,全線ほとんど蛇紋岩が分布していることです.トンネル延長は1,241m,両坑口の坑門工が15m×2=30m でトンネル本体の延長は1,211m , 最大土被りは約120m です.工事は沼田町側からの片押しで,縦断勾配は沼田町側への片勾配です.
2009年9月4日時点で1,171m の掘削が終了していて,残りは40m のトンネル掘削と15m の坑門工でした.
施工実績の支保パターンは表1に示したようになっています.E パターンについては添え字なしの E と添え字(A)から(I) まで10パターンが施工されています.
1)この表を見ても分かるのは,設計と実施工の支保パターンの乖離で大きいのは ,E パターンの増加(1.5培)と幌加内側坑口パターンの増加(5倍)です.
2)蛇紋岩の種類は沼田町側で葉片状蛇紋岩や岩相の混在した蛇紋岩が出ているほかは全て塊状蛇紋岩となっています.設計では土被りが100m を下回る区間を DII パターンとしていますが,施工では土被り60m 以下の区間で DII パターンを一部採用しています.
表1 幌加内トンネルの施工実績と設計支保パターンの比較
支保パターン | 施工実績(m) | 設計(m) |
沼田町側坑口 パターン | 131(11) | 131(11) |
E パターン | 882(72) | 598(49) |
DII パターン | 92(8) | 335(28) |
DI パターン | 0(0) | 126(10) |
幌加内側坑口パターン | 106(9) | 21(2) |
合計 | 1,211(100) | 1,211(100) |
図1 幌加内トンネルの実績と設計支保パターンの比較
上(青色)が施工実績で下(エンジ色)が設計である.
以下,写真を示します.
二次コンクリート施工済み区間 | 二次覆工用の型枠 |
内空断面は77.2m2 |
防水シート施工済み区間 | DII パターンから E パターンへの変更 |
TD1069(P139km133) の地点 |
上半先進工法 |
掘削は機械掘削で上半先進工法を採用している. |
坑口部の支保パターン | 切羽状況 |
上半のロックボルトは打設しない. | 蛇紋岩の切羽で,掘削では鏡止めボルトを施工して核(さね)残しをしている. |
切羽の岩盤状況 |
TD1171(P139km235)地点の切羽である.片理が発達しハンマーで容易に崩れる. |
先進ボーリングのコア |
TD605から行った先進ボーリングのコアである.全体としては葉片状蛇紋岩であろう. 大きな露頭で見るとよく分かるが蛇紋岩の岩相(塊状,角礫状,葉片状,粘土状)は入り混じっていて,特別な場合を除いて明確に分けることは難しい. |
この記事は,<蛇紋岩トンネルの地山性状と設計・施工および岩盤崩落事例における発生機構の検討>現地見学会(検討会)に参加した時のものです.
主催した応用地質・地すべり両学会の方々,現地で説明して下さった北海道開発局深川道路事務所および佐藤・奥村・岩田 JV の方々に感謝します.