中央構造線の東への延長と巨大地震の発生

(2016年3月7日作成)

新知見

 東日本から九州までの日本列島を縦断する構造線である中央構造線は,糸魚川構造線を挟んでさらに東に連続していて,犬吠埼の北で太平洋に没している。その延長は,東北東に向きを変え日本海溝まで追跡できることが判明したという。D.Bassett らが2016年3月3日のネイチャーに発表した。

 この太平洋沖に延びている中央構造線を境に,北側では残渣重力異常の値が大きく,P 波速度が相対的に大きい。また,この境界の北側では,巨大地震発生の歴史があり,1896年からモーメントマグニチュード(Mw)7以上の18の巨大地震が発生し,その地震によるすべり量が大きい。一方,境界の南では,1923年以来マグニチュード(MJ)7 以上の地震は発生していない。
 今回の東北地方太平洋沖地震でも,この境界の北ではすべり量が大きかったが,南では相対的にすべり量が小さかったという違いが見られる。
 物性値などを見ると,この境界を境に地形的には0.8km,残渣重力異常で60mGal,密度異常で150-200kg/m3,北側が大きな値を示している。


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中央構造線の性格

 メディアンライン(中央構造線)と言えば東日本から西日本を経て九州に至る大構造帯である。フォッサマグナ(糸魚川ー静岡構造線)は本州を横断する大構造帯である。しかし,日本列島基盤の地体構造区分では,どちらもあまり重要な構造帯ではないというのが最近の研究の結果である(磯﨑ほか,2010)。
 中央構造線は,高角の右横ずれ断層と考えられてきたが,実際は北にゆるく傾斜した衝上断層であることが人工爆破実験による西南日本の構造断面によって明らかにされた(伊藤谷生・佐藤比呂司,2010)。
 この衝上断層としての中央構造線は,中新世に活動したもので古中央構造線 と呼ばれる。
 これに対して,第四紀に活動し右横ずれを示す中央構造線は新中央構造線 と呼び,四国と紀伊半島に限定され古中央構造線を切っているとされる(磯﨑ほか,2010)。

 糸魚川ー静岡構造線より西では,中央構造線は活断層として研究されてきた。東は諏訪湖の南で糸魚川ー静岡構造線にぶつかり,南南西に延びて伊良湖崎の北をかすめて紀伊半島に延びて四国の北部を横断して九州の国東半島の北を通り八代に抜ける。この間,九つの大きなセグメントに分けられる(岡田,1992)。基本的には右横ずれ断層とされている。
 例えば,天竜川支流の三峰川から小渋川上流,上村川上流へと続く谷には中央構造線の露頭が幾つか見られる。これらの露頭では,領家帯と三波川帯が高角度で接していて,谷は見事な直線となっている(大鹿村中央構造線博物館(http://www.osk.janis.or.jp/~mtl-muse/index.htm)>中央構造線ってなに?>中央構造線露頭)。

 糸魚川ー静岡構造線より東では中央構造線は,への字型に曲がりながら東へ延び犬吠埼の北で太平洋に没している。
 足尾山地と関東山地の間から利根川や荒川が南東に向かって流れ出している。この低地の南縁付近に中央構造線があると考えられている。中央構造線の南側の堆積岩類では,P波速度が4.4km/sec 付近で頭打ちになる傾向があるのに対し,三波川帯や領家帯では5km/sec 前後の値を示している(林ほか,2006)。

 プレート沈み込み帯では,上盤側プレートの物性が巨大地震の発生に影響を与えているというのが,今回明らかになったことである。プレート境界のアスペリティ(断層面の強度の強い部分)での破壊が本震となる考えられているが,破壊面のすべり量が上盤プレートの性質によって異なってくると言うことである。

参考文献(いずれもウェブサイトから入手できる。)


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