室蘭岳

 (2017年7月3日作成)

概 要

 室蘭市街の北10kmにある標高911mの山で,山の案内書では室蘭岳となっていて,山頂の標識も室蘭岳である。地理院地図では,鷲別岳(室蘭岳)となっている。
 山頂の北西側は急峻な斜面になっているのに対し,南斜面は部分的に段差地形や急な斜面があるが,平均傾斜10°の緩斜面となっている。中期更新世(70万年前〜15万年前:地質図Navi)の室蘭岳火山群の噴出物で構成されている。

 登山道は,室蘭岳山麓総合公園の上,スキー場施設の西の林の中の歩道をたどり,白鳥ヒュッテから登る。
 夏道コース(南尾根コース)と西尾根コース,鷲別川上流の水元沢沿いに上るコースの三つがある。
 図幅では,どのコースでも標高520m付近までは室蘭岳集塊岩層(ハイアロクラスタイト・凝灰岩)が分布し,それより上は室蘭岳溶岩としている。
白鳥ヒュッテに向かう途中にある望洋台霊園付近,標高200m付近まで段丘堆積物が分布している。
 コースタイムは,夏道コースは上り1時間15分,下り55分,西尾根コースは上り1時間45分,下り1時間5分である。


図1 室蘭岳.jpg
図1 室蘭岳
 右の超慈雨が雲に隠れているのが室蘭岳である。手前の急斜面は溶岩流の末端と推定される。
 左に西尾根が伸びている。左の尾根斜面の黄緑色に見える笹原が,855m峰の溶岩末端と考えられる。

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夏道コースの登山道

 だんパラスキー場の西にある歩道を上っていくと,白鳥ヒュッテに着く。ここが登山道入口で,夏道,水本沢,西尾根の各コースの出発点で登山届けボックスがある。
 夏道コースは右手の登山道を行く。このコース全体が,露頭はほとんどない。足許の転石を見ながら上る。標高470m付近には,輝石安山岩の転石が多い。
 標高500m付近に室蘭岳水神社があり,かなりの水がわき出ていて利用されているようである。


図2 室蘭岳水神社.jpg
図2 室蘭岳水神社
 小さな祠であるが,大事にされていることが分かる。祠に左手に沢があり,かなりの水が流れていて簡易な水槽が設置されている。

 ここからやや急な登りになる。西尾根から見ると一定の傾斜で延びている南尾根がここで急斜面を形成していて,溶岩流の末端と思わせる。この急な登りの途中に階段が有りその向こうに大きな岩がある。輝石安山岩である。


図3 急登部の転石.jpg
図3 大きな転石
 輝石安山岩である。標高540m付近である。ここを過ぎて少し行くと,なだらかな尾根に出る。階段が付いているのはこの場所だけである。

 標高550mから800m付近までは,なだらかな尾根道である。ダケカンバと笹原が続く,時々道に転がっている石は,輝石安山岩のほかに角閃石を含み流理の見える安山岩もある。
 尾根道の傾斜は約10°で非常に歩きやすい。溶岩の流走面の上を歩いているのであろう。


図4 自破砕状安山岩溶岩.jpg
図4 自破砕状安山岩
 標高650m付近で登山道に現れる自破砕状安山岩で,多分露頭と思われる。


図4 角閃石を含む安山岩溶岩.jpg
図5 角閃石を含む溶岩の転石
 標高680m付近の緩斜面に見られる転石である。角閃石を含み弱い流理が見られる。


図5 標高725m付近の緩斜面.jpg
図6 標高725m付近の緩斜面 
 ダケカンバとササからなる緩斜面で傾斜は約10°である。標高650mから780mにかけて登山道は直線的に尾根を上っているが,それほど苦労しないで歩くことが出来る。
 この山が多くの市民に愛されるのは,このような心が穏やかになる登山道だからかもしれない。


図7 室蘭湾.jpg
図7 標高650m付近から見た室蘭市街
 ここまで上ってきてようやく眺望が開けてきた。室蘭市街と工場群そして地球岬などの山々を望む。モヤがかかっていて,目をこらさいないと良く分からない。


図8 石畳.jpg
図8 頂上へ続く石畳
 標高800m付近に登山道は,石畳である。板状の安山岩を敷き詰めている。どこから,この石をもってきたのだろうか。さらに上にも石畳がある。


図9 頂上.jpg
図9 頂上
 頂上には「室蘭岳」の看板と鐘がある。見晴らしはそれほど良くない。
 右手の南斜面はなだらかだが,左手の斜面は35゚以上の急傾斜である。木は生えているが,一気に250mほどの斜面が続いていて,のぞき込むだけで怖い。

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