野幌丘陵

 (2008年6月14日作成)

 野幌丘陵は札幌に東に広がる原始林である.支笏カルデラの噴出物で形成された火砕流台地を除くと札幌周辺の最も新しい台地である.野幌原始林として保護されているため,眺望は望めないが様々な自然に触れることが出来る.


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野幌丘陵の規模

 野幌丘陵は札幌の北東にある標高15〜90mほどの丘陵で,北東端は石狩川の屈曲部で終わり,南はJR千歳線付近までの範囲である.野幌原始林と言われるものは,北は酪農学園大学付近から,途中,農地や工業団地などで途切れているが南は輪厚川−中ノ沢川までである.
 野幌森林公園は,北の酪農大学から南の立命館慶祥中学・高等学校までの間の南北5.8km,東西3.5kmで林道が縦横に走っている.ここは石狩森林管理署の国設自然休養林となっている.

nopporo1.jpg野幌自然公園大沢口の石碑

 大沢口は道立図書館や酪農大学のある文教通りを真っ直ぐに登って左に折れた突き当たりにある.やや狭いが駐車場もあり,トイレも完備している.


野幌丘陵の形成年代

 野幌丘陵は標高150m以下の台地,段丘状の丘陵で,河床砂礫層からなる野幌丘陵面と海成層からなる江別段丘面で構成されている.最も古い標高130m前後の段丘面があるとして,その形成年代は40万年前(海洋酸素同位体ステージ11)である.野幌丘陵がそれまでの沖積平野から丘陵へと成長を始めたのは,北半部では24万年前以降(海洋酸素同位体ステージ7以降)である(小疇尚ほか,2003,249-250)

野幌丘陵の地質

 野幌丘陵を構成する地質は,中期更新世(約80万年前〜13万年前)から後期更新世前半(13万年前から7万年前)に形成された野幌層群で,下位から貝化石を含む基底砂礫層,粘土・シルト・細砂細互層からなり泥炭や貝化石を含む下部縞状粘土層,粘土〜シルトからなり泥炭や貝化石を含む上部砂礫層からなる.上部は場所によって支笏軽石流堆積物(約4万年前)に覆われる(岡,1977).

nopporo2.jpg北海道野幌高校裏の崖面の堆積物

 土砂などの仮置き場になっている広場の掘削法面で見られる堆積物.
 下部は平行葉理が見られる細粒砂で淡緑灰色を呈する.表面から下2m付近から上部は細粒砂とシルトの互層で下部の細粒差を削り込んでいる.
 この崖面は石狩平野に向かって緩い傾斜で落ち込んでおり撓曲崖とされている.
 右に見える折尺は1m.

nopporo3.jpg北海道野幌高校裏の緩斜面

 低地側から見た野幌丘陵で,正面に白く見えるのが野幌高校の体育館である.道路が緩く登っているのが分かる.
 右端の緩斜面に鶯色をした牧草地が見える.ここで活断層トレンチ(吉井の沢地区)が実施された.

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桂の巨木

 大沢口の近くにある桂の巨木である.桂は古事記では香木とされており,香出(かつ)が転訛したと言われている(公園内の説明版より).
 6月頃の緑が一番美しい.

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公園内の地図と遊歩道

 左:案内板は公園内の各所にあるが,林の中は見通しがきかないので,自分が今どこにいるか分からなくなる場合があるので注意が必要である.
 右:大沢口から南に延びる遊歩道.冬はクロスカントリースキーのコースとなる.

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慶祥高校から見た藻岩山と林内の溜池

 左:森林公園の南の端にある立命館慶祥中学・高校脇から見た藻岩山.白い屋根は札幌ドームである.背後のスカイラインは標高1,000mほどの山々である.この付近の標高は約90mである.
 右:森林公園内にはいくつかの溜池がある.この溜池は「原の池」で,森林の東側へ流出する沢に設けられたものである.野幌では1895(明治28)年頃から水田が作られ始め,水を確保するために原始林が大切にされてきた(公園内の説明版より).


参考文献など

小疇尚,野上道男,小野有五,平川一臣編,2003,日本の地形2 北海道.岩波書店.

岡孝雄,1977,札幌東部 " 厚別低地帯 " の地下地質.地下資源調査報告,第49号,49-69.

北海道立地質研究所,平成12年度当別断層に関する調査成果の概要.
( http://www.gsh.pref.hokkaido.jp/research/active_fault/fault_research.htmll )


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