地すべり地形と周氷河地形

1 周氷河地形とは
2 周氷河地形の具体例
 (2002年3月9日作成:2008年8月11日修正)

1 周氷河地形とは

 中部日本から北の山岳地,東北北部から北海道の低山地には,周氷河地形が明瞭に残っている.この周氷河地形と風化岩地すべりが形態的に類似している.

 周氷河地形とは,地中水の凍結・融解の反復によって生じる凍結融解作用などの周氷河作用により形成された地形の総称である.このような周氷河作用が働く地域は,ほぼ年平均気温0℃以下の地域に一致する.現在の日本列島では周氷河限界は本州中部で標高約2,500〜3,000m,東北地方で同じく2,000m,北海道では同1,500〜2,000mである.したがって,近畿地方から南では現在,周氷河作用は働いていないと考えてよい.

 最終氷期(約7万年前から)後半(約3万年前から1万年前)の最寒冷期には,日本列島では年平均気温の等温線が現在よりも約1,500m低下した.この時期,周氷河地形の分布域は九州でも標高1,500m付近まで低下し,東北北部から北海道ではほぼ海水準まで周氷河地形が形成されたと考えられている.


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2 周氷河地形の具体例

 具体的な周氷河地形の特徴を,東北地方と北海道の例で挙げる.東北地方の例では,谷側に凹の等高線が形成され,一見崩積土地すべりのような地形となっているのに対し,北海道の例では,谷側に尾根状に突き出した地形と頭部陥没状の地形となっている.

表1 風化岩地すべりと周氷河環境で形成された地形の比較

事項風化岩地すべり北海道新得町山形県川樋
頭部地形 頭部滑落崖は不明瞭なことが多いが,急斜面となだらかな斜面の組合わせとなる.場合によっては,頭部陥没と分離残丘がある. 明瞭な頭部滑落崖に相当する急崖はない.頭部陥没と見ることが出来る凹地はあり,その前面に逆傾斜の分離残丘状のケルンバットがある.このケルンバットには巨礫が分布している. 頭部滑落崖に類似した凍結破砕崖と見られる露岩帯がある.その上部には不明瞭な溝状凹地も認められ,崩壊頭部と見ることもできる.
中間部地形 比較的一様な斜面となるが,いくつかの段差地形が認められることがある. 上に凸の整一な斜面で段差地形は認められない.斜面には巨礫が分布していることがある. 傾斜25〜45°の直線〜弱い凹型を呈する.直径数十cmの角礫が多量に分布し,数mの礫も点在する.
末端部 上に凸の斜面形を示し明瞭でない場合もあるが移動岩塊の形が認められる. 末端は表層崩壊を起こしていることがあるが,下に凸の斜面で明瞭な境界がなく段丘面に漸移する. 傾斜10°以下の平滑な斜面を形成する.表層には径数十cm〜数mの礫が散在し,先端は泥炭地に没する.堆積物の層厚は薄い.
平面形 馬蹄型,角形で側部に沢が発達していることが多い. 馬蹄型で両側に沢が発達している.沢の上流では崩壊地が見られる. 馬蹄形〜角形であるが,周囲の斜面が広く発達する.沢は未発達である.
構成地質 頭部付近は褐色化した亀裂の多い風化岩で末端では巨礫混じり砂質土であることが多い. 花崗岩で風化は比較的深い.末端でも同じ様な地質状況である. 中新世の凝灰岩〜火山礫凝灰岩で軟岩主体.中腹に硬質な層がほぼ水平に分布する.
地下水状況など ブロックの両側に発達した沢の上流で湧水していることが多いが,地すべりブロック内の地下水位は低い. 両側の沢の上流では湧水しており地下水位は比較的浅い. 斜面下方で少量の湧水があるが,全体に水量は少ない.下部の緩斜面では礫が多いため伏流する


周氷河地形の写真


(2002年3月9日)


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