ピセナイ山

 (2018年5月28日作成)

概 要

 ピセナイ山は静内ダムの東5.8kmにある標高1027m の山である.梅沢・菅原の「北海道 夏山ガイド④ 日高山脈の山々」(2012年5月)には,登山口から1時間40分で登れると書いてある.
 しかし,2018年5月22日に行ってみると,車が入れるのは荒れ放題になっている静内湖キャンプ場までで,ゲートに鍵がかかっていた.

 朝6時に札幌を発ってここまで来たのだから,行けるところまで行ってみようと静内湖左岸の東の沢林道を歩き始めた.
 ピセナイ沢入口まで30分,それからピセナイ沢の林道を4km,1時間歩いて登山口にたどり着いた.

 結局,北北東に張り出している急な尾根を登って864m のピークに達したところで時間切れで引き返してきた.家に着いたのは午後8時半であった.
 山登りとしては失敗であるが,登山口までの林道や標高530m からの急登部尾根の石を見ることが出来たので,それなりに楽しい1日であった.

 静内川の 双川ふたがわ ダム付近から高見ダムの東約9km 付近まではイドンナップ帯である.
 静内ダム付近からピセナイ沢にかけて分布している地質は,
1)岩清水層 の輝緑岩質凝灰岩,粘板岩・砂岩,チャート,石灰岩(ナイ沢コンプレックス・イドンナップユニット)
2)イドンナップ層(幌別川ユニット) の粘板岩・砂岩・チャート
である.

 静内ダム下流にある双川ダム付近から静内川とシュンベツ川の合流点付近には,
3)蛇紋岩(奥新冠コンプレックス)
が分布している.


図1ペラリ山とピセナイ山.jpg
写真1  新ひだか町・御園付近から見たペラリ山とピセナイ山
 手前三つの峰の右のなだらかな山頂がペラリ山(標高718m)で,左端の遠くに見える三角の山頂がピセナイ山(標高1027m)である.
 ペラリ山は蛇紋岩,ピセナイ山は前期白亜紀の付加体堆積物で山頂付近はチャートブロックが分布している.

東の沢林道ゲートからピセナイ沢合流点まで

 道道静内中札内線は,静内ダムサイトから先は通行止めである.上流には高見ダムと東の沢ダムがあり発電所もある.
 静内ダムの堤体道路を通り静内川左岸の林道を遡る.大きくカーブして沢二つを超えたところにゲートがある.ここから歩くことになる.確かに,この先は斜面からの落石,土砂流出があり,車での通行は不可能である.


図1 花崗閃緑岩露頭.jpg
写真2 花崗閃緑岩露頭
 東の沢林道(静内川左岸の林道)の最初のカーブに露出している花崗閃緑岩である.イドンナップ層中に貫入したものである.


図1 林道通行止め.jpg
写真3 東の沢林道の通行止めゲート
 ピセナイ沢入口まで1.7km の地点で通行止めになっている.ここから標高515m の登山口まで林道を約1時間半歩くことになる.登山ポストは登山口にある.
 地理院地図には描かれていないが,ピセナイ沢には沢山の砂防ダムが設けられている.砂防ダム建設のための作業用道路であろう.


図4 玄武岩.jpg
写真4 玄武岩  
 ゲートから300m の小沢で見られるイドンナップ層・玄武岩の滝である.左下にハイアロクラスタイト状の部分が見える.


図5 サマニユキワリ  .jpg
写真5 多分,サマニユキワリ
道路脇に咲いている.ちょうど満開である.


図6 メランジュ.jpg
写真6 破砕された玄武岩
 写真4の少し先の露頭である.一見,粘板岩のようであるが,図幅では「片岩質岩」としている.


図1 .jpg
写真7 イドンナップ層の粘板岩
層理面は急立している.


写真8 コエゾサクラソウ.jpg
写真8 コエゾサクラソウ
 林道から登山道に沢山咲いている.


写真9 イドンナップ層の粘板岩と石灰岩のブロック.jpg
写真9 イドンナップ層の粘板岩と石灰岩のブロック
 破砕された粘板岩の中に白色の石灰岩のブロックがある.ブロック・イン・マトリックスである.


写真10 緑色片岩.jpg
写真10 ピセナイ沢入口の緑色片岩
 静内川左岸の東の沢林道がピセナイ沢をまたぐ 比瀬内橋ぴせないばし の右岸側橋台のところに露出している緑色片岩である.転石の可能性もある.

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ピセナイ沢を遡る

 ここから約4km,ピセナイ林道をひたすら歩く.
 何カ所か,沢からの土砂で林道が埋められている箇所がある.ピセナイ沢の河床と尾根との比高は,400m ほどで平均傾斜は30゚である.
 林道の標高180m 付近まではイドンナップ層の混在岩で,それより上流はピセナイ山の山頂を含め岩清水層で,緑色岩(輝緑岩質凝灰岩)や玄武岩類(正規型スピライト)が分布している.
 農屋図幅では全体の構造は北北西−南南東の走向で南東に60゚傾斜となっている.


写真11 イドンナップ層の凝灰岩.jpg
写真11 イドンナップ層の赤色凝灰岩  
 レンガ色を示す凝灰岩である.一見チャートのようであるがハンマーで層理面に沿って簡単に割れる.


写真12 岩清水層の玄武岩.jpg
写真12 岩清水層の玄武岩  
 一見,泥岩のように見えるが,多分,玄武岩である.


写真13 崩壊跡.jpg
写真13 崩壊跡 
 林道の標高190m 付近で見られる崩壊跡である.崩壊礫は,大きくても人頭大である.


写真14 地すべり.jpg
写真14  ピセナイ沢左岸の地すべり
 林道の標高215m 付近の左岸に見られる岩盤地すべりの末端である.標高300m 付近を頭部とする岩盤地すべりで,ピセナイ沢を塞いでいる.奥行き190m,幅180m ほどである.この写真の左上の木の生えている付近に緩斜面が広がっている.


写真15 緑色岩.jpg
写真15 緑色岩 
 林道の標高330m 付近で見られる片状構造を持つ緑色岩である.林道が大きく南に突き出してカーブした先の露頭である.


写真16 登山口.jpg
写真16 登山口
 標高515m 付近で作業道から離れて尾根に取り付く登山道になる.登山届けの箱は,この下の標高475m 付近の作業道の途中にある.

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尾根筋を登る

 登山道の標高530m付近から標高631mの尾根の先端まで急な登りが続く.両側が切り立っていて地形図で見るよりも怖い尾根である.下りは沢を降りたいくらいであるが,どこに急崖があるか分からないので,この狭い尾根を降りるしかない.
 登山道に出てくる地質は,黒色細粒の玄武岩,淡緑色の緑色岩,それに小さく片状に割れる粘板岩である.


写真17 玄武岩.jpg
写真17 玄武岩 
 黒色で細粒な玄武岩である.標高530m付近である.


写真18 コエゾサクラソウとバイケイソウ .jpg
写真18 オオサクラソウとバイケイソウ 
 急な尾根を登った先の緩やかな尾根の上に咲いている花である.西丹沢の檜洞丸では,コイワザクラとバイケイソウを見た.


写真19 緑色岩.jpg
写真19 緑色岩
 標高710m付近に見られる細粒緻密な緑色岩である.農屋図幅では正規スピライトの分布域である.


写真20 六合目から.jpg
写真20 六合目から頂上を見る
 ピセナイ山から西に延びる尾根の標高864m地点が六合目である.ここから1時間弱で頂上に達するが,下山時間を考えて諦めた.


写真21 六合目から北を見る.jpg
写真21 六合目から北を見る

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