流動性地山

 未固結ないし半固結の地山は,一般に粒度74μm以下の成分(バインダー分=シルトより細かい成分)の含有量により分類される.

 バインダー分20%以下:砂質土
 バインダー分20-40% :中間的なもの
 バインダー分40%以上:粘性土

 バインダー分30%を境界として砂質土と粘性土に分ける考え方もある(桜井,足立,1988).

 「バインダー」というのは,印刷物などを綴じるバインダー(binder)と同じで,地盤を構成する粒子を結合させている細粒分のことを指している.なお,地盤材料の工学的分類では,細粒分と粗粒分の区分は,0.075mm(75μm)で,砂質土と粘性土の区分(粗粒土と細粒土の区分)は細粒分50%となっている.一方,堆積学の分野では砂とシルトの区分は,1/16mm(=63μm)で行っている(ウェントワースの粒度スケール).

図1地盤材料の粒径区分とその呼び名

図2 地盤材料の工学的分類((社)地盤工学会,1999,p217)

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↑図3 ウェントワースの粒度分類に基づいた堆積粒子の区分表

 ここで言う流動性地山というのは,砂質土地山のことである.このような土質の流動現象(流砂)は次のようなものである.

 水を伴わない場合は,粘着力のない粒状体は安息角(一般には30-35°前後)より急な勾配で不安定になり安息角になるまでグラニュー糖のように流動する(Cohesiverunning).

 地下水位以下にトンネルが位置するような場合は,土と水が混合され粘性流体のように流動する(Flowing).地下水面下のシルト,砂,あるいはバインダー分の少ない礫などでこのような流動が発生する.運動形態としては,土石流あるいは泥流と同じである.

 このような性質を示す地質としては,鮮新世以降の砂岩,更新世以降の火山噴出物(火砕流,降下軽石堆積物などで代表例は,しらす)などがある.また,非常に亀裂が多く数cm間隔の亀裂により分離面が形成されているような時代の古い硬岩でも,流動現象が発生することがある.

図4 土砂流の堆積運搬機構

 トンネル工事の場合,流動性地山の特徴と地質工学的な問題点は次の通りである.

 地質:新第三紀鮮新世から第四紀更新世の地層で流砂現象が発生しやすい.有名な地層としては,多摩丘陵周辺の稲城砂層,千葉の成田層,北陸地方の鬼伏層,青森の蟹田層などがある.九州のしらす,富士山周辺の火砕流もこの部類に入る.
 花崗岩の風化産物であるマサも流動性地山である.

 土被りとの関係:砂質土地山での変位計測結果から次のようなことが判明している.


50m程度以下の土被りの小さい砂質土地山では,天端歪に比べて壁面歪が小さく,土被り10m程度であると壁面歪は天端歪の1/10ほどになる.土被りの小さい砂質土地山では,トンネル天端直上付近の鉛直変位量が地表まで一様な分布となって,いわゆるとも下がり現象が発生してアーチアクションが形成されにくいとされている
(桜井,足立,1988).


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図5 砂質および粘土質地盤における土被り比(H/D)と壁面歪比(εa/εt)の関係

(桜井ほか,1988,p27)


流動性評価の指標:流動化を起こしやすい地山の目安として次のものがある.

 均等係数(Uc);均等係数は粒度分析によって容易に求められる.
 均等係数が小さい土は,粒径加積曲線が急立しており,粒度が均等で粒度分布が悪い.

Uc=D60/D10
 ここで,D60:質量百分率60%に相当する粒径
 D10:質量百分率10%に相当する粒径

 均等係数と土の状態は次の通りである.

1<Uc<5 均等な土(粒度分布が悪い) 海岸砂のようにさらさらした土
5<Uc<10 普通の土(中位の粒度分布)
10<Uc  不均等な土(粒度分布がよい土)

「粒度分布がいい,悪い」と言う表現は多少とまどうが,粘土から礫までを含んでいる土が「粒度分布がいい土」で,粘性土をほとんど含まないでさらさらの土が「粒度分布が悪い土」である.

 粒径0.01mm以下のシルトが10%,粒径0.05mm以下のシルトが60%含まれている土は均等係数5で,ほとんどシルトのみからなる均等な土である.同様に均等係数5であっても砂,礫のみからなる場合も考えられる.

 トンネルでの施工実績では,均等係数4以下で流砂現象が発生しやすい.


 水流で堆積物の粒子が運び去られる場合,平均粒度が0.1-1.0mmくらいの砂がもっとも低速(5-10cm/secくらい)で運ばれやすいという実験結果がある.シルトや粘土は砂に比べて速い流速でないと運び去られない.このような,土の粒子と水の間の関係も流砂現象が均等な砂で発生しやすい原因の一つと考えられる.

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図6 河床の堆積物の粒度と流水のエントレインメント速度の関係

 透水係数;均等係数が小さい砂質土は細粒分が少ないので透水係数が高くなる.水が通りやすいために流砂現象を起こしやすい.
 N値;未固結から半固結の砂質土では,N値が20-50以上を示しても均等係数が小さいと切羽は自立しにくいのが特徴である.したがって,N値のみで流動化判定を行うことは危険である.
 地下水位;砂質土で地下水のあるなしは,切羽自立の大きな要素となる.地下水位を低下できれば切羽を自立させることは可能である.


以上をまとめると流砂現象を起こす指標は次のようになる.

指標 流砂現象を起こしやすい数値
土粒子の比重 2.65以下
乾燥密度 17.0-17.5 kN/m3
均等粒径 4以下
10%粒径 0.15mm以下
60%粒径  1.5mm以下

 
 

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図7 流砂現象を起こす砂の特性図(土木学会,1987,p96)

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図8 流砂現象を生じた砂の粒度(同上,p97)

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図9 流出した土砂で天端付近まで埋まったトンネル


参考文献

地盤工学会「土質試験の方法と解説」改訂編集委員会,1999,土質試験の方法と解説(第一回改訂版).(社)地盤工学会.
土木学会岩盤力学委員会編,1987,トンネルのおける調査・計測の評価と利用.土木学会.
桜井春輔,足立紀尚編,1988,都市トンネルにおけるNATM.鹿島出版界.
ウィリアム J.フリッツ,ジョニー N.ムーア,原田憲一訳,層序学と堆積学の基礎.愛智出版.

以上


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