尻別岳は,札幌から洞爺湖に向かう国道2230号の喜茂別付近から見える円錐形の山である。その形から,初めて見た人は羊蹄山と間違えることがある。
羊蹄山は,記録に残る火山活動はないが,もっとも新しい山頂噴火は2,500年前とされていて活火山である。北麓の側火山の活動は6,000年前〜11,000年前とされている。
これに対して,尻別岳は約5万年前の喜茂別溶結凝灰岩を噴出した火山とされている。
尻別岳は橇負山を含め,尻別岳溶岩で構成されいて,その末端は標高500m付近である。その周りの緩やかな斜面は,扇状地堆積物・崖錐堆積物とされている(5万分の1地質図幅「留寿都」)。
登山道で見られる石は,すべてデイサイト質安山岩で,最大径10mmの白濁した斜長石が目立つのが特徴である。角閃石と石英を含んでいて,留寿都図幅では,含石英角閃石,普通輝石紫蘇輝石安山岩としている。
同じ岩質の安山岩は尻別岳西方の軍人山などにも分布しているとしている。
尻別岳東方の尻別川鈴川付近に喜茂別溶結凝灰岩の良好な露頭がある。
この溶結凝灰岩は,
「上部(Km−pfl1)および下部(Km−pfl2)の二つのユニットから構成されること、給源火山は分布および本質物の岩石学的検討から,羊蹄山の南東に位置する尻別火山であることが明らかになった。」(中川ほか,2011)。
喜茂別溶結凝灰岩の特徴は,
「模式地では,柱状節理が発達しているが,ところによっては,径数cm~20cm の浮石(軽石)を多量にふくみ,指頭大の安山岩亜角礫も多少まじえ,粗鬆な凝灰岩状にかわる。
一般に, 径 l mm 内外の石英粒を多量にふくんでいるが,これがこの熔結凝灰岩の特ちょうでもある。」(斎藤ほか,1956,15p)。
模式的な露頭は尻別川右岸の尻別付近で,喜茂別川左岸や尻別川と喜茂別川合流点の下流右岸にも分布している。
また,豊浦図幅内では貫別川沿いに同じ岩質(灰色の石英粗面岩質)の溶結凝灰岩が,かなりの範囲に分布しているとしているが(同上),豊浦図幅のどの地層かは不明である。