地すべりが発生した直後に応急対応する時,地すべりの形状を把握することは非常に重要である。平面的な外形は踏査によって,ほぼ把握することができる。しかし,ボーリングをする前にすべり面深度を決める方法は,統計的に地すべりの平面形状から推定する方法が用いられることが多い。
すべり線推定法というのは,地表変位データを用いて地すべり断面でのすべり面の形を推定する方法である。
ここでは,(独法)土木研究所ほか編著,2013,地すべり線の形状推定法,鹿島出版会(以下,推定法と言う)の概要を紹介する。
すべり線の頭部あるいは末端は踏査などによって確定できるので,この点を出発点としてすべり線を断面図に描いていく。
すべり線推定法では,次のような仮定を設ける。
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上端境界点が実際と異なる場合には補正を行う。 |
この手法は,斜面災害が発生した直後に地下のデータが無い状態で,地表面の変位ベクトルからすべり面の深度を精度良く推定するための方法である。そのためには,地すべりブロックが,どのような動きをしたのかを可能な限り正確に把握する必要がある。
まず地すべりブロック内の踏査を行い,動きの単位(ブロック)を把握し,変位を示す現象から推定できる変位方向をつかむ必要がある。地すべり縦断方向に何点か変位ベクトルを把握できれば,最も簡単な多角形平衡法によってすべり線を推定することができ,大まかなすべり面深度を設定できる。
この結果にもとづきボーリング計画などを立案することも可能であろう。
踏査によって地すべり全体の移動方向や対策工検討に必要な主測線を設定し,それに沿って地表変位ベクトルデータを取得するための計測を実施する。
地表面変位ベクトルのデータが取得できたら,すべり線推定システムによって断面モデルを作成し,計測データを入力してすべり線推定解析を行う。
大事なことは,解析結果が現地と矛盾しないかの検討を必ず行うことである。
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「地すべり線の形状推定法」の目次は次のとおりである。
この解析システムが適用可能な地すべりの運動様式がある。その判定のためには地表踏査が重要である。
4章には地すべりブロック内の様々な現象が写真入りで紹介されていて参考になる。
5章では地表面変位計測手法が紹介されている。GPSとトータルステーションが主要な方法である。地上での3Dレーザースキャナや写真測量も利用できる。
なお,この方法について詳しく述べたものは,
土木研究所>砂防・雪崩>地すべりチーム>研究成果
に共同研究報告書第450号(2013年1月),第451号(2013年1月)がある。
また,「すべり線推定プログラム」は,地すべり研究チーム>研究ツール
からダウンロードできる。