| トンネル種別 | 2供用中のトンネル | 変状トンネル |
| 道路トンネル | 4,307件 | 292件(6.8%) 過去対策実施209件(4.9%) |
| JR鉄道トンネル | 約3,600箇所 | 50%(約1,000km)が戦前に建設 |
| 公営地下鉄トンネル | 483km | 最古は73年前(開削・シールド) |
| 下水道トンネル | 226,000km | 4,360km(約2%)が50年以上経過 |
| 発電用水路トンネル | 6,200km | 3,000kmが昭和初期以前に建設 |
| 通信用トンネル | 800km | 約5%で鉄筋の腐食 20年以上経過の約10% |
■変状現象:漏水;60%
変状のあるトンネル;全トンネルの24%
クラック発生,施工継ぎ目の開き,剥離,石灰等の析出
路面の変状,押し出し,側溝の変状は少ない.
■変状の多いトンネルの建設年代:1961〜1970
1971〜1980
■変状発生までの供用年数:10年以内;約30%
30年以内;約90%
■変状発生箇所の土被り:40m以下の箇所で多い傾向にある.
■変状発生箇所の岩種:第三紀層が約40%
火山岩,中生層が11〜13%
変成岩,深成岩,古生が7〜9%
脈岩,洪積層は5%以下
■変状発生原因:漏水または凍害,老朽,偏土圧,覆工背面の空洞,膨張性地圧,異常水圧・出水,地すべり,支持力不足など
■変状対策工:吹付けコンクリート,ロックボルト,裏込め注入,繊維補強吹付
け,内巻きコンクリート
この10年くらいに発生した事例では,1996年2月10日の北海道の国道229号豊浜トンネル古平側(北側)坑口の岩盤崩落,1997年8月25日と28日の国道229号第2白糸トンネル瀬棚側(南側)坑口の岩盤崩落がある.これらの災害ではトンネル坑口が外力により一気に破壊されたのが特徴である.
しかし,豊浜トンネルでは,崩落直前に通行者が土砂が天端から落ちてきているのを見て警察に連絡している.また,JR室蘭本線礼文浜トンネルのコンクリート塊落下事故では,覆工コンクリートに押し抜きせん断を示す放射状のクラックが発生していた.
このようにトンネルが破壊する前に前兆現象が観察された事例がある.
1990年2月4日に千葉県の国道127号小山野トンネルで発生した崩落事故
は,土被り約23m(坑口から38mの地点)の所で,トンネル天端が高さ約4.0m,幅約5.5m,トンネル方向に約6.6m(土砂量約200m3)にわたって崩落したものである.このトンネルでは前日もパトロールをしていたが崩落の予兆は見られなかった.このトンネルの地質は半国結の砂岩であったため一気に崩壊が発生したと考えられている.
幸い人身事故はなかったが,建設省ではこの事故を受けて全国約6,000の道路トンネルの緊急点検を実施した.その結果,約10%のトンネルで軸方向の5m以上のクラックがあることが判明した.この崩壊も一つの契機となって,道路トンネルについては1993年に「道路トンネル維持管理便覧」(以下「便覧」と呼ぶ)が発行されトンネル維持管理の手法が確立された.
コンクリート構造物の劣化に関わる因子とそのメカニズムについては,中性化,塩害,凍害,アルカリ骨材反応,化学的侵食(二酸化炭素や酸類により耐力が低下する現象),疲労などについて劣化機構,予測手法,性能照査がかなりの精度で可能となってきている.
メインテナンス工学にとっての重要な点は,それぞれの構造物の建設時およびその後の維持管理履歴のデータベースを整えることである.
なお,鉄道トンネルの変状調査の特徴は,やはり安全管理をきちんと行わなければ調査時に事故を起こすということである.鉄道では多くの場合,活線(列車運行を確保した状態)での調査となるため列車の運行を正確に把握し十分な時間を持って避難することや高電圧の送電線に絶対接触しないよう注意する必要がある.トンネルそのものの変状現象や変状原因は道路トンネルと変わらない.
既設トンネルの変状調査の留意点は以下の通りである.
(1) 変状トンネル調査・対策工検討では,トンネル構造の安定,通行車両の安全
建築限界や道路線形の確保の三つを基本とする.さらに,必要に応じて合理的か
つ効率的な対策工を立案する.また,通行規制は最小限にとどめるよう考慮する.
(2) 変状トンネルでは,対策工のやり直しは極力避ける.したがって,必要な範
囲で長期的に見て手直しがないような対策工を計画する.ただし,変状対策工と
日常の点検管理との兼ね合いで可能な場合は,必要最小限の対策に留めることも
検討する.この点では,変状が進行しているか否かが一つの大きな要点となる.
また,変状原因が外力によるものかそれ以外の原因かは,補強工で対応するか補
修工で充分かを判断する大きなポイントである.
メインテナンスマネジメントの観点からはライフサイクルコストをの検討を行い性能を維持するための最小限の対策が経済的かどうかの検討を行うことになる.
(3) 変状調査時も勿論であるが,変状対策施工時も通行規制は最小限に留めるが,同時に調査や工事の期間中の安全についても十分な注意が必要である.作業員の安全は当然であるが,第三者事故の発生は起こしてはならない.
(4) 維持管理のためには,新設時の工事記録と同時に,供用後の維持管理,補修・補強記録を整備しておくことが重要である.変状調査で得られたデータ(ク
ラックの発生位置・性質・規模,クッラク変位量,トンネル縦断の通りなど)を
解釈する上でこれらの記録は非常に重要である.
このようなデータベースは新たにトンネルを建設するときの設計・施工の参考にすることにより経済的で信頼性のあるトンネルとすることが出来る.
定期点検については,「平成14年4月 道路トンネル定期点検要領(案)」(国土交通省道路局国道課)および「平成13年7月 道路トンネル点検・補修の手引き[近畿地方整備局版]」((財)道路保全技術センター)が参考になる.ここでは,初回点検とその後の点検の頻度,方法が具体的に述べられている.点検の柱は,目視と打音検査で,応急処置として危険なコンクリート覆工のたたき落としを行い,その後の調査・対策の必要性の判定を行う.
詳細調査は,標準調査である程度変状原因が明にしてさらに原因の特定と対策 工の立案を目的として行うものであるので,トンネルの構造的欠陥(巻き厚不足 や背面の空洞の存在,覆工コンクリートの強度試験,トンネルの断面形状)やト ンネル周辺地山の応力状態(覆工等の応力,緩み深度確定,地すべりの有無)な どについて調査を行う.
以上は標準的な調査手順であり,これに則って実際の調査は進められる.
(2) クラック展開図の作成:
1) クラック展開図は変状調査の基本的な図面である.新設時の資料からトンネル断面を知り天端のセンターライン,両側壁のスプリングラインの線を記入したものにクラックを記入していく.
現在は,CCDカメラやレーザー光線による測量で精度良く効率的にクラック展開図を作成することが出来る.このような機器を用いてクラック展開図を作成し,この図を持って経験のある技術者が主要なクラックを黙視で観察し,変状原因の推定や対策工の範囲決定の判断をすることが必要である.
ざっと見て路盤に変状があるようであれば路盤のクラックも記入する.完全に胴切り状態で側壁から路盤まで続いているクラックは要注意である.
2) クラックを観察する場合には,クラックスケールを必ず用いる.人間の目は線状のものの幅を正確に認識できないようで,1mmの幅があると思ってもせいぜい0.5mm程度である.
3) クラックの性質も重要である.大きくは圧縮応力を受けて形成された圧座
クラック(剥離を伴う),引張応力により形成された開口クラック,段差を持
つせん断クラック,外力による変位を伴わないクラック(目地切れやコンク
リートの乾燥収縮など)に分類して記載する.
4) 湧水点は正確に記載し湧水量も定性的でよいから記載する.遊離石灰が出
ているクラックはまだ貫通していないと考えてよいが,クラック付近が褐色化している場合にはクラックは貫通し背後の地下水がしみ出していると考えた方がよい.
5) クラックに全て番号を付け,クラックの性質,クラック幅,クラックの長
さ,方向(縦断,横断,斜めなど),湧水の程度などをそれぞれのクラックに
ついて記載しておくと評点法で評価を行う上で役に立つ.
6) 寒冷地や標高の高いところのトンネルでは,湧水がつららや側氷を形成し
通行の障害となるほか,路盤に滴下した水がアイスバーンや氷筍を形成する.
したがって,寒冷地などでは冬期の調査を行うことが望ましい.
(3)地表踏査:
1) トンネル全体の地質構成,地質構造を明らかにする.特に断層,地層境界,透水層,層理面や片理面等とトンネルとの関係を把握する.坑口付近は崖
錐堆積物や風化部の分布状況に注意する.
2) クラック展開図に地質構造を反映できる図面を作成すると変状原因を検討
する上で非常に有効である.クラックの集中点や湧水点が地質構造とぴたりと一致することがある.方法としてはクラック展開図に地層境界や断層破砕帯を記入する方法,縦断図に手前のアーチ・側壁に分布するクラックを実線,反対側のクラックを破線で記入する方法などがある.場合によっては水平断面図を作成することも有効である.
3) トンネル変状との関係で重要なのは,地すべり地形の有無であろう.トン
ネルは基本的には円形構造であるので,横断方向に均等にかかる力に対しては比較的抵抗力があるが,縦断方向の力やトンネル全体が移動するような力に対しては抵抗力が小さいのが特徴である.したがって,地すべりとトンネル線形の関係を正確に把握する必要がある.
また,地すべりの滑動力は数100tonというのは珍しくなく普通のトンネルの構造では対抗できない.
(4)地形測量とトンネル内測量:
1) 「平成5年11月 道路トンネル維持管理便覧」((社)日本道路協会:「便覧」)では詳細調査で実施することになっているが,少なくともトンネル内の測量は初めに行っておくのがよい.この目的は,天端,側壁脚部,出来ればアーチ肩部の通りを見ることである.スプリングライン付近にトンネル方向のクラックがある場合は側壁が押し出されている可能性があるので,側壁の水平変位を抑えておくことが必要となる.
2) トンネル変状は背面の地質状況や覆工の状態,地形条件に大きく左右され,変状の程度がトンネル区間で異なってくる.したがって,対策を必要とする
区間を特定するためにもトンネル内測量は必要となる.
3) 目視でやや密なクラックが確認できるトンネルでは天端が数10cm以上
沈下していると考えた方がよく,場合によっては建築限界を侵していることがある.
(5)クラック経時変化調査:
「便覧」でひび割れ簡易調査あるいはひび割れ形状変化調査とされているもの
である.
最も簡単な方法は,クラック展開図作成時にクラック先端をマークしてお
くだけでよい.意外にクラックは進行するものである.
モルタルパットはクラックを跨いで固練りのモルタルを張り付けて,このモルタルにクラックが入るかどうかを観察するものである.この方法は,クラックが進行しているかどうかの判定は出来るがその動き(変位の時期や変位量)がつかめない欠点がある.最近は簡単なバアーニア式のクラックゲージがあるのでそれを用いるのが手軽である.ただし,目で確認できる位置(スプリングラインより下くらい)でないと使用できない.
スプリングライン付近から上部に連続性のあるクラックがある場合は電気式ク
ラックゲージを設置せざるを得ない.その場合は,クラック展開図をもとにクラ
ックの発生原因を想定し重要で代表的なクラックに設置する.
クラックの進行性判定は,対策工の優先度に大きく影響する.当然対策工法を
検討する場合も大きな要素となる.進行しているのであればその原因をはっきり
させ力で対抗する必要がある.場合によっては,季節的な変動だけで変位が累積
しない場合もある.
また,面導水工のように覆工表面を覆ってクラックの状態が見えなくなる工法
では,クラックの開口度が進行している場合には採用に際して十分注意する.進行性の把握が必要と判断した場合は観測窓を設けておく.
(6) 内空変位経時変化調査:
一つ一つのクラックだけでなくトンネル覆工全体の変位を調査する場合がある.
トンネル新設時に行う内空変位測定の方法で行うことが出来る.内空変位測定は
従来はコンバージェンスメーター(ダイアルゲージと鋼製テープを組み合わせた
高精度の巻き尺)で測定していたが,現在は標的をトンネル覆工表面に取り付け
光波測量により三次元的に変位を求めることが出来る.
また,写真計測の手法を使ってトンネル全体の変位を測定することもできる.クラック自体の進展状況や幅の変化を計測する方法,ターゲットを設けてその変位を計測する方法などがある.
この調査は変状調査としては,あまり多く用いられないが,トンネル全体の変状
の進行性を評価する場合には有効である.つまり,トンネルの一定区間が地すべりで移動している可能性がある場合などである.
(7) 覆工劣化調査:
特に長年月を経過して覆工コンクリートが劣化している場合には,変状の主原
因がコンクリートの劣化にある可能性が大きい.このような場合には,覆工コン
クリートの劣化程度を調査する必要がある.
最も簡易な方法は岩石ハンマーで覆工をたたいてその硬さをみることである.
また,シュミットハンマーによる強度試験も有効とされている.しかし,長年月
経過した覆工コンクリートの表面には塩類が付着しており正確な強度を表面をた
たく方法で得ることは難しい.また,セメントが流出してジャンカが形成されている場合には骨材の強度を測定していることになる.
したがって,コンクリートの劣化が主な変状原因と判断した場合は,コア抜きにより供試体を採取して強度試験および中性化試験を行う必要がある.
また,クラックが貫通しているかどうかの判定をする場合は,コア抜きでクラックを跨いで抜くことにより判定できる.
(8) 気象調査:
トンネルのクラックの挙動などは気温や降水量に影響されていることが多い.
とりあえずは近くに気象観測点の気象データを収集する.
気温;日平均気温,日最高気温,日最低気温
降水量;日降水量
必要に応じて過去のデータも収集し当該年の気象条件が異常かどうかの判断を
行う.
寒冷地では凍結がトンネル変状の有力な原因となることがある.その場合には,
トンネル覆工背面の凍結深と気温を測定するのがよい.地中温度と気温とはかな
りのタイムラグがあるので,春先にはやや長期に観測する必要がある.凍結深の
最も簡単な測定方法は凍結深度計を埋設し定期的に取り出して観測することであ
る.何段かに分けてサーミスターを埋め込んで深度ごとの地温を測定する方法も
ある.この方法では地温勾配を得ることが出来る.
どの程度の精度で地中温度を得るかはやはり変状原因が何かによって異なって
くる.クラック展開図にもとづく変状原因の推定が全ての出発点である.
以上が主として変状原因を推定するための調査である.これに対して,主とし て対策工を検討するための調査がある.
(9) 地形測量:
トンネル変状は特に坑口付近に発生することが多い.土被りが著しく大きい場
合にはあまり意味がないが,最低坑口付近だけでも地形測量と縦横断測量を行い
地形とトンネルとの関係,特に偏圧地形かどうか,極端に側壁部の土被りが薄い
区間がないかの検討を行っておく必要がある.鉛直方向の土被りについては比較
的見逃すことは少ないが,水平方向の土被りは横断測量をしてはじめて分かるこ
とがあるので注意を要する.
(10) 地山挙動調査:
トンネル周辺の地山の挙動を把握するための調査で,トンネル内,トンネル外
でボーリングを行い,地中変位計,傾斜計,パイプひずみ計などを設置し地山の
挙動とクラックの挙動との関係を把握する.
ボーリング孔を利用して各種検層や現位置試験を実施するのは新設時の調査と
同様である.特に変形係数は重要な地山定数である.著しく変状が進んでいる場
合には粘着力および内部摩擦角が必要となってくる.
トンネル坑内からのボーリング調査は覆工厚,覆工背面の空洞の有無,地山の
緩み範囲を確認する.工夫をすればコア抜き機で覆工を含めて5m程度の深度ま
ではコアを採取することが出来る.ボアホールカメラにより亀裂の方向,開口度,
性質を把握することも変状原因の推定に有用である.
補強対策としてロックボルトを打設する場合には緩み範囲の把握が必要となっ
てくる.まず,ボーリングのコア状況で推定し,地中変位計により確認するとい
うのが一般的である.速度検層あるいは坑内弾性波探査も有効な方法である.ま
た,コア状況から自穿孔ロックボルトでないと打設できないかどうかの判定も行
える.
覆工背面の応力測定はよほど変状が著しくかなり剛な構造で対抗しないと変状
が収まらないと判断した場合には必要となる.ただし,ここで測定される応力は
あくまでも測定時点からの応力増分である.
(11) 水質調査:
トンネルからの漏水が有害な役割をしている場合には,水質調査が必要となる.
漏水を舐めてみて舌に渋みを感じるようであればpH4程度と考えてよく,すっ
ぱみを感じるようであればpH3以下と判断してよい.水質がおかしいと感じた
ならpHメーターで現場測定し,必要であれば室内水質試験を実施する.
(12)空洞調査:
覆工背面の空洞調査にはレーダー探査が有効である.レーダーでは覆工厚,背
面の空洞,鋼製支保工あるいは鉄筋がある場合はその位置を把握することが出来
る.
(13)地山試料試験:
地山試料試験としては,一般的な岩石試験と膨張性粘土があると判断した場合
にはX線回折を行う.寒冷地ではシルト岩が分布する場合には凍上試験を行う必
要がある.
地山試料試験;比重・吸水率試験,単位体積重量試験,一軸圧縮強度試験,
圧裂引張試験,超音波伝播速度測定
(一軸圧縮試験では静弾性係数,静ポアソン比を求める)
特殊な試験 ;膨張圧試験(膨張量,膨張圧),凍上試験(凍上量,凍上圧)
覆工コンクリートについては中性化試験,一軸圧縮強度試験を実施する.
| 変 状 原 因 | |
|---|---|
| 外 力 | 緩み土圧(主として鉛直圧,突発性の崩壊) |
| 偏土圧・斜面葡行 | |
| 地すべり | |
| 膨張性土圧 | |
| 支持力不足 | |
| 水圧・凍上圧 | |
| 材質劣化 | 経年変化 |
| 凍害 | |
| 塩害 | |
| 有害水(強酸性水) | |
| 使用材料・施工条件(セメントの水和熱による体積変化) | |
| 鋼材腐食(坑門や坑口付近) | |
| アルカリ骨材反応 | |
| 火災(覆工コンクリートが高熱になる) | |
| その他(排気ガス中の窒素酸化物による酸性水の生成など) | |
| 漏水 | 凍結によるクラックの開口と材質劣化 |
| その他 | |
| 背面の空洞 | |
| 巻き厚不足 | |
| インバートなし(長期的安定が保たれていない) | |
以下,各変状原因の特徴を述べる.
トンネルの材質劣化は覆工コンクリートの劣化が大きな要因となる.トンネル背後の地山が酸性水などを含んでいてそれによりロックボルトや鋼製支保工が腐食して覆工コンクリートが劣化することも考えられるが,基本的には覆工表面から劣化が進行する.
コンクリートの経年劣化は避けられない.代表的な要因として,中性化,塩害,凍害,アルカリ骨材反応,化学的侵食,疲労がある(「社会基盤メインテナンス工学」より).
(1) アルカリ骨材反応は,アルカリ・シリカ反応,アルカリ・シリケート反応,アルカリ炭酸塩岩反応の3つに分類されるが,日本ではアルカリ・シリカ反応が最も事例が多い.この反応の機構は,骨材に含まれる反応性のシリカ鉱物とセメントから供給される水酸化アルカリが水の存在のもとで反応してアルカリ・シリカゲルを形成する.このアルカリ・シリカゲルが吸水して膨張圧でコンクリートにひび割れを発生させる.ひび割れは進行性である.
(2) ひびわれの形態は次のような特徴がある.
無筋構造物やRC構造物でも鉄筋による拘束の影響が少ないものでは亀甲状のひび割れが発生する.RC構造物では鉄筋に沿ったひび割れが発生する.ひび割れからゲルの進出が伴っていることが多い.
(3) アルカリ・シリカ反応を起こす骨材中の反応性成分としては,オパール,クリストバライト,トリディマイト,火山ガラス,玉随,潜晶質石英など結晶
していない水を含んだシリカである.岩石としては安山岩,凝灰岩,チャー
ト,粘板岩,砂岩などである.また,玄武岩も問題となる.
アルカリ・シリカ反応による構造物の劣化機構は明らかになっているが,これにもとづいた構造物の寿命予測は実用化されていない.アルカリ骨材反応によるコンクリートの劣化は化学反応によりアルカリシリカゲルが形成される段階,アルカリシリカゲルが吸水して膨張する段階とがある.この膨張量を予測する方法としては構造物をコア抜きして得た試料で促進養生試験を行って残存膨張量を測定する方法がある.
性能照査については,コンクリート標準示方書[維持管理編]に判定表が載っている.
凍結圧の機構は次のように考えられている.
コンクリートに含まれる水が凍結して膨張すると約9%の体積膨張を生ずる.コ
ンクリート内部の空隙よりも水の自由膨張量が大きくコンクリートの引張強度
(=16kgf/cm^2)より水の膨張圧が大きくなると,ひび割れ(クラック)が発生する.
このような凍結によるコンクリートの劣化は−2℃程度では進行せず,−5℃を
下回ると著しくなる.水の膨張圧は圧力と温度によって異なるために一概に言え
ないようであるが,鉛直の埋設管を持ち上げる力に対抗する力を凍着凍上力とい
い,実験によれば約2kgf/cm2であったという.
水の膨張圧は圧力に関係しているため剛な支保構造で対抗させて凍結しようと
する水の周辺の圧力が高くなると凍結しにくくなるようである.
凍害の進行予測手法は確立されていない.性能評価も外観目視結果にもとづく半定量的な評価手法となっている.
背面の空隙や巻厚不足は,最近のNATMで建設されたトンネルでは比較的少 ないが,矢板工法で施工されたトンネルでは天端に空隙が出来るのは施工技術上 やむをえないところであった.また,矢板を鋼製支保工と地山の間に設置するた めに覆工打設時にコンクリートが十分回らずに巻厚不足が発生した.
インバートに関するトラブルは現在でもかなりある.これは基本的には膨潤性
地山の判定の問題で,掘削時には乾燥していて変位もあまり大きくなくインバー
トを省略したが,次第に水が回ってきて土砂化したことが原因である.水が着い
た場合の強度を十分考慮する必要がある.また,インバートの厚さや曲率が不適
切でインバートの変状が発生することもある(上越自動車道日暮山トンネルなど).
トンネルは円形とするのが最も力学的には安定しているのであるが,掘削土量が
多くなるために現在のような半円断面またはインバートの曲率を大きく(直線に
近く)して土量を少なくしている.
日本道路公団での施工実績からインバートを設置しなかったために変状が発生
したトンネルの82%が膨圧と塑性破壊となっている.また,変状の発現時間は
施工後3ヶ月以内が51%を占めている.当初水が付いていなかったためにインバートを設置しなかったが,トンネル背面に浸み出した水により膨潤性地山が土砂化したことが大きな原因となっていると推定される.
インバート設置の基準は定性的であるが,地山強度比と浸水後の地山の強度が
問題となるのでインバート背面の試料採取を行い自然含水状態と飽和状態での一
軸圧縮強度を得ておくことが有効である.ただし,膨張性地山では飽和状態まで
試料が自立しないので,三軸圧縮試験を行う必要がある.