トンネル坑口地すべりの対策工は一般に地すべり対策と異なるところはない.
ただし,特殊な対策工として垂直縫地工法がある.これは,坑口付近の地山に鉄筋を挿入しグラウトを行いトンネル上部地山の動きを押さえる工法で,小規模な地すべりに対しては効果的である.鉄筋はトンネル上半まで挿入することが多いようである.鉄筋のせん断力で地すべりの滑動力に対抗するという考えである.
ただし,地すべり対策として用いる場合,地下水の排水を阻害する可能性があるので注意が必要である.
トンネル坑口の地すべり対策を検討する上での留意点は次の通りである.
行間
分 類 | 岩盤地すべり | 風化岩地すべり | 崩積土地すべり | 粘性土地すべり |
明瞭な段落ち,帯状の陥没地と台地を有す.大きく見れば凹型だが主要部は凸型で、馬蹄形,角形を呈する. | 滑落崖を形成し,その下に沼,湿地等の凹地,頭部にいくつかの残丘があり凹型斜面が多い. | 頭部に増え医療灘位置を残し,大部分は沢状の斜面である.沢型,ボトルネック型を呈する. | ||
地すべりの断面形 | 平面すべり いす型・舟型 | 平面すべり(頭部と末端はやや円弧状) いす型・舟型 | 円弧と直線状,末端が流動化 階段状・層状 | 頭部が円弧状だが大部分は流動状 階段状,層状 |
主な土塊の性質 (頭部) | 岩盤または弱風化岩 | 風化岩 (亀裂が多い) | 礫混り土砂 | 巨礫または礫混じり土砂 |
主な土塊の性質 (末端部) | 風化岩 | 巨礫混じり土砂 | 礫混じり土砂,一部粘土化 | 粘土または礫混じり粘土 |
運動速度 | 2cm/日以上 | 1-2cm/日程度 | 0.5-1cm/日 | 0.5cm以下 |
運動の継続性 | 短時間,突発的 | ある程度断続的(数十年-数百年に一度) | 断続的(5-20年に1回程度) | 断続的(1-5年に1回程度) |
ブロック化 | 多くの場合,1ブロック | 末端,側面に2次的地すべり | 頭部がいくつかに分割され2-3ブロックになる | 全体が多くのブロックに分かれ,相互に関連しあって運動 |
予知の難易 | 非常に困難,綿密な踏査と精査を必要とする | 1/3,000-1/5,000の地形図で予知でき,航空写真で判読できる | 1/5,000-1/10,000の地形図でも確認できる.地元での聞込みも有用 | 地元での聞込みによって予知できるし,非常に容易に確認できる |
主な原因 | 大規模な土工,斜面の一部の水没,地震,強雨 | 集中豪雨,異常な融雪や河岸欠潰,地震,中規模の土工,その他 | 異常な霧雨,融雪,台風,集中豪雨,土工など | 霖雨(幾日も降り続く雨),融雪,河川浸食,積雪,小規模な土工 |
主な地質と構造 | 断層,破砕帯の影響を受けるものが多い | 結晶片岩地帯,新第三紀層に広く分布する断層,破砕帯の影響あり | 結晶片岩地帯,中・古生層,新第三紀層に広く分布する | 新第三紀層に最も多く破砕帯沿いにも一部見られる |
行間
変動種別 | 日変位量 (mm) | 累積変位量 (mm/月) | 一定方向へ の累積傾向 | ・引張り ・圧 縮 ・断 続 | 活動性等 |
変 動 A | 1mm以上 | 10mm以上 | 顕 著 | 引 張 り | 活発に活動中,表層・深層すべり |
変 動 B | 0.0-1mm | 2-10mm | やや顕著 | 引張り,及び断続変動 | 緩慢に運動中,粘質土・崩積土地すべり |
変 動 C | 0.02-0.1mm | 0.5-2mm | ややあり | 引張り及び圧縮 | 継続観測が必要 |
変 動 D | 0.1mm以上 | なし(断続変動) | な し | 規則性なし | 局部的な地盤変動,その他 |
行間
変動種別 | 日平均変動量(秒) | 累積変位量(秒/月) | 傾斜量の累積傾向の有無 | 傾斜運動方向と地形との相関性 | 活動性等 |
変 動 A | 5秒以上 | 100秒以上 | 顕 著 | あ り | 活発に運動中 |
変 動 B | 1-5秒 | 30-100秒 | やや顕著 | あ り | 緩慢に運動中 |
変 動 C | 1秒以下 | 30秒以下 | ややあり | あ り | 継続的な手動観測が必要 |
変 動 D | 3秒以上 | なし(断続変動) | ややあり | な し | 局部的な地盤変動,その他 |
行間
変動種別 | (μ) | 変動形態 | すべり面存在の地形・地質的可能性 | 活動性等 | |
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変 動 A | 5,000μ以上 | 顕 著 | 累積変動 | あ り | 顕著に活動している岩盤地すべり・風化岩地すべり・崩積土地すべり |
変 動 B | 1,000μ以上 | あ り | 緩慢に活動している地すべり | ||
変 動 C | 100μ以上 | ややあり | 累 積 断 続 かく乱 回 帰 | あ り | すべり面の存在有無を断定できないため,継続観測が必要 |
変 動 D | 1,000μ以上 (短期間) | な し | 断 続 かく乱 回 帰 | な し | すべり面なし 地すべり以外の要因 |
行間
地すべり区分 | 岩盤地すべり | 風化岩地すべり | 崩積土地すべり | 粘質土地すべり |
運動停止中 | 1.10 | 1.05-1.10 | 1.03-1.05 | 1.00-1.03 |
滑動中 | 0.99 | 0.95-0.99 | 0.93-0.95 | 0.90-0.93 |