浦臼山
(2017年9月30日作成)
概 要
石狩川と当別川に挟まれた山地は,浦臼山,樺戸山,隈根尻山,ピンネシリ,神居尻山など標高1000m前後の山が連なっている。この中で浦臼山は一番東に位置している標高718mの,あまり目立たない山である。
これらの山を構成する地質は,前期白亜紀(1億4500万年前〜1億年前)の隈根尻層群で海成の泥岩優勢層と安山岩質〜玄武岩質のハイアロクラスタイトからなる。礼文−樺戸帯に属する。
なお,当別川の西にある別狩岳周辺には著しいスレート劈開を持つ粘板岩・砂岩からなる別狩岳層(別狩岳コンプレックス)が分布している。この地層は,現在のところ渡島帯に属すると考えられている。
浦臼山付近は隈根尻層群最上部の浦臼山層で構成されている。この地層は砂岩泥岩互層と火山性砂岩からなり,酸性凝灰岩を挟在する。砂川図幅では,はんれい岩がシート状に迸入している断面図を描いている。
浦臼山の稜線は北東−南西方向で,山地の東側には浦幌断層が尾根に並行に分布している。浦臼山の南西にある隈根尻山を源流とする於札内川は,北東に流下したのち浦臼山の北で直角に向きを変え,南東に向かって流れ石狩川川に合流している。
浦臼山
右側のちょっとした三角のピークが浦臼山で,中央やや左のピークが樺戸山(標高890m)であろう。樺戸山は地理院地図には名称が記載されていない。左奥の一番高いピークは隈根尻山(標高971m)であろう。
浦臼コース
隈根尻山から樺戸山を経て浦臼山へのルートは,廃道となっているので浦臼山への登山道はこのコースのみである。
登山ポストのある砂防ダムの下の河床に褐色に風化した粘板岩・砂岩の互層がある。著しく変形しているのが印象的である。
標高510mにある電波反射板までは車の通った古い跡があり,所々の切土に黒色泥岩あるいは砂岩の露頭がある。
標高490m付近で登山道に沢から崩れた岩塊が堆積している。見られる石は砂岩泥岩互層とはんれい岩である。登山道には黒色泥岩が出ているところもある。また,頂上手前のライオンズクラブの山頂標識のある展望のきく場所は,一面スレーキングしやすい黒色泥岩である。
地質図Naviでは,浦臼山を含む一帯は「前期白亜紀(K1)の非アルカリの苦鉄質火山岩類」としているが,砂川図幅で示されているように,砂岩泥岩層が主体であると考えられる。
図1 泥岩砂岩互層
登山口のある砂防ダムの直下の河床に出ている風化した砂岩泥岩互層である。著しく変形して砂岩がブロック状になっている。
図2 塊状の黒色泥岩
標高260m付近の登山道切土に出ている硬質で均質な黒色泥岩である。
図3 片状の黒色泥岩
標高275m付近の登山道切土に出ている片状の黒色泥岩である。
図4 イルムケップ山
北東斜面の標高450m付近からイルムケップ山が見える。250万年前の火山である。
( http://mishi.weblike.jp/irumukeppu.html 参照)
図5 頂上斜面の崩壊地
頂上手前の小さな尾根の崩壊地である。スレーキングしやすい泥岩主体であるため,表層崩壊が発生しやすいのだろう。手前右に見えるのはスレーキングした泥岩である。
図6 ピンネシリ
頂上手前から見たピンネシリである。手前は,於札内沢を挟んで隈根尻山から北東に延びる尾根である。
( http://mishi.weblike.jp/pinneshiri.html 参照)
図7 頂上手前の泥岩
頂上手前にあるライオンズクラブの山頂標識の所に出ているスレーキングした泥岩である。
図8 芦別岳
中央やや左が,頭を雲に隠した芦別岳である。石狩平野に石狩川の三日月湖であるトイ沼が見える。右端の赤白の煙突は,奈井江火力発電所である。
図9 雪崩斜面
浦臼山の尾根の南東斜面は平均傾斜43度の雪崩斜面である。ほとんど樹木が生育していない。
図10 夕張岳
石狩平野の向こうに見える夕張岳である。夕張岳から芦別岳の夕張山地が一望出来るのが,この山の最大の魅力かもしれない。
参考にした図書など
- 紀藤典夫・新井田清信,2010,2.4.3 礼文−樺戸帯の白亜系.日本地方地質誌 1 北海道地方,92−95.朝倉書店.
- 永田 勝・紀藤典夫・新井田清信,1986,樺戸山地の中生界−隈根尻層群の年代と白亜紀火山弧としての性格.地団研専報31 北海道の地質と構造運動,63−79.地学団体研究会.