あけましておめでとうございます

 (2010年1月5日作成)

 新しい年が始まりました.政権交代,2010年度予算案の事業仕分けなど話題の多かった年が終わり,これからの日本の国土をどういう形にしていくのかが問われる時代が,本格的に始まったという印象を強く持ちます.

 現在,国土交通省国土計画課では,2008年7月に国土形成計画法にもとづき閣議決定された「国土形成計画(全国計画)」の進捗状況の管理を行っています.この計画では,国土計画のマネジメントサイクルを確立することが求められているので,そのためのモニタリングを行うことになっています.
 このモニタリングの指標等を決定する調査の一環として土木学会会員を対象としたアンケート調査を行っています.

 ここでは,これから数年間をかけてどのような国土を形成しようとしているのかを見てみようと思います.


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国土形成計画

 1950(昭和25)年に施行された国土総合開発法(法律第205号)にもとづいて全国総合開発計画が約10年ごとに策定されてきた.1998(平成10)年には「21世紀の国土のグランドデザイン」が策定された.
 しかし,人口減少時代を迎えている現在,国土形成制度の抜本的な見直しが行われ,1)量的拡大「開発」基調から「成熟社会型の計画」へ,2)国主導からの層の計画体系(分権型の計画づくり)へ,を骨子とした国土形成計画(全国計画)が2008(平成20)年7月に策定された.

 国土形成計画の枠組みは,2005(平成17)年に国土総合開発法の抜本的改正により成立した国土形成計画法にもとづき,国が決定する全国計画と地方が決定する広域地方計画の二つの柱からなる.地方の計画は全国8つの広域ブロックに北海道,沖縄を加えた10のブロックが,それぞれ特色のある計画を作ることになっている.
 国土形成計画の基本的目標として,1)グローバル化や人口減少に対応する国土の形成,2)安全で美しい国土の再構築と継承,が掲げられている.
 1)の目標に対しては,「東アジアとの円滑な交流・連携」と「持続可能な地域の形成」
 2)に対しては,「災害に強いしなやかな国土の形成」と「美しい国土の管理と継承」が主要な内容となっている.

 つまり,外に向かっては東アジアに目を向けた様々な交流を活発に行い,内では地域ごとに独自の産業を興し自然と共生して人が住める環境を作っていくことが目標とされている.

人口の変化

 全国総合開発計画から国土形成計画への転換の大きな要因となったのは,本格的な人口減少と急速な高齢化が進行しているという現実である.

 ところで,日本の人口の超長期的な研究というのがある.
 それによれば,日本列島の人口は,縄文中期頃(約4,300年前)26万人で,3,000年前くらいに急減した.これは気候の寒冷化による木の実の生産量が低下したためとされている.
 その後,弥生時代以降は稲作の普及と国家の形成によって人口はほぼ直線的に増加した.
 1600(慶長5)年の関ヶ原の合戦当時1,227万人であった人口は,約120年後の享保の改革の時には3,128万人となり,以後江戸時代を通じてほぼ一定していた.
 明治維新時の人口は3,330万人とされていて,その後2005(平成17)年に1億2770万人強となり,2007(平成19)年には完全に減少に転じている.

 現在の人口構成は1947(昭和22)年生まれと1972(昭和47)年生まれにピークがあり,1972年以降生まれは一貫して減少し続けている.つまり,1972(昭和47)年生まれは,男女合わせて200万人ほどであるが,現在の単年人口は120万人程度となっている.

 推計によれば,2046年には日本の人口は1億人を下回るとされている.つまり,今の8割弱の人口になると言うことである.さらに,長期的予測では2100年頃には5,000万人を切るとされている.

状況を切り開くために

 日本の地理的な位置は,カムチャッカ半島からインドネシアまでを含む環太平洋西部地域の要の位置にある.このような地理的な優位性を生かした目標としてアジアとの交流・連携が出てくるであろう.

 北海道や東北であればサハリンやロシアの日本海沿岸地域との交流の促進で経済が活発化する可能性は高い.西南日本は今もそうであるように韓国,台湾,中国,フィリピンと言った国々との交流をより一層活発にすることが目標となる.このような交流のための社会資本は何かを考えることが重要となる.
 沖縄はその昔から中国との貿易の盛んな国であった.これもその地理的な優位性によっている.あれだけの米軍基地を抱えていることもこの地理的優位性を証明していると考えると,基地の無くなった後の沖縄の方向性もはっきりと見えてくるように思う.まさに,東アジアの要石として経済発展の基地となる.

 国内的には人口減少に見合った社会資本の整備を長期的視点に立って進めることができる.この場合,ポイントとなるのは高齢化をマイナス要因と考えないことであろう.高齢者でも五体満足に働ける人たちは多い.この力をどうやって活用するのか,経済的な支え手として生かす手立てができれば,決して社会にとってマイナスとはならないであろう.
 とは言っても,少子化の速度を少しでも減らすことが必要である.そのための社会資本の整備は何なのかを考える必要がある.

 今,安心して暮らせる環境を作るのに決して忘れてならないのが,東南海地震への準備である.
 2009年8月11日の駿河湾の地震では東名高速道路の盛土が崩壊し通行止めとなった.この地震のマグニチュードは6.5,最大震度は6弱で東は伊豆市から西は御前崎市まで駿河湾を囲むようにして震度の大きい地域が出現した.東南海地震に比べると桁違いに小さなエネルギーであったが,多くの被害が発生した.
 このようなことを考えると,社会資本整備の方向として何に優先度を与えるのかを慎重に検討する必要がある.

 地球が温暖化していることは,ほぼ間違いないであろう.温暖化を示す気温データの精度の問題,温暖化の原因が人為的な要因が大きいのかどうか,といった問題はある.
 しかし,このような地球規模の変化は急には変わらないと考えられる.とすれば,少なくとも社会資本の整備を通じた適応策を着実に進める必要がある.

 今後10年くらいで社会資本整備が,落ち着いた住みやすい環境が作られる方向に進むかどうか注目する必要がある.まさに,モニタリングが必要である.


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