手稲山山頂への登山道は,大規模地すべりである手稲スキー場のハイランドから登るコース(滝ノ沢コース・北尾根コース)と南の琴似発寒川の平和の滝コースがある.
今回,平和の滝コースを登り,山頂から市道手稲山麓線を歩いて国道5号へ降りるというコースをたどった.平和の滝から頂上へ行き頂上で昼食中に雨が降り出し土砂降りになった.しばらく雨宿りをしていたが,雨はまだ断続的に降り続いていたので,平和の滝コースのガレ場と琴似発寒川沿いの道は危険と判断し,テイネハイランドから市道を通って国道5号に出ることにした.
この横断コースは,約20kmなので,トレイルランニングにはちょうど良いかもしれない.市道でなく「北尾根コース」あるいは「滝ノ沢コース」をたどれば楽しいトレイルランニングができそうである.
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琴似発寒川沿いの道は,多少の上り下りがあるが楽なコースである.
5万分の1地質図幅「銭函」によれば,登山道が琴似発寒川から一度離れる付近までは,銭函層群・手稲層の変質安山岩(変朽安山岩)主体の地質で,それより上流は張碓層群の安山岩質火山角礫岩(集塊岩)主体の地質となる.
尾根状の緩斜面を過ぎて岩塊斜面が始まる標高720m付近からは,手稲山の山頂を形成する手稲山火山噴出物の含石英輝石安山岩となる.
手稲山の平和の滝コースと言えば,標高720m付近から800mにかけて見られる「岩れきの斜面」が有名である.不安定な岩塊もあり地質的にはかなり新しい時代に形成されたと考えられる.
布敷の滝を過ぎて登山道が沢から離れ急斜面を登っていく.植生に覆われているが,この斜面も玉石がゴロゴロしている斜面で,古い時代の「岩れきの斜面」である.礫の間に手を入れると冷たい空気に触れることができる.
このような斜面堆積物は氷期に形成された周氷河堆積物の一種と考えられる.約1万年前の氷期には寒冷化により海水面が約100mほど低下した.そのため日本海からの水蒸気の供給が少なくなり寒いけれどもあまり雪が降らない気候になったと考えられる.寒気は直接岩の割れ目に影響し割れ目の中の水の凍結融解によって安山岩の亀裂が開口し,礫が大量に作られたと考えられる.これが「岩れき斜面」が形成された原因であろう.
頂上からは札幌市街,藻岩山や円山や三角山が眼下に見える.南西には余市岳,無意根山,定山渓天狗岳(天狗山)などが見える.この日は,羊蹄山は雲で見ることができなかった.
この日は,正午過ぎにかなり激しい雨が降ってきた.1時間ほど雨宿りして小降りになってきたので下山を始めた.平和の滝コースはガレ場があり,琴似発寒川沿いの道もどうなっているかわからないと考え,作業道を通ってハイランドへ降り,市道手稲山麓線を通って国道に出ることにした.延々14km,ほとんど下りのみの舗装道路を4時間ほどかけて歩いた.
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