2020年6月12日,天気が良いとの予報であったので出かけた.
ペラリ山については下のサイトを参照.
( ペラリ山 )
この付近に分布する地質は,5万分の1地質図幅「三石」では,日高累層群・岩清水層の枕状溶岩となっている.その北の同「農屋」では岩清水層の輝緑岩質凝灰岩あるいは正規型スピライトとしている.スピライトというのは,曹長石(アルバイト)を特徴とする玄武岩質あるいは輝緑岩質の岩石のことで,現在は緑色岩と呼ばれる.
横山中岳登山道の標高350m付近から南には,断層で接して新第三紀・中新世の黒色の海成泥岩(西川層)が分布している.
図 横山中岳ルート図(TrailNoteで作成)
この地図の南側の道路が,道道静内浦河線である.待避所のある狭い道路で,この付近では西の布辻川と東の三石川を結んでいる.
今回,布辻川から入ったが入口を見逃し,少し先に行ってからGPSで位置を確認して戻った.登山道の入口は道道から少し入ったところで,車を数台駐めることのできる空き地がある.登山ポストなどは置かれていないが,道道入口とその先の二股のところに「横山中岳」の控えめな看板がある.
登山道は尾根伝いにほぼ一直線に山頂に向かっている.途中幾つかのコブがあるが,標高480mからの上りは一直線に240mを登る.
写真1 横山中岳山群
一番左に見える三角の尖った山が横山中岳で,右に678m峰,南横山である.道道静内浦河線の延出川(weblio による)支流沿いから見た.
登山道の地質
登山道は最初,牧草地の中の轍をたどって登っていく.現在は牧草地としては使われていないようで,ヨモギやセイタカアワダチソウが生え始めている.牧草地が切れたところから林の中に入っていく.最初は腐りかけた倒木の林の中を登って行く.所々,踏み跡が分からなくなるところがある.
黒色泥岩の露頭はないが,標高270m付近には細片化した黒色泥岩の岩片が登山道で見られる.
玄武岩類の分布域になると尾根が細くなり尾根沿いに露頭が見られるようになる.出ている岩石も硬くなる.
玄武岩類は様々な岩相を示すが,印象としては南側(山腹下方)ほど凝灰岩質で横山中岳の山頂付近では完晶質となる.
写真2 細片化した黒色泥岩
標高270m付近の登山道に見られるシルト質の黒色泥岩で細片化している.黒色泥岩と岩清水層の玄武岩類との違いは見た目には区別が難しいが,玄武岩類は硬いのと比重が大きく持ったときにずっしりしているので感覚的に分かる.
写真3 玄武岩
標高250m付近から斜面の傾斜が急になり玄武岩類の分布域になると想定される.この岩石は標高285m付近のもので一見黒色泥岩と見間違うが,比重が大きいこと,長石の結晶が認められることから玄武岩と判定できる.
写真4 標高320m付近の登山道
この付近で,登山道は小さなコブを超えて緩く下って行く.中新世の黒色泥岩層の分布域から玄武岩類の分布域に入っている.5万分の1地質図幅「三石」では岩清水層の枕状溶岩(Ib)となっているが,登山道で見える露頭は塊状溶岩である.黒色泥岩と玄武岩類の境界は,シームレス地質図より図幅の位置が正しいようである.
写真5 玄武岩
登山道の標高360m付近に出ている玄武岩(緑色岩)である.
写真6 玄武岩の露頭
塊状の玄武岩である.尾根が細くなり斜面には岩が露出している.
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図7 片状の玄武岩
弱い片状構造を示す玄武岩である. |
図8 凝灰質玄武岩
ほとんど結晶が見えない凝灰岩のような玄武岩である. |
写真9 極楽平
登山案内書で極楽平とされている付近で,コブの先は緩い下り坂になっている.尾根の幅が広くなる.
写真10 発泡した玄武岩
発泡した跡のある玄武岩である.頂上への急登がはじまる標高460m付近.
写真11 暗紫色の玄武岩
暗紫色の緻密な玄武岩である.一見,凝灰岩のように見える.標高525m付近.この色の玄武岩は,地形がなだらかな場所に分布していることが多い.
写真12 礫岩
非常に淘汰の悪い角礫からなる岩石である.淡青白色の礫は玄武岩の変質したもののように見える.頂上への急登の標高640m付近である.
写真13 斑れい岩質岩
緑がかった白色の結晶粒が見える岩石である.頂上直下,標高690m付近である.
写真14 日高山脈南部
左からニシュオマナイ岳,神威岳,ソエマツ岳,ピリカヌプリ,トヨニ岳である.これを見たくて頑張ったようなものである.もう少し早く来れば雪がもっと残っていたであろう.今年は雪が融けるのが早いようだ.
写真15 アポイ岳とピンネシリ
一番右の尖った山頂が日高山脈最南端のアポイ岳で,その左にピンネシリである.
今回,登山道では二つほどクマの糞を見た.静内浦河線を車で走っていて,タヌキ,リス,キジを見た.自然が豊かなのと車などの生活の音がほとんど聞こえないのが印象的であった.
登りに2時間半,下りは2時間かかった.
参考にした図書など
- 松下勝秀・鈴木 守,1962,5万分の1地質図幅および説明書「農屋」.北海道開発庁.
- 和佐信彦・高橋功二・渡辺 順・蟹江康光,1992,5万分の1地質図幅および説明書「三石」.北海道立地下資源調査所.