札幌市の奥三角山

 (山行:2020年10月11日 公開:2020年10月14日)

奥三角山付近の地質と登山道

 

 琴似発寒川と豊平川の間の低地の際には,北西から三角山,円山西町の237m峰,ちょっと離れて円山,藻岩山が連なっている.その中で三角山は市街からも三角の山容をはっきりと認めることができる.三角山は,ほぼ南北に延びる新第三紀中新世後期から鮮新世の貫入岩で,その周りはやや古い中新世中期から鮮新世にかけての安山岩質溶岩あるいは火砕岩である(地質図ナビによる).
 5万分の1地質図幅「札幌」では,三角山から奥三角山にかけての登山道に出てくる地質は,北から西野層(鮮新世)の「集塊岩」,三角山溶岩,盤ノ沢層の「変朽安山岩」(中新世),そして奥三角山を構成する西野層の幌見峠溶岩となっている.小別沢トンネルがある鞍部付近は変朽安山岩が分布していて,奥三角山の南西の沢には金・銀・銅を産する円山鉱山(小別沢鉱山)があった.

 奥三角山への登山道は,三角山から尾根伝いに行くルートのほか,大倉山ジャンプ場から登るコース,小別沢トンネルの札幌側坑口からのコース,小別沢トンネルの西の小別沢集落付近から登るコースなどがある.


今回登ったルート
(TrailNoteにより作成:地形図は地理院地図による)
 札幌駅の西北西約5.3kmにある三角山は,市街から三角の山容がよく見え市街に最も近い山の一つである.南東斜面は砕石のために掘削され今も,のり面が残っている.
 その三角山から尾根伝いに南へ遊歩道がついている.大倉山ジャンプ場の上を通りさらに行き,急斜面を登ると奥三角山である.

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登山道の地質

 今回は,山の手3条12丁目の緑ヶ丘療育園前からから上った.登山道の入り口付近の道の山側にかなり広い駐車場がある.ここから三角山の頂上を目指した.


写真1 登山道入口.jpg
写真1 緑ヶ丘療育園前の登山道入口
 日曜日で紅葉が始まっているので,かなりの人が登っている.舗装道路から尾根に取り付くので,最初はちょっとした急斜面を上る.ここで標高は75mほどである.


写真2 自破砕状溶岩.jpg
写真2 自破砕状溶岩
 三角山から北に延びる尾根道に落ちている自破砕状溶岩である.礫は角張っていて周辺には急冷層は見られない.礫は灰色でデイサイト質安山岩である.図幅では西野層の「集塊岩」となっている.


写真3 デイサイト質安山岩.jpg
写真3 デイサイト質安山岩
 最初の分岐(地理院地図には出ていない),標高120m付近に転がっている西野層の安山岩である.


写真4 ハイアロクラスタイト.jpg
写真4 ハイアロクラスタイト
 登山道脇の露頭で,岩相からハイアロクラスイタイトのように見える.しかし,写真3のデイサイト質安山岩が陸上噴出と考えられるので,全体の地質構成の説明が難しい.三角山遊歩道の宮の森入口との分岐(こぶし平)手前,標高130m付近である.


写真5 安山岩.jpg
写真5 ガラス質安山岩
 こぶし平と三角山頂上への急登(四の坂)との中間付近に落ちている岩石で,ガラス質安山岩である.この付近の遊歩道は等高線に沿っていて山側は急斜面になっている.三角山を形成する貫入岩の一部が遊歩道に落ちてきていると考えられる.


写真6 岩塊斜面.jpg
写真6 岩塊斜面
 七の坂付近の岩塊斜面である.北海道では火山岩の山では,多かれ少なかれこのような岩塊斜面が見られる.寒冷になった氷期には日本海の面積が少し小さくなり水蒸気の供給が少なくなって,あまり雪が降らなかったと考えられる.そのため.火山岩の割れ目に入った水が凍結し融解することによって割れ目が開いて岩塊が形成された.手稲山の「平和の滝コース」のガレ場が有名である.


図7 夕張岳.jpg
図8 藻岩山 .jpg
図7 三角山頂上から見た夕張岳
 正面が高圧変成岩のブロックからなり独特の山容を見せる夕張岳で,左に芦別山地も見える.
図8 藻岩山
 藻岩山の南西斜面はなだらかな溶岩地形であるが,ここから見る北西斜面は急峻である.


写真9 三角山頂上の安山岩.jpg
写真9 三角山頂上の安山岩
 硬質な方状節理の見られる安山岩である.ここは一等三角点である.

 三角山から奥三角山へ行くには急な斜面を一気に70mほど下る.大倉山ジャンプ競技場の裏の尾根(標高307m)に登って,再び小別沢トンネルが通っている鞍部まで80mほど下る.最後は約100mの登りで奥三角山の頂上に達する.
 三角山までは子供と一緒に登山を楽しんでいる人が多いが,さすがに大倉山ジャンプ競技場から先は人は少なくなる.それでも奥三角山の頂上は,かなりの人が休んでいた.


写真10 デイサイト質安山岩.jpg
写真10 デイサイト質安山岩
 大倉山ジャンプ競技場の約300m手前のデイサイト質安山岩である.全体に粗しょうで角閃石が認められる.


写真11 大倉山から小別沢へ.jpg
写真11 小別沢に向かう道
 少し色づき始めた登山道が気持ちがよい.


写真12 小別沢トンネルの安山岩.jpg
写真12 小別沢トンネルの安山岩
 小別沢トンネルの鞍部にある切り割りの安山岩露頭である.方状節理が発達していて溶岩であろう.


写真13 小別沢トンネルの安山岩.jpg
写真13 小別沢トンネルの安山岩
 輝石安山岩である.5万分の1地質図幅「札幌」では中新世・盤ノ沢層の滝ノ沢変朽安山岩(変質安山岩)としている.中新世中期から後期(1,600万年前〜720万年前)の安山岩である.この安山岩中に石英粗面岩(流紋岩)が貫入していて,この石英粗面岩中にテルル鉱物を算する金銀鉱床(円山鉱山=小別沢鉱山)がある.


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写真14 奥三角山・西尾根の変質安山岩
 奥三角山から西に延びる尾根に,古い作業道と思われる道がついている.その標高295m付近に転がっていた安山岩である.石基は緑泥石化しているようであるが,斜長石,輝石,角閃石は新鮮である.


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写真15 奥三角山から北東を見る 
 手前中央付近に円山陸上競技場,野球場,円山動物園がみえる.その右前方の緑は道庁,左前方の緑は北大である.


写真16 奥三角山頂上の安山岩.jpg
写真16  奥三角山頂上の安山岩露頭
 方状節理の発達した安山岩である.人が立っているところが頂上である.


写真17 奥三角山頂上の安山岩.jpg
写真17  奥三角山頂上の安山岩
 黒色の石基に斜長石の斑晶が目立つ輝石安山岩である.札幌図幅では幌見峠安山岩としている.


写真18 夏のジャンプ練習.jpg
写真18 夏のジャンプ練習
 帰りに大倉山からジャンプ台の上の観覧台に降りて見学したジャンプ練習風景である.中学生,高校生の男女が飛んでいた.見ているだけで怖い.

 帰りは,なだらかな道を選んで降りてきた.ルート図に示したように往復8km,累積標高は500mであった.

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