目国内岳

 (2021年7月1日山行:同年7月3日公開)

概 要

 

 目国内岳(めくんない・だけ)は、ニセコ山系西部に位置する標高1220mの山である。1,202.3mの三角点は西に延びる尾根の上にある。最高点は溶岩ドームのてっぺんで、巨礫の集積となっていて三角点を設置できないためと考えられる。
 ニセコ山系というと一番東のニセコアンヌプリから一番西の雷電山までを指すようである。これらの山の並びを見るとニセコアンヌプリから白樺山までは東南東−西北西方向であるのに対し、道道岩内蘭越線を境に西では、ほぼ東西方向に山が並んでいるように見え、微妙に配列が違う感じである。
 活動時期は、西部の雷電岳、目国内岳、岩内岳などは200万年前から50万年前であるのに対し、東部の白樺山、シャクナゲ岳、ニセコアンヌプリは80万年前から25万年前である。イワオヌプリ、ニトヌプリ、チセヌプリは30万年前からで、イワオヌプリは6千年前頃にマグマ噴火をしたと推定されている。東部に属していて列から北に離れて位置しているワイスホルンは130万年前から90万年前に活動していて、西部の火山群とほぼ同じ時代の活動である。

 ニセコ山系(火山群)は、前期更新世に活動を始めて以来、西から東へと活動の場を移動させている。

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登山道の地質

 5万分の1地質図幅「岩内」によれば登山道に出てくる地質は、前目国内岳などを構成している目国内岳基底溶岩と登山道の標高900m付近から上に出てくる目国内岳溶岩である。
 日本海の注ぐ野束川の支流が目国内岳の北東斜面を源流としている。図幅では、この流域に目国内岳凝灰角礫岩(Mb2)が分布するとしている。しかし、これは地形的にも明瞭な大規模な地すべり堆積物である。
 なお、目国内岳登山口に行く手前の道路対岸に見られる白っぽい崖(奥ニセコ渓谷)は、目国内岳凝灰角礫岩である。


写真1 目国内岳登山口.jpeg
写真1 目国内岳登山口
 道道岩内蘭越線の新見峠の蘭越側手前200mほどの西側に舗装された駐車場があり、きれいに掃除され匂いもない赤い三角屋根の便所がある。蘭越町で管理している。この駐車場から50mほど蘭越側に下った所に目国内岳の登山口があり、その向かいに白樺山への登山口がある。


写真2 安山岩.jpeg
写真2 目国内岳基底溶岩の輝石安山岩の転石
 1mmほどの斜長石と黒色の輝石がほぼ等量含まれ輝石安山岩である。標高785m付近。これは淡灰色を呈しているが、もっと白っぽくデイサイト質の転石もある。


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写真3 基質がレンガ色をした輝石安山岩
 高温酸化を受けたと思われる輝石安山岩である。基質がレンガ色を呈していて斑晶の斜長石がやや大きい。標高850m付近からなだらかな地形が広がっている付近の転石である。
 


写真4 標高880m付近から東を見る.jpg
写真4 標高880m付近から東を見る
 初めて視界が開けた。左が白樺山、中央がシャクナゲ岳、右の頭が完全に雲に隠れているのがチセヌプリであろう。


写真5 前目国内岳.jpeg
写真5 前目国内岳
 標高900m付近から前目国内岳(標高980m)への最後の登りである。なだらかな山容であるが反対側斜面は大規模な地すべりの側部で急斜面となっている。


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写真6 輝石安山岩 
 標高910m付近の傾斜がきつくなり始める登山道の転石である。


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写真7 レンガ色の輝石安山岩
 標高915m付近の転石である。昭和新山を思い出させる岩質をしている。前目国内岳の標高910m付近から上は溶岩ドームかもしれない。


写真8 シラネアオイ.jpeg
写真8 シラネアオイ
 前目国内岳頂上手前の標高960m付近で見ることができた。目国内岳への尾根道では、花の終わった群落はいくつもあった。


写真9 安山岩.jpeg
写真9  輝石安山岩
 前目国内岳頂上手前には径2mほどの角の残った転石が転がっている。肉眼では斜長石と輝石が、ほぼ等量の輝石安山岩である。


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写真10 前目国内岳を振り返る
 前目国内岳と目国内岳の間の鞍部から前目国内岳を見る。大規模の地すべりの側臥位となっている左(北)は急斜面で、右(南)はなだらかである。


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写真11 目国内岳溶岩の輝石安山岩
 目国内岳へ登り始める標高910m付近の輝石安山岩の転石である。小豆色を帯が部分と灰白色の部分とが混在している。やや発泡し全体に細粒で斑晶が目立たない。デイサイト質であるが石英は判別できなかった。


写真12 前目国内岳の北西斜面.jpeg
写真12 前目国内岳の北西斜面
 大規模な地すべりの側崖の一部を形成している前目国内岳の北西斜面である。


写真13 大規模地すべりの頭部付近.jpeg
写真13 大規模地すべりの頭部付近
 登山道の標高1,020m付近から垣間見えた。標高1,020m付近から1,060m付近まで、登山道は滑落崖の脇を通過する。右手前の高まりは地すべり頭部の北西にある標高999mのなだらかなピークである。その奥の頭を雲で覆われているのが岩内岳である。


写真14-1 輝石安山岩.jpeg
写真14-2 .jpeg
写真14-1 輝石安山岩
 斜長石と少量の輝石からなる安山岩である。基質は黒灰色でガラス質である。やや発泡している。標高1,025m付近。
写真14-2 デイサイト質の安山岩
 デイサイト質で細粒の安山岩である。斜長石と少量の輝石からなる。


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写真15 輝石安山岩
 登山道の標高1,110m付近のデイサイト質安山岩である。


写真16 デイサイト.jpeg
写真16 デイサイト質安山岩
 最後の登りの手前に平坦面付近の転石である。


写真17 安山岩露頭.jpeg
写真17 安山岩露頭
 標高1,150m付近から安山岩の巨礫が点在し始める。頂上の溶岩円頂丘から落ちてきたものであろう。


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写真18 溶岩円頂丘
 標高1,190m付近から溶岩円頂丘の岩塊群が始まる。左下がりの流離構造はN30°W,50°SWである。山頂尾根の延びの方向は、50°Wである。これが最初の岩塊で、頂上を形成するものを含めて三つの群に分かれているようだ。白ペンキの矢印を見落とさないように注意して登る。右に回り込むようにして岩塊をよじ登る。


写真19 頂上から西を見る.jpeg
写真19 頂上から西を見る
 頂上から北西に延びる尾根を見る。もう少し雲が晴れないかと昼食を取りながら30分ほど待ったが、これ以上はダメであった。風はかなり強いが突然強くなるということはなく、それほど恐怖感はなかった。


写真20 溶岩ドームの安山岩.jpeg
写真20 溶岩ドームの安山岩
 斜長石と輝石と少量の角閃石を含む安山岩で、石基は薄いアズキ色を帯びた灰色である。


映像1 目国内岳頂上から西を見る
 雲が鞍部を越えていく。一面のハイマツとナナカマドが揺れている。30分ほど待ったが雲は晴れなかった。

参考にした図書など

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