岩内岳

 (2021年9月3日山行:同9月7日公開)

概 要

 

 岩内岳は、雷電山、目国内岳、一番東のワイスホルンなどとともにニセコ火山群の古期火山群で、活動時期は中期更新世のチバニアンに相当する64万年前〜50万年前とされている。ニセコアンヌプリから雷電山に至る東南東-西北西方向のニセコ火山群の列からは、ワイスホルンとともに北に外れた位置にある。
 山体の開析はかなり進んでいるが地形的に溶岩流の分布が分かる。登山道では300m付近の急坂「ためし坂」が溶岩流の最末端と想定できる。これより下の平均傾斜6度以下の緩い斜面は、山麓緩斜面堆積物あるいは土石流堆積物が分布しているのであろう。
 登山道に出てくる岩石は、岩内岳溶岩で一部にかんらん石を含む両輝石安山岩である。緻密・硬質なものから発泡したものまで岩相は変化する。また、かなり頻繁に高温酸化を示すレンガ色の安山岩の転石が見られる。

写真1 岩内岳全景.jpg
写真1 岩内岳全景
 標高は1,085mであるが頂上付近は三角形の堂々とした姿をしている。山頂付近は凍結破砕作用によって形成された岩塊が露出している。登山道は、右手の尾根を直線的に上っていく。この北向き斜面は、IWANAI RESORTのスキー場となっている。国道276号の共和町前田旭付近から見た岩内岳である。

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登山道の地質

 岩内岳への登山道入口は、オートキャンプ場の「いわないマリンビュー」への道を入ってすぐのカーブの左手にある。かなり広い駐車スペースもある。

写真1 ためし坂.jpeg
写真1 登山道入口
 道道野束清住線からオートキャンプ場に入る道路を少し行ったカーブの所から左に入ると駐車場があり、その奥が登山道入口になる。

 登り初めてすぐに「ためし坂」が現れる。傾斜30度ほどであるが、いきなり急な坂が現れてちょっとひるむ。溶岩の一番末端と考えられる。
 ここを過ぎると、なだらかな道が続く。

写真3 ためし坂.jpeg
写真3 ためし坂
 標高290m付近から傾斜約30度の急な坂道になる。

写真4 2合目の広場.jpeg
写真4 2合目手前
 2合目の手前で頂上が見える。この付近に、古いリフトの施設があったと思われる。

写真5 流離のある安山岩転石.jpeg
写真5 流離構造の見える安山岩の転石
 登山道の標高450m付近の径1mほどの転石で流理構造が見られる。この付近は斜面の勾配がやや急になる。

写真6 ダケカンバの林.jpeg
写真6 ダケカンバの林
 4合目を過ぎた標高520m付近からはダケカンバの若木の林になる。


写真7 塊状安山岩.jpeg
写真7 安山岩の転石
 標高570m付近のやや粗鬆な塊状安山岩の転石である。この付近から斜面の勾配がややきつくなる。


写真8 レンガ色の安山岩転石.jpeg
写真8 レンガ色の安山岩転石
 枯れ葉の色と同じような茶褐色の安山岩の転石が転が多い。標高600m付近である。


写真9 マムシ.jpeg
写真9 マムシ
 標高660m付近の登山道脇にいた。小さなカエルがいるので、そんなのを食べているのだろう。ほかの蛇のように、さっさと逃げない。


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写真10 登山道の6合目
 標高670mが6合目で、古いリフトの施設が残っている。この先がやや急な斜面となる。昔のスキー場は、ここがコースの最高点だったのだろう。2007年頃に古いコースは使われなくなったようなので、14年ほど経っていることになる。周りの木の年齢とも大体一致する、


写真11 石の階段.jpeg
写真11 石の階段
 標高690m付近の登山道は転石が石の階段を作っている。新鮮なものやレンガ色のものなどが見られる。この付近は尾根が少し狭くなっている。


写真12 岩内湾.jpeg
写真12 岩内の町
 標高490m付近で岩内の町と積丹半島の山々が見えた。対岸海べりの白い建物群は泊原子力発電所である。


写真13 泊原子力発電所.jpeg
写真13 泊原子力発電所
 山々の囲まれているとほんとにちっぽけな施設である。これが事故を起こすと何十万人の人びとが被害を受ける。札幌市のほぼ真西約70kmの場所にある。放射能雲が発生した場合、秒速1mほどの微風でも20時間で札幌に到達する。


写真14 安山岩の転石群.jpeg
写真14 安山岩の転石群
 標高750m付近の安山岩の転石群で、板状のものや塊状のものがある。凍結破砕作用で生産されたものと考えられる。この付近も勾配がやや急になる。


写真15 ハイマツ.jpeg
写真15 ハイマツが出現
 標高760m付近からハイマツが出現する。ナナカマドやトドマツと混交している。足下の転石はほぼ露頭である。


写真16 レンガ色の安山岩.jpeg
写真16 レンガ色の安山岩
 標高945m付近のレンガ色の安山岩転石である。


写真17 粗そしょうな安山岩.jpeg
写真17 粗しょうな安山岩
 火口から飛び出したばかりのような粗鬆な安山岩である。


写真18 レンガ色の道.jpeg
写真18 レンガ色の道
 標高970m付近のレンガ色の道である。標高910m付近からはやや急な道が続く。


写真19 ハイマツとナナカマド.jpeg
写真19 ハイマツとナナカマド
 


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写真20 9合目付近の岩塊群
 この付近から山頂の少し南側までの尾根は岩塊群で覆われている。礫の形は不定形で塊状のものや板状のものが見られる。右奥が山頂である。


写真21 9合目付近の安山岩.jpeg
写真21 9合目付近の安山岩
 典型的な輝石安山岩で、緻密・堅硬・塊状である。写真17で示したような粗しょうな安山岩も見られる。


写真22 ウルシの実.jpeg
写真22 ウルシの実
 登り初めてすぐのところで見つけたウルシの実である。ウルシは小さい頃から見ていたが、実を見たのは初めてである。麓にはウルシの木が多い。
 コクワとヤマブドウもあったが、ちょっとまだ早いようである。

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