オダッシュ山

 (2021年10月3日山行:同10月5日公開)

概 要

 

 オダッシュ山は、道東自動車道が空知川水系から十勝川水系へ抜ける第二狩勝トンネルの南にある標高1,098mの山である。
 5万分の1地質図幅「新得」と「落合」では、この山の大部分は花こう岩で山頂の西斜面の途中から「ミグマタイト」が挟在する黒雲母片麻岩となっている。一方、「地質図ナビ」では東から新第三紀・中新世前期〜中期の花こう岩、同じく花こう閃緑岩、古第三紀始新世中期〜新第三期中新世前期の泥質片岩としている。
*ミグマタイト:変成した母岩の部分と優白質の部分とが混在する岩石。(諏訪・蟹沢・高橋、1989による)

 登山道では花崗岩と花崗閃緑岩を見ることができるはずである。泥質片岩は占冠村側の串内牧場内の道路の切土−第二狩勝トンネルの坑口右側−で見ることができる。この道路は全通していない道道夕張新得線(道道136号)なので、入っていくことはできる。
 余談であるが、夕張新得線は新得市街で復活して、パンケ新得川右岸の途中まで出来ている。

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写真1 北東から見たオダッシュ山
 中央のややとがった山頂は前峰で、右のなだらかな山頂がオダッシュ山である。地質の違いを反映しているように見える。登山道は、前峰からこちらに延びる尾根をひたすら登っていく。手前の草地は傾斜約5度の山麓緩斜面である。

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登山道の地質

 登山道入口は道東自動車道をくぐった先にある。車でカルバートボックスをくぐって登山道入口まで行けるが、みんな高速道路手前の道路脇に車を止めている。砂利道であるが車で来るのに心配は無い。

 登山道は最初は沢沿いの緩やかな斜面を登っていく。沢を渡った先から急な道になる。露頭は無く、落ちている石はごま塩の中粒の花こう岩である。
 途中から粗粒の花こう岩に変わり、ペグマタイト様の転石も見られる。

 前峰は標高1,040mほどでいくつかの岩塊が鎮座している。粗粒な花こう岩である。
前峰からは、なだらかな尾根道で、最後はかなり急な登りで頂上に着く。展望は期待通りである。


写真2 登山道入口.jpeg
写真2 登山道入口
 道東自動車道の東側の道路脇に車を置いてカルバートボックスをくぐって右へ行くと本当の登山道入口がある。カルバートボックスの向こうに見えるのはオダッシュ山の前峰である。本峰は、ここからは前峯の陰になって見えない。

写真3 緩斜面堆積物.jpeg
写真3 緩斜面堆積物
 安田川上流の左岸に見られる緩斜面堆積物である。標高460m付近で斜面の傾斜は約7度である。角礫混じりの砂質土と推定される。

写真4 花こう岩の転石.jpeg
写真4 花こう岩の転石
 新鮮な花こう岩の転石である。登山道が安田川上流の沢を渡る手前、標高470m付近である。図幅などでは花こう岩としているが、アルカリ長石をそれほど含んでいるようには見えず、花こう閃緑岩と言った方が良いかもしれない。

写真5 展望が開ける.jpeg
写真5 北東の展望
 登山道が尾根に取り付く手前の標600m付近で北東方向の展望が開ける。遠くのポコポコした山は然別湖周辺の火山で、左の方にはウペペサンケ山や二ペソツ山が見えている。手前の道路は道東自動車道で,その向こうに道立畜産試験場の牧草地が広がる。その向こうは新得山で白亜紀〜古第三紀の混在岩で主に粘板岩からなる。

写真6 前峰.jpeg
写真6 前峰
 標高810m付近で前峰が見えてくる。

写真7 ミズナラの林.jpeg
写真7 ミズナラの林
 標高900m付近にはミズナラを主とする林が広がる。下草のササがほとんど大きくならず見通しの良い林をつくっている。この付近では、登山道の脇にコケが生えている所がある。

写真8 やや粗粒な花こう岩.jpeg
写真8 やや粗粒な花こう岩 
 標高880m付近で見られる、やや風化した粗粒な花こう岩の転石である。

写真9 粗粒なかこう岩.jpeg
写真9 粗粒な花こう岩
 麓付近よりも粗粒な花こう岩の転石で前峰手前、標高900m付近である。

写真10 花こう岩.jpeg
写真10 花こう岩
 標高930m付近の転石でやや粗粒である。この付近の登山道には最大径50cmほどの転石が幾つか転がっている。角は取れているが、それほど移動していない印象である。

写真11 ペグマタイト.jpeg
写真11 ペグマタイト様岩石
 右に径3cmほどの長石があり、中央と左端に細粒の黒雲母が見える。標高940m付近の転石である。

写真12 前峰.jpeg
写真12 前峰の岩塔
 前峰には高さ6mほどの花こう岩の岩塔が鎮座している。日高の一番東に分布する花こう岩はこのような岩塔が見られる。日勝第一展望台も同じ花こう岩で構成されていて、これよりも鋭い岩塔がある。
 この岩塔の裏に「ひたむきに山を楽しんだ 岩木東司君 平成2年1月12日 47才で没す」と書かれた銘板がある。

【参考】「国道274号沿いの露頭(その2)」の写真13

写真13 花こう岩.jpeg
写真13 前峰の花こう岩
 やや結晶の大きい長石、石英、黒雲母が見える。

写真14 前峰から本峰へ.jpeg
写真14 前峰から本峰へ
 前峰から本峰へはなだらかな尾根道である。木々の向こうに本峰がかろうじて見える。

写真15 本峰手前から南を見る.jpeg
写真15 本峰手前から南を見る
 日高の山々が連なる。花こう岩類特有の三角の山頂がいくつも見える。

写真16 狩振岳.jpeg
写真16 狩振岳
 狩振岳かりふりだけは、きれいな三角の山頂を持つ標高1323mの山で、山頂付近から東は泥質片岩、西は花こう閃緑岩である。

写真17 ササ原斜面.jpeg
写真17 ササ原斜面 
 本峰からで南に延びる尾根の東斜面は一面ササ原で覆われて急斜面となっている。西斜面はやや傾斜の緩い斜面で木々が茂っている。

写真18 頂上の露頭.jpeg
写真18 頂上の露頭
 頂上には所々に花こう閃緑岩が露出している。

写真19 頂上の花こう閃緑岩.jpeg
写真19 頂上の花こう閃緑岩
 長石、石英、黒雲母からなる花こう閃緑岩である。

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