坊主山は,鵡川とその支流の穂別川に挟まれた山塊にあり,標高791mの何の変哲もない山である.
山頂から東に張り出した尾根のさらに先端に「八幡の大崩れ」がある.この崩壊地は,国道274号福山大橋から日高町へ行ったヘアピンカーブ手前から見ることができる.
坊主山周辺は,蛇紋岩地帯である.坊主山の北には,国道274号の稲里トンネル,道東自動車道の穂別トンネル,JR石勝線の新登川トンネルがあり,坊主山周辺の蛇紋岩帯の北への延長部を掘削した.いずれのトンネルも難工事となった.
坊主山の西の穂別川周辺には後期白亜紀の海に堆積した砂岩泥岩互層(上部蝦夷層群)が分布している.坊主山に向かって中部蝦夷層群,幌内層(泥岩),滝の上層(砂岩,泥岩)が北北西−南南東方向で分布し,ハッタオマナイ層の粘板岩を経て蛇紋岩の分布域となる.
蛇紋岩の中にハッタオマナイ層の変質玄武岩(スピライト質岩など)と微閃緑岩が取り込まれている.5万分の1地質図幅「紅葉山」では,坊主山の山頂を形成するのはハッタオマナイ層とされている.
坊主山の登山道は,西の穂別川からのみである.地理院地図には,鵡川の八幡の大崩れから徒歩道が描かれているが,今回行ってみて頂上に至る徒歩道は見つけられなかった.
穂別と鵡川を結ぶ道道74号穂別鵡川線の下沢橋のすぐ南の道路が登山口への道である.地理院地図には「中穂別橋」と表示されているが,「下沢橋」(しもざわ・ばし)が正解である.
あとは案内板を見落とさないように町道から林道に入り,車で15分ほど上っていくと登山口がある.登山口の標高は530mである.
この登山道での見どころは,1)登山道の標高600m付近から沢の手前までの微閃緑岩や玄武岩,2)標高720m付近からの蛇紋岩のなだらかな斜面,そして,3)頂上付近の緑色岩類などの三つである.
登山口からやや急な登りのつづら折りを過ぎると,ほぼ直線の緩やかな上りとなる.この道の山側上方に露頭が見えてきて、沢の手前で登山道脇に微閃緑岩や玄武岩の露頭が現れる.濃い赤褐色を呈するのは玄武岩と考えられるが,青灰色を示す微閃緑岩もある.また,登山道に落ちている転石では,ほぼ新鮮なかんらん岩とそれに迸入したように見える黒灰色の蛇紋岩がある.
大きくカーブを切って標高720mの緩斜面に出ると一面の笹原である.トドマツが所々にあるが見事な斜面が広がる.蛇紋岩がつくる代表的な地形である.「山小屋坊主」を過ぎて頂上に向かう.
最初のコブには露頭は見られないが,転石は粘板岩である.
登山道は頂上のコブへと向かう.頂上尾根の最初の露頭は,閃緑岩のようである.頂上の三角点付近にはいろいろな岩石が見られる.
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