チセヌプリ
(山行:2016年7月8日 記事作成:2016年7月11日)
概 要
その名のごとくチセ・ヌプリ(家・山)で,家の屋根の形をした山である.湯本温泉のほぼ北2kmのところにあり標高は1,134mである.チセヌプリはニセコ火山群の中ではイワオヌプリと同じ新期火山群に属し,30万年前から活動をはじめた.
山体を構成する岩石は,石英・角閃石を含むかんらん石両輝石安山岩とされている(広川・村山,1955,15p).
遠くからは家の屋根のように見えるが,地形図で見ると山体は円錐台である.
チセヌプリは,東にニトヌプリ,西にシャクナゲ岳があり,これらの噴出物が錯綜している.チセヌプリの山体をつくっているのは図幅に従えば,舞台状溶岩と溶岩円頂丘で,北西斜面山麓に岩屑なだれ堆積物(長沼泥流)が分布している.
舞台状溶岩と溶岩円頂丘の境は標高900m付近で,湯本温泉への道とチセヌプリ登山道の分岐から100mほど登った付近になる.
図1 チセヌプリの東斜面
道道66号岩内洞爺線のニセコアンベツ二号川源頭付近から見たチセヌプリである.なだらかな斜面のように見えるが,登山道には大きな転石がごろごろしていて,特に下りで苦労する.
溶岩円頂丘ができるときに岩塊が東斜面を転がったのではないかと想像する.
図2 大谷地から見たチセヌプリ
大谷地から道道66号岩内洞爺線に出る付近から見たチセヌプリである.山頂からえぐられたような凹んだ斜面となっているのは,岩屑なだれの発生源である.幅は300m,深さは20mほどである.右の高まりは岩屑なだれの土堤(levee)である.大谷地からの比高は50mほどあり,神仙沼へはこの高まりを越えていく.
図3 チセヌプリの西斜面
湯本温泉から登ってくるとチセヌプリへの道と長沼方面への道の分岐に出る.ここからがチセヌプリへの登山道である.平均傾斜30度の斜面をジグザグに登っていく.
シャクナゲ岳分岐から北口(東口)コースへ
チセヌプリを西から東に横断するコースである.シャクナゲ岳分岐へは,北の神仙沼から長沼の畔を通るコースと南の湯本温泉から上がるコースがある.登山口までは車で行くしかないので,湯本温泉から往復する3時間コースが現実的である.
図4 チセヌプリの頂上
チセヌプリの頂上は平坦でかなり広い.表面に出ている岩石は高温酸化を受けた輝石安山岩である.流理構造がはっきりしているものもある.
図5 チセヌプリ頂上の石
斜長石と少量の輝石からなる安山岩で高温酸化を受け暗赤褐色を呈している.かなり発泡している.
図6 チセヌプリ山頂の沼
チセヌプリ山頂の北側にある小さな沼.この先が岩屑なだれの発生斜面である.
図7 チセヌプリ東斜面の転石
道道66号岩内洞爺線にある北口(実は東口)への登山道には,このような転石がごろごろしている.流理構造を持つ安山岩である.羅臼岳東側の岩塊斜面に植生が付くと,このような状態になるだろうと思う.下に見えている道路は,道道岩内洞爺線である.
参考にした図書など
- 大場与志男,1960,ニセコ火山群の岩石について.地質学雑誌,第66巻,788−799.
- 中川光弘・児玉 浩・奥野 充,2010,8.2.8 ニセコ火山群.日本地質学会編,日本地方地質誌1 北海道地方,301−302.朝倉書店.
- 広川 治・村山正郎,1955,5万分の1地質図幅「岩内」および同説明書.地質調査所.
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