室蘭市街がある 絵鞆 半島は,太平洋に鉤形に突き出た半島で,室蘭湾を抱くようにしている。北海道本土の 本輪西 周辺は,鮮新世・室蘭層を覆って鷲別岳(室蘭岳)などの更新世中期の火山岩類が広く分布しているのに対し,絵鞆半島は中新世中期から鮮新世の火山岩・火山砕屑岩類が分布している。
また,鷲別岳南山麓には海成段丘が広く分布しているのに対し,絵鞆半島には段丘は分布しいていない。
このように,地形・地質的に絵鞆半島は独特の姿をしている。
“地質と土木をつなぐ”⇒ | “貯蔵庫"⇒ |
絵鞆半島は,東と南西が太平洋に面していて断崖をつくっている。北西は室蘭湾が口を開けている。地形的には,室蘭市役所などがある南北性の低地で二つの地域に分けられる。この低地の北西側は測量山(標高194m),ヨシサンベ山(標高140m)などのドーム状の地形が散在している。低地の東側は,母恋富士(最高点141m)など,なだらかな地形が多い。ここでは,山地は北東に向かって次第に高度を下げていき,イタンキ岬付近には低地が拡がっている。
太平洋に面したところは,ほとんどが断崖絶壁となっているのに対し,室蘭湾側は比較的なだらかな地形となっている。
絵鞆半島の地質は,市役所のある南北方向の低地と JR 母恋 駅から南東に延びる沢で区切られている。
この二つの境界に囲まれた地域には,中新世・幌別層の堆積岩類と安山岩・流紋岩が分布しているのに対し,半島北西側と付け根には室蘭層のハルカラモイ石英粗面岩質集塊岩層(主に酸性凝灰岩:10.3Ma;渡辺,1992)・電信浜安山岩質集塊岩層(ハイアロクラスタイトを含む火砕岩:7.5Ma;同前)が広く分布している。これらを貫いて玄武岩質安山岩(測量山)などの貫入岩が分布している。
「室蘭図幅」によれば,チキウ岬は母恋南町から伸びてくる北西-南東方向の断層が二つに分岐した間に挟まれている。周辺に分布する地質はハルカラモイ石英粗面岩質集塊岩層,玄武岩,安山岩,変質安山岩である。
図幅調査当時に比べて火山体の知見は蓄積されている上,水中溶岩類の噴出形態や海底での火山体形成モデルも構築されている。これらの知見に基づいてチキウ岬の地質を解釈するとすれば,どのようになるかは興味のあるところである。
測量山は室蘭中心街の北西にある標高199m の玄武岩質安山岩の貫入岩で出来た山とされている。周辺には水中火砕岩類が分布している。
絵鞆半島の付け根側は,イタンキ浜付近で丘陵はなくなり平地となる。しかし,イタンキ岬,東町の旭公園,鷲別岬などのコブ状の高まりが散点している。
イタンキ岬の北北西に採石場跡がある。そこに巨大な砕屑岩脈がある。幅は8m ほどで,高さ60m の尾根まで続いている。
室蘭市のイタンキ浜は,オホーツク沿岸の小清水海岸とともに「全国鳴砂ネットワーク」に加盟している。
条件が良いと,歩くだけで「きゅっきゅっ」と鳴く場合がある。つま先を蹴り込むようにして歩くと鳴くことが多い。
イタンキ浜の砂をルーペで見ると,透明で少し角のある石英がかなりの量入っている。石英のほかには黒色の磁鉄鉱,鉱山に由来すると思われる白色の角の取れた石英などが見える。透明な石英は,あまり円磨されていないことから,イタンキ浜の南の崖に出ている軽石凝灰岩に由来するものと考えられる。
「鳴き砂」は「鳴り砂」とも言い,「全国鳴砂ネットワーク」は,送り仮名を付けない『鳴砂』を採用している。
母恋富士は,最高点標高141m の安山岩の山である。頂上付近は採石場跡で窪地が出来ている。その壁には鉛直に近い柱状節理が見られ,この安山岩が陸上溶岩でできていることが分かる。
採石場跡へ行く道路の標高80m 付近に水中溶岩の露頭がある。つまり,水中での火山活動がある時期に終わり,陸上での活動に移ったと考えられる。
白鳥 大橋は,室蘭湾口に架かる橋長1,380m の吊橋である。航路幅は300m,航路限界は54.54m である。1998年6月に開通した。
北海道本土側(陣屋側)の主塔(P3)基礎の支持層は室蘭層の凝灰質砂岩で TP-73.0m,半島側(祝津側)の主塔(P4)基礎は室蘭層の凝灰岩で TP-57.0m と非常に深い。このため,地中連続壁工法で基礎を構築した。。室蘭層の伏在深度は,陣屋側で TP-65m 付近であった。室蘭湾の湾口付近の岩盤深度は非常に深い。
“地質と土木をつなぐ”⇒ | “貯蔵庫"⇒ |