イルムケップ火山
(山行:2016年6月28日 記事作成:2016年7月5日)
概 要
イルムケップ火山は,石狩川と空知川に挟まれた標高800〜860m の山頂を持つ山群からなる成層火山で,基底の直径は約15kmである.山体は安山岩あるいはデイサイトからなり,形成された時期は250万年前以前とされている(佐川ほか,1988).
図1 イルムケップ火山の層序(河野ほか,1956,36p)
イルムケップ火山は,イルムケップ山,沖里河山(おきりか・やま),音江山の主な火山体のほかに二つの火山体がある.そのほかに,火山体を形成していないが,より古い沖里河鉱泉沢溶岩,火山山麓を取り巻いて分布するイルムケップ火山岩屑がある.
図2 浦臼町鶴沼台から見たイルムケップ火山
右の山頂がイルムケップ山(標高864m),左の山頂が音江山(標高795m)である.長く裾を引く山麓斜面と定高性のある尾根が特徴である.手前中央の山は,道央自動車道砂川サービスエリアのすぐ東にある石山(玄武岩.滝川単成火山群の一つ:標高237m)である.
図3 イルムケップ山から見た暑寒別山群
石狩低地を挟んで西に位置する暑寒別火山は,イルムケップ火山と同様,安山岩〜デイサイトで構成されている.形成年代は300万年前〜200万年前である.
赤平コース
2016年現在,イルムケップ山の頂上へ行ける登山道は赤平市百戸町東の「右ペンケキプシュナイ川」の林道からの赤平コースだけである.林道への入口が分かりにくいが,国道38号赤平バイパスの百戸橋北側の信号から道道224号芦別赤平線に入り,芦別市境に入る手前の舗装道路を北に行く.しばらく行くと二股になるので,左の道路に入る.地理院地図には作業道路が沢山書いてあるが,実際にはほとんど一本道で迷うことはない.梅沢・菅原の案内書で「十字路」と書いてある場所は,Uターンをするように上に登って行くと車で行ける林道終点のゲートに出る.ゲートの場所は,すでに標高620mである.
なお,梅沢・菅原の「夏山ガイド5」の案内図(301ページ)では,ペンケキプシュナイ川と右ペンケキプシュナイ川が地理院地図とは反対になっている.また,「旧道(廃道)」と表示されているのが,現在の登山歩道である.おそらく,植林のために「新道」を廃止して「旧道」を新たに作ったものと思われる.
図4 林道終点の二股
右の道路のすぐ先にゲートがある.この付近はすでにイルムケップ山溶岩の分布域である.
ゲートから林道を歩き始めて20分ほどで登山歩道の入口に着く.看板が立っているので迷うことはないが,なかなか登山道の入口に着かないので少し不安になる.
登山道は尾根伝いの一本道で多少の曲がりがあって平坦になるが,とにかく登れ登れである.途中に,一の岩,不老の岩,道寄せの岩,思案の岩,そして最後のがんばれ岩と最大径10mもある巨岩が出てくる.いずれも安山岩であるが,思案の岩はデイサイト質である.
がんばれ岩を過ぎると標高は800mを越え樹林がなくなり笹原になるが,笹の丈が高く登山道以外は見通しはきかない.急な登りを天に向かって登って行くと頂上である.イルムケップ山から音江山や沖里河山への登山道は伐開されていない.
図5 がんばれ岩
標高800mを少し過ぎたところにある巨岩である.付近の転石から判断して輝石と方形の斜長石,それに少量の角閃石を含む安山岩である.この岩の上方には,やや小さい転石が,せき止められたように溜まっている.
登山道に出てくる大きな転石は不思議である.まず,この巨礫の発生源はどこなのか,そして,どうやって運ばれてきたのか.登山道は基本的に尾根筋を辿っていて,洪水によって運ばれたものとは考えにくい.また,山頂付近には崩壊源となったような露岩は見られない.いずれの転石も亜円礫である.風化によって形成されたコアストーンのなれの果てなのか.
図6 頂上への道
登山道の周りは樹木がなくなり笹原であるが,笹の丈が高く登山道の方向以外は見通しはきかない.最後は天に向かって登って行く.
図7 神居古潭帯
蛇紋岩を中心とする神居古潭帯は,なだらかな連なりを示す.この写真の左は神居古潭渓谷で神居岩が見える.遠くの雲に隠れている山々は十勝連峰で,手前の平地を内大部川が流れている.
図8 イルムケップ山頂上の安山岩
輝石と方形の斜長石が目立つ.思案岩(標高790m)付近の安山岩は,石英が多少含まれているようであるが,登山道で見られる石の岩質はほとんど変わらない.
参考にした図書など
- 河野義礼・松井和典・清水 勇,1956,5万分の1地質図幅「歌志内」および説明書.北海道開発庁.
- 佐川 昭・松井和典・山口昇一,1988,北海道イルムケップ火山音江山溶岩の K-Ar年代と古地磁気.地調月報,第39巻,第6号,423-428.
- 梅沢 俊・菅原靖彦,2005,最新版 北海道夏山ガイド5 道南・夕張の山々,300−303.北海道新聞社.
- 中川光弘・後藤芳彦・新井計雄・和田恵治・板谷徹丸,1993,中部北海道,滝川地域の中新世-鮮新世玄武岩のK-Ar年代と主成分化学組成:東北日本弧-千島弧,島弧会合部の玄武岩単成火山群.岩鉱,第88巻,390−401.
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