東を石狩川,西を当別川,北を徳富川(とっぷ・がわ)に挟まれた山地は,樺戸山地と呼ばれる.その北西にある標高947mの山が,神居尻山(かむいしり・やま)である.
「カムイ・シリ《と言う吊前の山は,北海道の各地にある.kamui-shir は「神の・山《という意味で,畏敬されてきた山に付けられる吊前である.この神居尻山も標高は1,000mに満たないが,どっしりとした山容と三番川源流の深い谷が印象的である.
樺戸山地と当別川を挟んだ西側の増毛山地とには,前期白亜紀(1.45億年前〜1.00億年前)の海成堆積岩類が分布している.この中で,神居尻山周辺は惣富地川層(そっちがわ・そう)*の黒色粘板岩が広く分布している.
惣富地川層の上位には,整合関係で神居尻山を取り囲むように神居尻山層が分布している.この地層は礫岩と砂岩・泥岩互層とからなる.礫岩は径1〜5mmの亜角礫を主とするもので,礫種は黒色粘板岩,砂岩,白色チャートなどのほかに斑れい岩質岩を含む.
神居尻山の登山道は北からAコース,Bコース,Cコースの三つがある.
Aコースは神居尻山の北を回り込むようにして尾根伝いを登り,避難小屋のある東の根から頂上に達する.
Bコースは,もっとも一般的なコースで,842mピークから北西に伸びる尾根に取り付き頂上へ行く.尾根に取り付くまでの斜面がきついが,あとは比較的楽である.
Cコースは,842mピークの西側の尾根を登って行く.842mピークへの登りがきつい.
今回はBコースから登り,Cコースを降りてきた.後半,足が疲れた状態でのBコースの階段下りはきついと考えられる.842mピークからは,往復1時間見れば大丈夫である.
*:惣富地川層の由来となっている惣富地川は,新十津川町市街の西で徳富川に南から合流する川である.現在は,総富地川(そっち・がわ)と表記されてている.
このコースは707m尾根に取り付くまでは,ほとんど露頭がないが,標高460m付近で右手に表層崩壊があり泥岩が見られる.
さらに標高590m付近の登山道には,「月形図幅」で神居尻山層の玢岩としている岩石が出てくる.
この岩石は,ほぼ惣富地川層と神居尻山層の境界に沿って,北西−南東方向に長軸を持つ楕円形の分布を示している.北側は中新世の堆積岩類に覆われてはっきりしないが,北北西−南南東方向に約15km,東北東−西南西方向に8kmの大きさである.
「月形図幅《では,「神居尻山層と惣富地川層との境界付近には、厚い玢岩(安山岩)質の集塊岩・熔岩ないし岩床が発達する。《としている.
また,神居尻山層の中にも小規模に安山岩様のひん岩が出現し,「月形図幅《では神居尻山層の堆積とひん岩の活動が同時期であるとしている.
きつい階段上り約1時間10分で842mピークから北西に延びる尾根に着いた.神居尻山の山頂が見える.ここからは,多少の上り下りはあるが比較的楽な歩きで,登山道には露頭も多い.
大部分が礫岩で,砂岩も所々に出ているほか,ひん岩も見られる.安山岩のような石も出ている.比較的連続して露頭が出てくる.
やがて842mピークに着く.
842mピークから頂上までは礫岩の細い尾根を登って行く.所々に泥岩が見られる.斜面には表層崩壊がかなり多く見られる.礫岩が上連続面で人頭大くらいの岩塊に分離しやすく,
崩壊を起こしているようである.
所々で見られる黒色泥岩は,細片化しやすいが硬質である.
山頂は,着いたと思ったらその先に階段があり,なかなか遠い.ほぼ全面的に礫岩である.
神居尻山の山頂への登山道は三つある.今回はBコースから登ったので,一番南のCコースを降りた.842mピークからの下りが少しきついが,そのあとは林の中のなだらかな道である.露頭はほとんど見ることができない.
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