ペケレベツ川

 (2017年10月2日作成)

概 要

 2016年8月17日から23日にかけて,台風7号,9号,11号が北海道に上陸した。さらに,8月29日から前線に伴う降雨があり,台風10号が北海道に接近し,8月29日から31日にかけて500mm以上の累加雨量が観測され,空知川や十勝川で堤防が決壊した。北海道では記録したことのない大雨であった。

表1 2016年8月末の総雨量
(8月29日〜31日)
雨量観測所総雨量(mm)
狩勝(河川)512
串内(河川)515
日勝(河川)367
戸蔦別(河川)530
戸蔦別川上流(河川)505
札内川ダム(河川)507
野塚(道路)713
ぬかびら源泉郷(アメダス)351
(*2016年8月北海道豪雨災害調査団 速報版(2016年9月12日)による)

 この豪雨により,十勝川水系のペケ レベツ川やパンケ新得川では,上流域から土砂が流出し河岸浸食が発生すると同時に,下流では河道に土砂が堆積して河床が上昇した。また,河岸浸食によって河道が拡大し橋梁の橋台背面が流出するなどの被害が発生した。

 この豪雨から1年以上経った2017年9月29日(日)に,ペケレベツ川の被災箇所の見学会が,北海道応用地質研究会によって行われたので参加した。

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図1 ペケレベツ川.jpg
図1  見学地点 (地理院地図に加筆)
 国道275号を日勝峠から下ってきた最後のヘアピンカーブの先を町道に入り,旧スキー場に向かうと見学地点1である。
 見学地点2は,見学地点1の先の,長い直線道路の途中から町道に入る。この時点では,1号堰堤の工事が行われていて,工事用道路の橋を通ってペケレベツ二ノ沢出口の露頭へ行った。

ペケレベツ川上流 旧日勝スキー場(見学地点1)

 ペケレベツ川は,日勝峠付近を源流とし東北東に流れて清水町で佐幌川に合流する。その上流にある旧日勝スキー場が最初の見学地点である。
 ここでは,土石流の堆積状態と河岸を削っている様子を見ることができる。
 破壊された町道の橋の付近で,ペケレベツ川の流域面積は約6.8km2である。


図2 橋台が流失した町道の橋.jpg
図2  橋台が流出した町道の橋
 国道から旧スキー場へ通じていた町道の橋は,両側の橋台が流出している。右側の転石の高まりは,土石流の末端の一つである。


図3 合流点の河岸崩壊.jpg
図3 旧スキー場付近の河岸崩壊
 旧日勝スキー場付近のペケレベツ川河岸の崩壊状況である。この付近では河岸が大きく削られている。


図4 ペケレベツ川本流の河岸崩壊.jpg
図4 ペケレベツ川本流の左岸の河岸崩壊
 旧スキー場への道路から見た本流の河岸崩壊である。礫があまり円磨されていないことから,本流の堆積物ではなく斜面上方からもたらされたものと考えられる。弱い層状の構造が見られる。崖面中央上部の赤褐色の層は,9,000年前の樽前山の火山灰(Ta-d)である。


図5 山麓緩斜面上の樽前火山灰.jpg
図5 山麓緩斜面上の樽前d火山灰
 露頭上部の赤褐色の層が,樽前d火山灰である。旧スキー場へ行く道路脇の露頭である。露頭上面は傾斜7度のなだらかな斜面である。
 この道路の先に旧スキー場への橋があった。溢流した土砂は道路を流下して700mほど先まで達していた。

花こう岩のマサの露頭(見学地点2)

 見学地点2はペケレベツ二ノ沢がペケレベツ川に合流する場所のマサの露頭である。これほど見事なマサの露頭は,あまり見ることはできないであろう。
 マサの露頭へ行く途中で,1号堰堤の工事が行われている。そのための工事用道路の切土のり面に山麓緩斜面堆積物が全面露出している。


図6 山麓緩斜面.jpg
図6 山麓緩斜面
 見学地点2へ行く町道の途中から見た山麓緩斜面である。右手にペケレベツ川がある。左手の山は,国道274号の途中にある日勝第一展望台の尾根である。この尾根には風化を免れた花こう岩の岩塔がある。


図6 山麓緩斜面.jpg
図7 山麓緩斜面堆積物(1)
 見学地点2へ行く工事用道路の切土のり面に現れた山麓緩斜面堆積物である。


図8 山麓緩斜面堆積物.jpg
図8 山麓緩斜面堆積物(2)
 見学地点2へ行く工事用道路の切土のり面に出ている山麓緩斜面堆積物である。花こう岩礫と砂の基質からなっている。のり面下部の表層が剥がれた所と腐植土の下に中粒砂だけで構成された細粒層が挟まれている。これだけ見事な山麓緩斜面堆積物は,なかなか見ることができない。


図9 花こう岩.jpg
図9 花こう岩露頭
 ペケレベツ川1号堰堤の左岸に露出している新鮮な花こう岩露頭である。


図10 ペケレベツ二ノ沢.jpg
図10  ペケレベツ二ノ沢の氾濫状態
 ペケレベツ二ノ沢と本流との合流点付近の状態である。左に見えるのがマサの露頭である。


図11 マサ露頭.jpg
図11 マサの露頭(1)
 ペケレベツ二ノ沢と本流との合流点付近右岸に現れたマサの露頭である。全面マサ化していてアプライトなどの脈が辛うじて残っている。上に載っている礫は山麓緩斜面堆積物と考えられる。


図12 マサ露頭.jpg
図12 マサの露頭(2)
 源岩の構造が残っている。

参考にした図書など

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