中日高 ペラリ山
(2018年6月5日登山:2018年6月7日作成)
概 要
ペラリ山はJR日高本線・静内駅の東北東約16kmにある標高718mの山である.ペラリ山山頂から北になだらかな尾根が広がっていて,蛇紋岩が分布している.ペラリ川と捫別川の最上流部に,かつて静内クロム鉱山がありクロム鉄鉱,温石綿,自然銅が採掘された.
日高本線は,地理院地図では鵡川駅から様似駅まで「建設中」の表示となっている.
図1 ペラリ山の地図
ペラリ山の登山口は分かりにくい.道道静内浦川線の碧蘂橋を渡り,北東に進んでペラリ川沿いに遡り,一つ北の川を遡っていく.右に急な登り坂がある林道分岐点に車を置く.車を置いた後は,しばらく林道歩きが続き露頭観察が出来る.登山道に入ってからは露頭はなく,チャートや玄武岩の転石のみである.
(この図は,TrailNoteを使用して作成)
林道の露頭
5万分の1地質図幅「農屋」によれば,林道分岐点から504mのコブ手前まで岩清水層の輝緑岩質凝灰岩となっている.
最初に出てくる露頭は,林道分岐点から30mほど行った左手の崩れである.この付近は緩斜面があり,崩れでは中礫サイズの未固結の角礫層が見られる.花崗岩質岩が主である.
しばらく行くと玄武岩露頭が出てくる.その次も玄武岩だろうと思って次の露頭を叩くと安山岩である.白濁した長石の目立つ閃緑岩質の岩石である.図幅で優白質岩としているものであろう.昔で言う「ひん岩」である.
その後は,
しばらく優白質岩が続き,364mのコブを廻った鞍部付近で岩清水層の緑色片岩あるいは玄武岩が出てくる.この境界は,崖の色の違いで遠くからはっきりと分かる.
地理院地図には標高は示されていないが,標高400mのなだらかなコブの裾付近から赤色チャートの転石や露頭が出てくる.
作業道と別れて登山道(人道)に入る手前に層状の赤色チャートの立派な露頭がある.登山道の入口には,案内表示がある.
写真1 ペラリ山遠望
一番右の山頂がペラリ山で,山頂直下の斜面は一面笹枯れが起きていて遠くからでもはっきりと分かる.山麓の緩斜面は牧草地になっている.静内川左岸の静内豊畑付近から見たペラリ山である.
写真2 林道分岐
左の方に伸びている林道は標高300mの山麓を巻いて北へ延びている.右の急な坂になっている作業道を登っていく.手前右に車を置ける場所がある.
写真3 山麓緩斜面堆積物
林道分岐から30m程のところにある未固結の中角礫を主とする露頭である.背後は5゚程度の緩斜面になっている.
写真4 岩清水層の玄武岩
かなり風化が進んでいるが,黒色緻密な玄武岩である.
写真5 閃緑岩質岩
新鮮部は黒色の基質に斜長石の白濁した斑晶が目立つ岩石である.手前に傾斜した緩い流理構造が見られる.
写真6 閃緑岩質岩
斜長石の斑晶が目立つ岩石で有色鉱物は少ない.風化すると緑灰色になり斜長石の斑晶が目立つ.
写真7 閃緑岩質岩と岩清水層の境界
向側の淡黄褐色の部分が閃緑岩質岩で手前の灰色がかった露頭が岩清水層のメランジュである.標高364mのコブを廻った鞍部の少し手前である.
写真8 岩清水層のメランジュ
凝灰岩(右)・玄武岩(左)起源のブロックが含まれている.メランジュの基質部分を見ることが出来る唯一の露頭である.
写真9 メランジュ
著しく破砕されブロック化している.
写真10 玄武岩
ブロックで残っている玄武岩である.
写真11 チャートブロック
層状の赤色チャートである.登山道分岐のすぐ手前にある作業道の切土である.
写真12 登山道分岐
右が作業道,左の踏み跡がペラリ山への登山道である.ここから,ペラリ山から西に延びた尾根を登っていく.
登山道を山頂へ
登山道分岐から山頂までは標高差約340mである.尾根上に転がっているチャートを叩きながら登って約1時間で着く.転石は赤色チャートあるいは白色チャートがほとんどで,たまに玄武岩が転がっていることがある.
504mのコブから一度下って,後は登りになる.この時期,コエゾサクラソウやツツジなどの花が見られる.
写真13 チャートブロック
頂上への最後の登りの標高685mの小さなコブのところにあるピンク色のチャートブロックである.
写真14 頂上の天測点
手前のコンクリートの柱は天測点で,奥に一等三角点がある.その向こうの笹原は一面枯れている.
写真15 ピセナイ山
左端がピセナイ山である.その向こうに日高の山々が見える.多分,この付近から右手が蛇紋岩の地形だろう.ペラリ山西尾根の地形は,蛇紋岩の分布域にしては急すぎる.蛇紋岩メランジュ中にチャートのブロックがあるにしても,最大傾斜43度という急な地形は蛇紋岩地帯とは思えない.
クロム鉱床など
ペラリ山の北西に御園鉱山,東に静内クロム鉱山があった.この鉱山は蛇紋岩中に胚胎しているもので,クロム鉄鉱と温石綿を採掘していた.
ペラリ山の東の沢には多数の自然銅の流鉱(転石)があったと言われていて,最大200ton以上のものが採掘されたという(5万分の1地質図幅「農屋」説明書,30p).
図2 ペラリ山周辺の鉱床分布図
クロム鉄鉱と温石綿の鉱床は,ペラリ山の北と東に分布している.鉱床分布域は,地形が緩やかになる地域と一致している.
(5万分の1地質図幅「農屋」説明書,30p の図をもとに作成した.正確な位置ではない.地形図は,TrailNoteによる.)
参考にした図書など
- 松下勝秀・鈴木 守,1962,5万分の1地質図幅及び説明書「農屋」.北海道開発庁.