山陽新幹線福岡トンネルのコンクリート落下ほか

1 山陽新幹線福岡トンネルのコンクリート落下

 1999年6月27日に発生したこの事故は,幸い人的被害は発生しなかったがコンクリート構造物の維持管理に大きな教訓を与えました.その後,各種委員会が作られて,2001年1月には,土木学会が「コンクリート標準示方書[維持管理編]」を発行しました.ここでは,既設コンクリート構造物の維持管理はもちろんのこと,新設の構造物の場合も,「構造物の生涯ストーリー」を決めることが求められています.このこととの関連で,構造物の保持すべき性能を明確にする必要があり,「性能照査を含む性能規定型の記述」になっているのが特徴です.

 一連の動きのきっかけとなった福岡トンネルの事故の特徴は次のように考えます.
(1)コンクリート落下の直接的な原因が,コーリドジョイントという「施工不良」であった.
(2)覆工肩部に向かってやや左下がりに分布していたコ−ルドジョイントのほかに,不規則な褐色化したクラックが発生していたと考えられる.
(3)人身事故には成らなかったが,列車の損傷という直接的な被害が発生した.

 その後,同年10月9日には,同じ山陽新幹線の北九州トンネルで打込み口のコンクリートが落下しました.打込み口というのは,トンネルの上半と下半の覆工を連続させるために,下半の覆工コンクリート打設時にロウト状の口(打込み口)を作ってコンクリートを打ち込む方式(直説法と呼ばれる)で造られるものです.これに対して,上半と下半を別々に打設した場合は,両者の間に隙間が出来るので一体化させるために固練りのモルタルを押し込む方法(充填法と呼ばれる)が採られる.多くのトンネルがこの充填法で施行されている.山陽新幹線でも142箇所のトンネルのうち,山口,福岡両県内の7箇所(5%)のトンネルで直説法が採用されたと言われています.

←“打込み口の例”

2 JR室蘭線礼文浜トンネルのコンクリート落下

 さらに,1999年11月28日には,JR室蘭線礼文浜トンネルでトンネル天端から約2トンのコンクリート塊が線路上に落下し,貨物列車が乗り上げて脱輪した.この落下跡を見るとほぼ円形で放射状の亀裂があり,典型的な「押し抜きせん断」によるものであるとされている.この事故はこれまでの二つと異なり,外力が作用して発生したものであるのが特徴である.

←“礼文浜トンネルのコンクリート落下跡”

(2001年3月1日記)


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