積丹岳
(2018年8月6日山行:2018年8月8日作成)
概 要
積丹岳は,積丹半島の最高峰・余別岳の北東にある標高1255mの山である.余別岳の南南東にはポンネアンチシ山があり,この三つの山に囲まれた南東斜面は巨大地すべりである.余別岳の北東斜面も地すべりである.
余別岳を中心とした山体は,広大な積丹岳溶岩で覆われている.この溶岩は石英とかんらん石を含む角閃石両輝石安山岩で,噴出年代は200万年前で前期更新世とされている.登山道のある北東斜面では,標高200m付近まで「崖錐堆積物」で,その上方からこの安山岩に変わる.
写真1 積丹岳全景
国道229号の<グリーンホリデー>の前から撮ったものである.多分,左から三つ目のコブが頂上である.
登山道は,婦美コース(標準的な時間:登り3時間20分,下り2時間20分)のみである.
国道229号で積丹半島の東海岸を北上し,美国市街を過ぎて台地に上がった直線道路の右手に<グリーンホリデー>という食堂がある.その少し先左手に<積丹岳休憩所入口>の標識がある.浄水場までは舗装道路で,ここまでは車で容易に行くことができる.それより上は,砂利道になり道路に雨裂ができていることがあるという.
今回登った時は,<休憩所>まで軽乗用車で行くことができた.
浄水場の先の急な登り付近から積丹岳溶岩の分布域となる.標高971mの尾根からは巨大地すべりの滑落崖上部となるが,登山道の両側にはクマザサが生い茂っているので頂上まで行かないと巨大地すべり地形を見ることは出来ない.
図1 積丹岳ルート図
(TrailNoteで作成)
ひたすら登る
登山案内書を見て覚悟はしていたものの,樹林と熊笹が登山道の両脇に茂っていて,全く景色が見えない.ひたすら足下を見て登る.その分,落ちている石に注意が行く.
登山道に転がっている石は,前期更新世の積丹岳溶岩の角閃石安山岩である.特徴は,最大径5mmほどの斜長石の斑晶とガラス質で暗灰色を呈する基質である.
幾つかのフローユニットがあるようで,岩相は一律ではなく半深成岩様のものから凝灰岩様の非常に粗鬆なものまでが繰り返し分布している.
なお,登山道の最初の区間で,濃青灰色の閃緑岩の転石が見られるが,これは道路整備のために持ち込まれた砕石と考えられる.
写真2
細粒の安山岩
標高410mにある休憩所のすぐ上の登山道に落ちている転石である.淡い赤灰色を示し,一見,凝灰岩のように見える.
写真3 黒色の安山岩
標高480m付近の登山道に落ちている転石である.硬質で新鮮,斜長石の斑晶とガラス質の石基が特徴である.
写真4 ミズナラの大木
標高700m付近の登山道右にある大木である.多分,ミズナラと思われる.ちょっとビックリの太さである.
写真5 やや細粒の角閃石安山岩
標高730m付近の転石である.ピンぼけ写真ご容赦.
写真6 新鮮な安山岩
典型的な積丹岳溶岩である.
写真7 頂上に続く尾根
頂上に続く尾根からようやく頂上手前のコブが見えてくる.左側には巨大地すべりが見えるはずであるが,ササと樹木に遮られて全く見ることが出来ない.
写真8 斑晶の少ない安山岩
標高990m付近の安山岩である.標高970m付近から斜面はやや急になっていて,フローユニットがこの付近より下とは別なのかもしれない.
写真9 積丹岳頂上
頂上手前の標高1030mのコブを廻った所でようやく頂上が見えた.東から見ると積丹岳は左右非対称である.左(南)側の斜面上部は露岩している.
右上に上がっていく登山道が見える.
写真10 レンガ色の安山岩
頂上手前の標高1180mの登山道の転石である.空気に触れて酸化し,レンガ色を帯びている.山頂への急斜面が標高1200m付近から始まる手前である.最後の急登斜面は,黒灰色の新鮮な安山岩の転石がゴロゴロしている.
写真11 山頂直下斜面の転石
頂上手前の急斜面の登山道で見られる転石である.標高1205m付近である.その大きさから考えると,融解融解作用によって出来たものではなく,噴出時の塊状溶岩そのものという印象である.
写真12 積丹岳頂上
積丹岳頂上の南斜面は,露岩していて大規模地すべりに向かって急傾斜で落ち込んでいる.黒灰色で斜長石の斑晶の目立つ安山岩である.
写真13 ポンネアンチシ山と巨大地すべり 積丹岳・余別岳・ポンネアンチシ山が取り囲む谷は,巨大地すべりである.その規模は,大まかに見積もって幅3km,奥行き2kmである.この写真では収まりきれない.
右の三角の山頂がポンネアンチシ山で東北斜面にはまだ雪が残っている,遠くの平らな尾根は珊内岳である.
写真14 余別岳 左の小さな三角の山頂が余別岳である.標高1298mで積丹半島の最高峰である.登山道はついていない.