尻別岳と喜茂別溶結凝灰岩

 (山行:2016年5月24日 記事作成:2016年6月2日)

概 要

 尻別岳は,札幌から洞爺湖に向かう国道2230号の喜茂別付近から見える円錐形の山である。その形から,初めて見た人は羊蹄山と間違えることがある。

 羊蹄山は,記録に残る火山活動はないが,もっとも新しい山頂噴火は2,500年前とされていて活火山である。北麓の側火山の活動は6,000年前〜11,000年前とされている。
 これに対して,尻別岳は約5万年前の喜茂別溶結凝灰岩を噴出した火山とされている。

尻別岳の地質

 尻別岳は橇負山を含め,尻別岳溶岩で構成されいて,その末端は標高500m付近である。その周りの緩やかな斜面は,扇状地堆積物・崖錐堆積物とされている(5万分の1地質図幅「留寿都」)。
 登山道で見られる石は,すべてデイサイト質安山岩で,最大径10mmの白濁した斜長石が目立つのが特徴である。角閃石と石英を含んでいて,留寿都図幅では,含石英角閃石,普通輝石紫蘇輝石安山岩としている。
 同じ岩質の安山岩は尻別岳西方の軍人山などにも分布しているとしている。


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写真1 喜茂別市街の東から見た尻別岳
左が尻別岳,右遠くが羊蹄山である。尻別岳の北から西の斜面には山麓に緩斜面が発達している。

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写真2 北西から見た尻別岳
 左が尻別岳で一番右が橇負山である。これらの山は斜長石の斑晶の目立つ安山岩で構成されている。

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写真3 尻別岳南斜面
橇負山からの登山道は,一度標高723mの鞍部に降りてそこから約300mの急登となる。鞍部手前から見た山体である。沢はあまり発達していない。斜面のあちこちに崩壊地が見られる。

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写真4 尻別岳溶岩の露頭
登山道の標高905m付近の安山岩露頭である。硬質で比較的新鮮である。

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写真5 尻別岳溶岩
最大径1.5cmの斜長石と長柱状の角閃石の斑晶が肉眼で識別できる。石基(基質)は灰色でやや粗鬆である。

喜茂別溶結凝灰岩

 尻別岳東方の尻別川鈴川付近に喜茂別溶結凝灰岩の良好な露頭がある。

 この溶結凝灰岩は,
 「上部(Km−pfl1)および下部(Km−pfl2)の二つのユニットから構成されること、給源火山は分布および本質物の岩石学的検討から,羊蹄山の南東に位置する尻別火山であることが明らかになった。」(中川ほか,2011)。

 喜茂別溶結凝灰岩の特徴は,
「模式地では,柱状節理が発達しているが,ところによっては,径数cm~20cm の浮石(軽石)を多量にふくみ,指頭大の安山岩亜角礫も多少まじえ,粗鬆な凝灰岩状にかわる。
 一般に, 径 l mm 内外の石英粒を多量にふくんでいるが,これがこの熔結凝灰岩の特ちょうでもある。」(斎藤ほか,1956,15p)。

 模式的な露頭は尻別川右岸の尻別付近で,喜茂別川左岸や尻別川と喜茂別川合流点の下流右岸にも分布している。
 また,豊浦図幅内では貫別川沿いに同じ岩質(灰色の石英粗面岩質)の溶結凝灰岩が,かなりの範囲に分布しているとしているが(同上),豊浦図幅のどの地層かは不明である。


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写真6 喜茂別溶結凝灰岩
尻別川右岸の尻別付近の露頭である。節理は顕著でない。

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写真7 喜茂別溶結凝灰岩の壁面
あまり円磨されていない軽石が大量に含まれている。黒色の岩片はスコリアのようである。

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写真8 喜茂別町・町民公園向かいの大露頭
 留寿都図幅では,すべて喜茂別溶結凝灰岩としているが,色調,岩相などから考えて下部は洞爺火砕流のように見える。上部には角礫層が載っていて,さらにその上部に砂層が見られる。
 左端の平坦な面は河岸段丘と考えられる。背後の山は尻別岳である。

参考にした文献など


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