山陰道・鳥取西道路のり面変状

 (2018年1月12日作成)

概 要

 鳥取から米子を経て出雲へ通じる山陰道のうち,鳥取西インターチェンジ(IC)と鳥取市 青谷あおや IC 間の工事が行われていた。2017年12月17日に開通を予定していた山陰道・鳥取西道路の浜村 鹿野しかの 温泉 IC と青谷IC 間の開通が,のり面に変状が発生しために2019年に延期された。
 変状が発生したのは2017年9月から10月にかけてで,のり面のグランドアンカー4本が破断し,のり面の基準点が10cm 動いた。地表に亀裂などは見られない。

 場所は,JR 山陰本線浜村駅の南約1.2km 付近で,東の浜村川と西の永江川に挟まれた南北の尾根である。この尾根は標高90m ほどの丘陵で,路線付近では二つの尾根に別れていて,東側の尾根を切土で通過して西側の尾根はトンネル(鹿野トンネル:延長249m)となる計画であった。

 なお,大体の場所は,北緯35度29分49.25秒,東経134度2分53.22秒(地理院地図)である。鳥取河川国道事務所が発表している写真では路線の左(北側)の尾根に送電鉄塔が見える。また,切土の先には県道 郡家鹿野気高こおげしかのけたか 線との交差部に設けられる浜野鹿野温泉 IC が見える。なお,この県道は 八頭町やずちょう 郡家までは開通していない。

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変状のり面周辺の地形・地質

 JR山陰本線の宝木駅から青谷駅にかけては,南北の河川が幾つか分布している。東から,河内川,浜村川,永江川,日置川,勝部川である。特に,河内川から永江川にかけては,各河川がほぼ真北に向かって流れていて,その間に南北の尾根が分布している。
 高速道路はこれらの尾根を横切っている。地理院地図で見る限り,周辺に明瞭な地すべり地形は認められない。

 この付近の南北性の尾根は,古第三紀・暁新世〜始新世初期(6600万年前〜4780万年前)の花崗岩と新第三紀中新世〜鮮新世の火山岩類である(地質図Navi)。既存地質図では,変状を起こしたのり面は花崗岩のようである。
 2017年12月23日に開かれた第2回鳥取西道路技術検討委員会の概要では次のように述べている。

 なお,地形や地質の図については,下の「参考にした図書など」のウェブサイトを見て下さい。

花崗岩類地山での斜面変状

 一般的に花崗岩類で大規模な斜面変状が発生することは予想しにくいと思う。しかし,幾つかの例には遭遇している。

道道奥尻島線・幌内の地すべり

 1993年7月12日の北海道南西沖地震では,奥尻島で岩盤崩壊が多数発生した。奥尻島北西の蚊柱わしら*) の南に大規模な地すべり地形があり,現在の地理院地図を見ると,道道奥尻島線はその頭部付近を回り込むようにして通っている。
 当初計画では,この区間は地すべりの中を橋で通過する計画であったが,地震によって建設中の橋が被害を受けたことや大規模地すべりの側壁から大きな落石があったことなどから今の路線に変更になった。
 この大規模地すべりの南の縁に前期白亜紀の花崗岩が一部顔を出している。この花崗岩の分布域に地すべりがあり,その頭部は尾根の反対側に及んでいた。地表踏査の結果では,きれいな円弧すべりであった。

*)地質研究所の「北海道の地すべり地形データマップ」による。

国道112号・ 寒河江さがえ ダム左岸の地すべり

 寒河江ダムは JR 左沢あてらざわ 線寒河江駅の西北西約23m にあるロックフィルダムである。この付近には数多くの地すべりが確認されていて,寒河江ダムのダム湖(月山湖)左岸も大規模地すべりと認識されていた。ダム建設に先立って国道112号の付替道路が建設された。現在,横手トンネルとされているダムサイト左岸のトンネルは,完成当初から覆工コンクリートに亀裂が入っていた。ロックフィルダムが完成すれば堤体が押え盛土になり,変状の進行は止まると考えて建設が進められた。

 周辺の地質は,古第三紀漸新世の花崗閃緑岩類である。
  ダム湖にかかる大規模地すべりの側部に厚さ50cm ほどの小礫を含む粘土層が露出していた。これが大規模地すべりのすべり面粘土であった。

参考にした図書など

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