ここで言う砂質土地山というのは,未固結の土砂あるいは半固結の軟岩のうち,75μm(0.075mm)以下の細粒分(シルト以下の粒度の土:バインダー分)の含有率が30%未満のものを目安とする(2006年制定 トンネル標準仕方書 山岳工法・同解説,38pの注)5 参照).
桜井・足立(1988,25−26)も同様の区分を採用している.
ただし,地盤材料の分類では,砂質土は,砂以上の粗粒分が50%以上(粗粒分>50%)で砂分が礫分より多い(≧)土質のことを言う.
また,中間土の考え方では,砂分80%以上を砂,砂分50%以下を粘土,その中間の粒度組成の土を中間土と分類し,砂では力学定数は内部摩擦角のみを考慮し,粘土では粘着力のみを考慮すれば良いことになっている(土質工学会,1994,ジオテクノート2 中間土 砂か粘土か).
土被りの小さい砂質土地山での変位の特徴は,天端の歪みが大きくなり側壁の歪みが逆に小さくなる傾向にある.すなわち,浅い土被りの砂質土地山ではアーチアクションが形成されにくいのが特徴である.
土被り比(土被り/トンネル掘削幅)が,5以上となると側壁部の歪みが大きくなり地山に均等な応力が作用する状態になりやすい(桜井・足立,1988,27p).砂質土地山でも土被りが5Dを越えると天端沈下と壁面変位とがほぼ等しくなるようである.
砂質土地山の最大の問題は,せん断強度が小さいために切羽の自立性が悪いことである.砂質土地山の評価指標を下に示した.
項 目 | 指 標 |
地層吊 | 新第三紀鮮新世の地層
富士山周辺の火砕流堆積物 |
地質年代 | 新第三紀鮮新世から第四紀更新世の物が多い. |
土被りの厚さ | 砂質土:5D(掘削幅の5倊≒50m)程度までは天端の沈下量が卓越し,天端崩落が発生しやすい. |
地山せん断強度比 | 地山強度比に内部摩擦角係数を加えた数値で,土砂地山に近い南岸地山の場合,有力な指標になるとされている. 地山せん断強度比= ただし, c:粘着力(kN/m2) φ:内部摩擦角(°) γ:単位体積重量(kN/m3 h:土かぶり(m) |
均等係数(Uc) | ・均等係数が小さい土は,粒径化石曲線が急立している. ・粒度分布が悪い(粒度が揃っている). ・均等係数の小さい砂質土の場合,トンネル切羽は自立しにくい. ・実績では,均等係数(Uc)が4以下の場合,流砂現象が発生しやすい. D60:通過質量百分率が10%の粒径 D10:通過質量百分率が60%の粒径 |
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粒度分布の評価 1<Uc<5:均等な土(粒度分布が悪い).海岸の砂のようにサラサラした土. 5<Uc<10:普通の土(中位の粒度分布) 10<Uc:上均等な土(粒度分布の良い土) | |
透水係数 | ・均等係数が小さい砂質土は,透水性が高い. ・水が通りやすいため,流砂現象を起こしやすい. |
N値 | ・N値20〜50以上でも,均等係数が小さい未固結〜半固結の砂質土は,切羽が自立しにくい. ・N値のみでは判定できない. |
地下水位 | ・砂質土では,地下水位のあるなしは大きな要因となる. ・地下水位を低下させることができる場合は,切羽を自立させることは可能である. |
流砂現象を起こす砂質土の要素 | ・土粒子の比重:2.65以下 ・乾燥密度:1.70〜1.75g/cm3以下 ・10% 粒径(D10):0.15mm以下 ・60% 粒径(D60):1.5mm以下 ・均等係数(Uc):4.0以下 |
国分川分水路・中間立坑上流区間
延長:
国分川分水路は総延長3,362mで,そのうちトンネル区間は北総台地を通過する2,555m区間である.このうち中間立坑から上流側に50m,下流側に337m掘削したときの状態について述べる.
トンネルの掘削断面積は60.6m2で掘削工法はNATMであるが,極端に土被りの小さい区間では,日本で始めてRJFP工法(Rodin Jet Fore Piling Method:ロジンジェット・フォアパイリング工法)を採用した.
地質:
このトンネルを構成する地質は,洪積世成田層最上部の砂層である.粘土・シルト含有率が平均4〜8%で典型的な砂質土である.
施工状況:
地質状況は平坦な丘陵面と谷に向かう斜面とで異なり,丘陵部ではN値30〜50で細粒分含有率は5%と低いのに対し,斜面部ではN値は20以下に低下し細粒分含有率は10%程度となる.
丘陵部では,ディープウェルによる地下水低下工法と鉄矢木による先受け,切羽モルタルボルト,リング3分割施工で切羽の自立性を確保し,一部区間での薬液注入工法を実施した.
斜面部では,RJFT工法により切羽の自立は十分確保できたので補助工法は必要なかった.地中変位はRJFT工法施工中に発生し,トンネル掘削時にはほとんど増加しなかったのに対し,地表変化はどちらの施工でも発生した.このことから,地盤改良によりアーチが形成されたためにアーチ上方の荷重がほとんど全て改良地盤にかかり全体が沈下して地表沈下が現れたと考えることが出来る.
このような現象はアーチ部の地盤強化では比較的一般的に見られるようで,上半脚部にサイドパイル(横方向の鋼管打設)やフットパイル(斜め下方への鋼管打設)を施工する工法が開発された(アンブレラ工法,AGF工法).