11.9.3 蛇紋岩地山

 (2015年1月24日作成)

概 要

 蛇紋岩地山に掘削されたトンネルで,最も詳細に現場の記録を取ったのは紅葉山線・新登川トンネルであろう.現在の吊称は,石勝線・新登川トンネルで,この新登川トンネルの北,約800mに道東自動車道・穂別トンネルが,ほぼ並行に通っている.

 新登川トンネルの延長は5,825mで,そのうち蛇紋岩の出現が予想された区間長は1,300mである.最大土かぶりは,約400mである.
 最初、トンネル断面は卵形(縦長の楕円形)で計画され部分的に施工されたが,インバートストラットが座屈したため放棄された.その次に真円の断面(H150+6インチパイプによる上半仮インバートストラット,吹付けコンクリート20cm、内巻きコンクリート40cm)で施工したが,これも変状が大きく採用できなかった.
 採用された断面は真円で,モルタル中詰の8インチパイプ鋼管支保工+上半仮インバートストラット,吹付けコンクリート厚25cm,内巻きコンクリート厚40cmとした.支保工ピッチは50cmである.この断面に作用した平均土圧は,130〜140t/m2,軸力は260tであった.

 この工事が始まったのは,昭和41(1966)年10月で,本格的な蛇紋岩区間に入ったのは昭和43(1968)年9月である.

 現在の山岳トンネルの標準工法であるNATM工法が,上越新幹線中山トンネルで試験的に採用されたのが1976(昭和51)年である.それより10年前に,鋼製支保工と吹付けコンクリートによるトンネル施工を行っていた.出来るだけ早く地山を覆って劣化を防ぐことが吹き付けコンクリートの役目であり,土圧に対しては円形断面とパイプ鋼管支保工で対抗するという発想である.ロックボルトは使用していない.

 このように,蛇紋岩中のトンネル施工は,土圧との壮絶な闘いとなる.


新登川トンネル縦断図.jpg
図11.9 紅葉山線・新登川トンネルの縦断図
(足立ほか,1969,51p の図に加筆,着色)
 土かぶりの大きな区間に蛇紋岩の本体が出現する.昭和44(1969)年9月時点の縦断図で,未完成区間は,蛇紋岩本体を含む中央部の約1,400mである.

蛇紋岩の分布

 日本の蛇紋岩の分布は,北海道中軸部に南北に分布する神居古潭帯,北上山地の“早池峰構造帯”(中岳蛇紋岩や宮守蛇紋岩),飛弾外縁帯,中央構造線沿いの三波川変成帯(関東山地から九州の佐賀関まで),九州から四国を経て紀伊半島まで分布する黒瀬川構造帯,山陰地方の三郡・山口帯などがある.
 小規模なものは鹿児島県八瀬尾の四万十帯や房総半島の嶺岡帯から三浦半島を経て静岡県の瀬戸川帯などに分布している.いずれも大規模な構造線に沿って分布しているのが特徴である.


蛇紋岩の分布.jpg
図11.10 蛇紋岩の分布図
(久城ほか編,1989,187pおよび189p に加筆)
 神威古潭帯,“早池峰構造帯”,三波川帯,三郡・山口帯などが比較的規模が大きい.房総半島から三浦半島にかけては,嶺岡帯の蛇紋岩がある.

蛇紋岩の特性


蛇紋岩産状1.jpg


蛇紋岩産状2.jpg


蛇紋岩産状3.jpg

 蛇紋岩の特性は次の通りである.

 蛇紋岩は,蛇紋石(大きくは3種類)を主成分とし,磁鉄鉱,クロム鉄鉱を含む岩石で,黒〜暗緑色を呈し炭酸塩の細かい網状脈を伴うことがある.マグネシウムに富んだかんらん石,輝石が,熱水による変質作用で約600℃以下の温度で蛇紋石類に変化し,蛇紋岩が形成される.

 蛇紋岩の特徴の一つは,変形しやすく,伴われる超マフィック岩に比べて密度が小さい(約2.55g/cm3)ことである.そのため地殻中で移動しやすい.
 形成時に高圧を受けているために地表に露出しているものは応力解放しやすいのも特徴である.ただし,軟質な蛇紋岩については,潜在的応力は解放されていて作用していないという考えもある.

 蛇紋岩は,その見かけから,粘土状,葉片状,塊状に分けられる.粘土状,葉片状のものが流動化しやすいのはもちろんであるが,塊状のものでも岩盤すべりを起こすことがある.

表11.10 新登川トンネルでの蛇紋岩の岩石的性質
(足立ほか,1969,57p による)
蛇紋岩種別塊状蛇紋岩葉片状蛇紋岩
硬質なもの普通程度はく離性のもの粘土化したもの
塊状率(Fm:%)100〜8080〜3030以下30以下
坑内弾性波速度(Vpm/sec)3,500以上2,500〜3,0002,00〜3,0002,000〜3,000
圧縮強度(σc:kgf/cm2)推定500以上1.0〜12.0
自然含水比(%)10〜2030〜35
吸水膨張率(%)なし1.0〜4.03.0〜12.0
湿潤密度(t/m3)2.5〜2.62.2〜2.32.2〜2.3
液性限界(%)78〜105
塑性限界(%)38〜47
塑性指数39〜58
流動指数48〜66
透水係数(m/sec)10-6〜10-8
比重(T/15℃)2.642.6522.64
地山の支持力(t/m2)90〜130
注)塊状率=(トンネル延長10mあたりの周辺面積中に占める塊状部分の面積)÷(トンネル延長10mあたりの周辺面積)

 三田地らが上撹乱の蛇紋岩試料を用いて行った三軸圧縮試験の結果では,c'=15kPa,φ'=33.4° の値が得られている.蛇紋岩粘土の内部摩擦角は30〜37°の間に分布しているという報告がある(例えば,北郷ほか,1974).

 


鉛直土圧と水平土圧.jpg
図11.11 鉛直土圧と水平土圧の関係図
(足立,1970,59p の表による)
 塊状蛇紋岩は,水平土圧が60kN/m2を越えない.葉片状蛇紋岩では,水平土圧は56kN/m2以上で最大132kN/m2である.


土圧と塊状率の関係.jpg
図11.12 土圧と塊状率の関係
(足立ほか,1970,59p による)
 土圧と塊状率の関係は直線に載る.土圧は次の順に大きくなる.(主として塊状の蛇紋岩)<(葉片状蛇紋岩)<(湧水のある葉片状蛇紋岩)<(粘土化が進んだ蛇紋岩).

水平変位量.jpg
図11.13 新登川トンネルの水平変位量
(足立ほか,1969,67p.下の二つの図も同様.)

 鋼管支保工(一番上の曲線)では,15 日ほどで変位は収束している.土圧の増加が収束するのは40日ほどで,この時土圧は,まだ増加しているという計測結果が得られている.
 H型支保工では,変位は完全には収まっていない.しかし,土圧は20日前に増加を止めている.
天端沈下量.jpg
脚部沈下量.jpg
図11.14 新登川トンネルの天端沈下量

 天端沈下量は,鋼管支保工もH型支保工も変位量にあまり差がない.2ヶ月ほど経過しても緩やかに増加している.
図11.15 新登川トンネルの脚部沈下量

 沈下量は,鋼管支保工とH型支保工であまり差が見られない.脚部の地山支持力に大きく支配されていると推定している.

蛇紋岩地山でのトンネル施工例

 蛇紋岩地山での道路トンネル施工例を幾つか紹介する.また,施工例の一覧表を示す(表11.12参照).
 神居古潭帯を横断する道東自動車道の夕張・占冠間(2011年10月29日開通)では,穂別トンネル,占冠トンネル,タンネナイトンネルなどで蛇紋岩に遭遇しているが,これらは含まれていない.

国道274号 稲里トンネル

位置:国道274号 北海道むかわ町穂別長和および穂別福山(札幌から日高町を経て帯広に抜ける国道)
延長:1,441m
地質:神居古潭変成帯の蛇紋岩が帯広側の約900m区間に分布している.蛇紋岩に伴われる黒色片岩や緑色片岩は,著しく片状化している.最大土被りは約150mである.
施工状況:工事に着手したのが1979年(昭和54年)で,まず導坑を掘削して在来工法とNATM工法の比較を含む試験工事を行った.翌年度は本坑断面での試験工事を行い,1981年に本工事に着手した.
 蛇紋岩区間では,円形断面の側壁導坑をまず施工し,その後,切り拡げるという方法を採用した.現在このトンネルは,北海道で最初にNATM工法を採用した道路トンネルということで,坑口に「NATM工法《という銘板がつけられている.試験施工を含めて丁寧に施工されたため,トンネルには顕著な変状・湧水は現れていない.

 稲里トンネルの概要については,文献12の112−113に縦断図が掲載されている.

高知自動車道 逢坂山トンネル

位置:高知市の北東約5km(四国横断自動車道)
延長:617m(内約340m区間が黒瀬川構造帯である)
地質:高知側の坑口から約340m区間が黒瀬川構造帯で,蛇紋岩は著しい破砕作用を受けており,深部でも軟質な岩盤となっている.蛇紋岩の岩相は葉片状構造の発達したもので,葉片状〜粘土状蛇紋岩である.
 この付近の蛇紋岩の特性は,粘土状蛇紋岩では膨張率,膨張圧ともほとんど認められないが,葉片状蛇紋岩では多少膨張する傾向にあり,膨張圧も発生する.
 粘土鉱物としてはモンモリロナイトなどの膨潤性粘土鉱物は検出されず,鉱物間の間隙に水が進入して体積増加を起こす「吸水膨張《が生じていると推定される.
 トンネル掘削上問題となるのは,蛇紋岩区間の地山強度比が小さいために塑性土圧が発生すること,浸水崩壊しやすい蛇紋岩であるため支持力上足となることである.
施工状況:高知側坑口は突出した尾根状地形に位置しており,上半をフォアパイリングとリングカット工法で掘削した.
 掘削は機械掘削である.約29m掘削したが天端と支保工自体の沈下が著しくなり,吹付けコンクリートとロックボルトに変状が現れた.この区間の地質は,葉片状蛇紋岩が主体で部分的に粘土状蛇紋岩が分布していた.対策としては,ロックボルトの増打ち,上半仮インバートの打設(t=25cm)を行った.
 29mから奥は基本的に,増しロックボルトと上半仮インバートの打設で対処した.また,ウイングリブ付き支保工を使用した.この区間の地質は,葉片状蛇紋岩が主体で粘土状蛇紋岩,塊状蛇紋岩が一部分布していた.
 土被りが2Dを越える区間に入ると,上半仮インバートはやめてウイングリブ付き支保工と脚部吹付けで対応できるようになった.
 下半掘削は支持力上足が発生すると予想されたことから,下半とインバートを同時に施工し吹付けインバート(t=25cm)を施工した.掘削は左右交互に1.0〜2.0mとした.
 支持力上足がトンネル施工の経済性・安全性を左右することから,内空変位等の変位観測だけでなく,支保工軸力測定や地耐力載荷試験を実施し,上半仮インバートが必要かどうかの判定やウイングリブ付き支保工の必要性の判断材料とした.
 なお,このトンネルでは坑口部の変状発生時に地すべり的な変動ではないとの判断で,トンネルとしての対処で無事掘削を終わっているが地表面の変動を十分検討して判断を下す必要がある.

表11.11 逢坂山トンネルの蛇紋岩特性表
(欄牟田ほか,1995,26p による)
塊状蛇紋岩葉片状蛇紋岩粘土状蛇紋岩
蛇紋岩の状態硬質破砕状軟質粘土状
蛇紋岩の色暗黒色濃緑色・黄緑色濃緑色・暗灰色
構成鉱物かんらん石・輝石を含む水滑石(すいかっせき:
ブルーサイト;Mg(OH) )
水滑石
ボーリングコア5〜15cmの短棒状
(ハンマーで割れる)
砂状
(手で崩れる)
粘土状
(指でへこむ)
塊状率(%)70〜800〜200
超音波速度(km/sec)4.22.4〜2.9
(2.7)
吸水膨張率(%)1.131.83〜2.41 (2.12)0.19〜0.34 (0.27)
膨張圧(kgf/cm2)0.07〜0.63 (0.35)0.07〜0.09 (0.08)
浸水崩壊度1回の乾湿で崩壊
一軸圧縮強さ
(kgf/cm2)
47.5コア自立せず
試験上能
1.6
(三軸試験)
静弾性係数
(kgf/cm2)
460 (CU)340 (CU)
粘着力(c)
(kgf/cm2)
0 (CU)0 (CU)
内部摩擦角
(°)
31 (CU)25 (CU)
静ポアソン比0.25 (CU)0.23 (CU)
単位体積重量
(kg/cm3)
2.512.07〜2.12
(2.09)
2.15〜2.38
(2.22)
試料のVp
(km/sec)
4.22.4〜2.9
(2.7)
試料のVs
(km/sec)
1.90.76〜0.94
(0.83)
動ポアソン比0.370.45
含水比(%)3.3〜16.5(8.4)6.4〜11.3(9.0)
準岩盤強度
(kgf/cm2)
331.6
地山強度比1〜90.5〜1.0
観 察節理発達するが岩塊は硬い.
ハンマーの強打で割れる.
剥離性に富み,岩片軟らかく,手で砂状になる.指でへこむ程度の柔らかさ.
水を含むと軟弱化する.
注1)( )は平均値である.
注2)地山強度比は準岩盤強度を使用している.

 文献17参照.

表11.12 蛇紋岩トンネルの施工例一覧(1)
トンネル吊種類線吊場所特 徴
神竜幹線
導水
トンネル
(文献13)
農業用水路神竜幹線導水路北海道深川市 北海道を南北に縦断する神居古潭帯を横切って建設されたトンネルで,片岩類の中に蛇紋岩が分布している.
 掘削幅は2.5〜2.7mと小さいが,蛇紋岩区間は円形断面で掘削した.
新登川
トンネル
(文献1,11)
鉄道JR石勝線北海道日高町穂別 最大土かぶり400m,延長5,825mのうち蛇紋岩区間は,1,300mである.蛇紋岩区間は真円の鋼管パイプ支保工と吹付けコンクリートで施工した.支保工ピッチは50cmとした.
 土圧・変位などの計測を行い蛇紋が地山でのトンネル施工の基礎的なデータを収集した.
第2今泉
トンネル
(文献4,5,10)
鉄道九州新幹線熊本県八代市 延長約4,700mのトンネルで,黒瀬川構造帯を横断する.
 蛇紋岩区間の掘削では吹付けによる仮インバートによる閉合で変位速度は小さくなったが,掘削150日後でも4.7mm/月となり長期的な後荷が生じた.二次覆工は鋼繊維補強コンクリートを用いて剛性を高めた.
長峰第2
トンネル
(文献15)
道路海南湯浅道路和歌山県吉備町 中央構造線の南方20kmに位置し,三波川帯,御荷鉾帯を横断する延長3,831mのトンネルである.
 換気坑を兼ねた避難坑を先行して掘削し,地質確認,水抜きを行って本坑を掘削した.蛇紋岩区間では内空変位量と変位速度を基準に増し吹き付け,ロックボルトの増打ちなどで補強を行った.
平岩第一
トンネル
(文献17)
道路一般国道148号新潟県糸魚川市 糸魚川*静岡構造線の西に位置し,三郡帯とそれに迸入する蛇紋岩からなる地域に建設された延長458mのトンネルである.
 坑口が蛇紋岩であったので,ソイルセメントによる押え盛土とパイプルーフで補強して坑口部の施工を行った.坑口部の掘削は側壁導坑先進工法とした.

表11.12 蛇紋岩トンネルの施工例一覧(2)
トンネル吊種類線吊場所特 徴
嵐山
トンネル
(文献2)
道路北海道縦貫自動車道北海道旭川市 神居古潭変成帯を横断する高速道路に建設された延長1,434mのトンネルである.蛇紋岩区間ではフォアパイリング,鏡吹付けコンクリートを行ったほか,変状が発生した箇所では増しボルト,早期のインバート閉合を行った.また,断層部では突発湧水が予想されたので,水抜きボーリングを行った.天端崩落箇所ではエアモルタル,水ガラスにより固結させてから掘削した.三次元の先行変位測定を行ったが,先行変位率は最大46%であった.
常磐
トンネル
(文献7)
道路北海道縦貫自動車道北海道旭川市 神居古潭変成帯を横断する延長1,845mのトンネルである.
 支保構造はウイングリブ付き鋼製支保工を使用し,施工方法は上下半,インバート同時併進工法とした.
青峰
トンネル
(文献9)
鉄道近鉄志摩線三重県鳥羽市 秩父帯に属する主として塊状蛇紋岩が分布する地域に建設された延長2,700mのトンネルである.
 土被りが1D以上確保できる蛇紋岩区間では,余掘りを防ぎインバートの早期閉合を行うことで軟岩並の支保構造とし,スチールファイバー混入吹付けコンクリートで施工した.
 土被りが1D以下の蛇紋岩区間では,ウレタン圧入式フォアパイリングで施工し二次覆工はスチールファイバーコンクリートで行った.掘削はロードヘッダーで行った.
検儀谷
トンネル
(文献6)
道路県道外野勝山線千葉県鋸南町 房総半島を東西に横断する葉山―嶺岡隆起帯を横切る延長約439mのトンネルで,新第三紀の堆積岩類と蛇紋岩が分布する.
 当初フォアパイリング,鏡ボルトなどの補助工法で施工したが,切羽が自立せず天端崩落が発生したため,上半の中央に先進導坑を設け本坑はウレタン注入フォアパイリングにより掘削した.
 また,上半支保の脚部沈下を防ぐために幅1mの拡大ウィングを使用した.泥岩,蛇紋岩が分布する出口側坑口はセメント改良押え盛土を施工した.
逢坂山
トンネル
(文献17)
道路高知自動車道高知市 秩父帯の堆積岩類と黒瀬川構造帯の蛇紋岩からなるトンネルで延長617mである.
 蛇紋岩区間ではロードヘッダーによる掘削とし,リングカット工法とした.補助工法としては上半仮インバート,上半脚部吹付け,フォアパイリング,ウィングリブ付き支保工などを施工した.
北小谷
トンネル
(文献16)
道路一般国道148号長野県小谷村 糸魚川*静岡構造線上に位置するトンネルで,破砕された脆弱な蛇紋岩からなり,延長1,065mである.
 掘削は片状混在岩区間は発破掘削で,蛇紋岩区間は機械掘削であった.蛇紋岩区間では天端崩落が発生し,注入式フォアパイル工法を採用した.大規模に崩落した箇所では復旧後,注入式長尺先受け工(AGF工法)を採用した.大町側坑口は地すべりの発生が予想されたので,アンカー工により斜面を安定させた.

アスベストについて

 近鉄志摩線青峰トンネルでは,透過電子顕微鏡写真の電子回折図形によって蛇紋岩中にクリソタイルが含まれていることを確認した.このため,トンネル内では作業員全員に電動ファン付き呼吸用保護具を装着させて作業に従事させることにした(文献9参照).

 アスベスト(石綿)の詳細については, 石綿と建設工事を参照のこと.

参考文献

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  2. 稲葉英憲・西谷直人・手塚 洋・新田訓弘,1988,神居古潭蛇紋岩地帯にトンネルを掘る 道央自動車道嵐山トンネル.トンネルと地下,第19巻,6号,25−36.
  3. 稲葉英憲・西谷直人・手塚 洋・新田訓弘,1989,神居古潭蛇紋岩地帯にトンネルを掘る (その2) 道央自動車道嵐山トンネル.トンネルと地下,第20巻,5号,15−23.
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