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2.2 調査方法

 トンネル調査で必要な調査方法を以下に述べる.

  調査法全体については,「地盤工学会編,2004,地盤調査の方法と解説《に網羅されている.
 岩石試験などについては,「地盤工学会編,2009,地盤材料試験の方法と解説《が詳しい.

 2.2.1 ボーリング

 現在,トンネル調査でのボーリングは,坑口付近に限られる.ただし,地表踏査や物理探査で大規模な破砕帯が予想されるとか,大量湧水が予想されるといった特殊な場合にはトンネル中間部で必要な調査を行う.

 トンネルは,切羽の状況を観察,確認しながら掘削するのが基本である.この観察には,切羽スケッチ,切羽岩盤の評価,写真撮影のほかに,内空変位測定,天端や支保工脚部の沈下測定,鋼製支保工応力測定,吹付けコンクリート応力測定などが含まれる.
 事前調査による地山分類などは,全体の工費算出では重要な役割をするが,施工時は切羽に現れた地山の変化に対応しながら施工している.

 坑口でのボーリングについては坑口の調査の項で述べるので,ここでは,コアの記載について述べる.

コアの記載

コアの記載に当たっては,徹底して詳細に記載することである.
 そのための工夫はいろいろなされているが,やはりカルテ方式が記載漏れがなく一番良い.ただし,定型的な項目は必要最小限とし,観察者の記載が豊富な方が後々役に立つ.
 特に,岩盤の場合は,このカルテにコアのスケッチを丹念に書いておくと後で非常に役に立つ.最大コア長,平均コア長,RQDなどは,実物で計測するのが基本であるが,場合によってはこのスケッチで記載できる程度の詳細なスケッチが望ましい.

 必要な記載項目は次のようになる.

色調・色調は非常に重要な情報である.堆積岩であれば粒度を反映していることがあるし,火山岩であれば変質作用の影響が推定される.
・コア写真のみでは判断できない場合があり,自分流の色の吊前でも良いので記憶がよみがえるような記載を行っておく.
硬軟・重要な指標である.硬質なコアであればハンマーで叩いたときの音で表現しておくのが良い.軟質なコアであれば手で折れるかどうかと言ったこともしまり具合を判断する上方となる.
コア形状・棒状,短柱状,片状,礫状,砂状,粘土状など.
・棒状コアの場合,コア箱に収めるために1mで切らなければならないが,コアカッターを用いない場合があるので注意を要する.
・変質などで粘土が噛んでいる場合,粘土分が流れて一見礫状に見えることがあるので注意する.
割れ目の状態・割れ目面の状態(夾雑物がない,粘土を挟む,鏡肌がある,擦痕があるなど),割れ目の形態(平滑か凹凸があるかなど),掘削方向に対する傾斜などを記載する.
風化・全体が褐色化し軟質,割れ目の周辺が褐色化,新鮮などで区分する.
コア採取率・ある区間のコアが採取されていなければ判定しやすいが,全体にコアの採取が悪い場合があるので,一定の基準を設けて判定する.
最大コア長・割れ目の方向によってどう判断するか迷うことがある.これも一定の基準を設けて判定する.
RQD・RQDの利点はコア全体にわたって亀裂の頻度を客観的に判定できることである.
・元々の分離面なのか,コアを取り出す時に入ったものなのかといった点も考慮する.
・一般的には10cmであるが,5cmでとる方式もある.
岩級区分田中の岩級区分(電力中央研究所方式)が使いやすい.

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コア記載方法の工夫

 上に述べたコア記載方法は,コアから得られる情報をスケッチと記載で細大漏らさず得ようとする方法である.
 これに対して,最大限の情報を記載すると同時に後の処理を合理化する(補助者に行って貰う)ことを目的に工夫を凝らした記載方法がある.
 つまり,JACICのボーリング柱状図にそのまま入力できる様式を取ったものである.

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tunres221_core_descrip.jpg
コア記載用紙の一例 (30年前の記載例)
・左の欄にコアのスケッチと観察事項を記載している.
・右の欄は採取率,コアの長さと個数,RQD,そして,その他の記載を行う欄を設けている.
・調査の目的によって記載事項は変わってくるので,右の欄はいろいろと工夫することが出来る.
・コアの記載は,工学的性質に結びつく記載と同時に,地質の成因の結びつく記載が重要である.「礫混じり粘性土《が段丘堆積物なのか,崖錐堆積物なのかと言った記載も必要である.複眼的な観察が必要である.

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 これに対して,最大限の情報を記載すると同時に後の処理を合理化する(補助者に行って貰う)ことを目的に工夫を凝らした記載方法がある.
 つまり,JACICのボーリング柱状図にそのまま入力できる様式を取ったものである.

tunres_fig222_1.jpg

JACIC記載方式のコア記載用紙



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