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地形判読

地形図読図

 建設工事に関わる地形地質踏査の準備では、地質図などの地質データ、地すべり分布図などの文献を収集することが第一に必要である。現地に行く前に「必ず行っておくべきことは、地形判読である。
 広い意味での地形判読の方法として、空中写真の判読、地形図の読図があるが、最もとっかりやすいのは、地理院地図(2万5千分の1精度の地形図)の判読である。
 私が最初にやることは、川や谷筋(谷線)を書き込むことである。これによって調査地域全体の特徴をつかむことができる。次にやることは、遷急線、遷緩線を記入することである。遷緩線は侵食の前線となっている場所で、崩壊が発生しやすい場所である。これに対して、遷緩線は崖錐堆積物などが堆積し始める場所に相当する。
 これらの作業は、ほとんど頭を使う必要がなく、ある程度、機械的に進めることができる。ここまで作業すると何となくその地域の地形の特徴が見えてくる。

 2万5千分の1地形図を使った地形判読については、「鈴木隆介、建設技術者のための地形図読図入門」(第1巻から第4巻、古今書院)が最も優れた手引書である。特に、「第1巻 読図の基礎」は、建設工事に携わる技術者であれば、必ず読んでおくべき本だと考えている。大事なことは、地形図の等高線や斜面の形状など地形的な要素のほかに、土地の利用状況、人家の配列、植生などが重要な情報を与えてくれることである。


図1 地形図に水系を入れた図(地理院地図に加筆)
左:函館平野の北、小沼の南西側の地形である。水系を入れただけで、中央左側に平坦な尾根と東が急傾斜で西がなだらかな地形が浮かび上がってくる。この付近は、函館西縁断層帯の延長部に当たる。基盤の地質は、峠下火山砕屑岩類とよばれる中新世から鮮新世の地層で鉱化変質が著しい。それを覆って半固結の粘土・砂・礫が分布している。
右:道東自動車道・白涼トンネル付近の地形である。中央左側にほぼ南北に連続する沢が特徴的である。古第三紀・始新世の浦幌層群・留真累層の礫岩層の東の境界に相当している。

空中写真の判読

 空中写真の実体視による地形判読は、その場所に行ったと同じような光景を上空から見ることができるので非常に有効である。空中写真では細かな地形を判読するよりは対象地域全体の地形的特徴を把握するのが実際的である。地すべり地形であれば地すべり全体の外形を把握し、その中の目立った微地形を抽出することになる。

 実体視はできないが、空中写真判読の手助けとなるのがグ-グルアースの3D表示である。特に、斜面の異常地形を発見するに役立つように思う。

航空レーザー測量図の判読

 航空レーザ測量は、画期的な手法である。特に山地では、空中写真は樹木が邪魔して微細な地形が隠れてしまう。レーザ測量図であれば詳細に微細な地形まで判読できる。
 ただ、レーザ総量図にも独特の癖があるようで、現地での確認を行いながら判読技術を向上させる必要があると感じる。
 最近では、ドローンによって対地高度150mほどで測量できるようになってきている。飛行機やヘリコプターを使わなくても測量できるので、時間、経費とも少なくてすむ。


図2 空中写真測量図(左)と航空レーザ測量図(右)の違い 
(横尾泰広、2014,航空レーザ測量の概説と最新動向。フォレストコンサル、137号、3029-3037)
 この図では、赤楕円で囲まれた沢地形の表現が全く異なることが示されている。その北東側の尾根の地形も情報量が全く違う。

<地形判読に関する文献>


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