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航空レーザ測量図の判読

航空レーザ測量の概要

 航空レーザ測量は画期的な技術である。

 航空機に搭載したレーザ測距装置で地上に向かってレーザ光を発射し、はね返ってくる時間から地表までの距離を測定する。慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)で航空機の姿勢や加速度を計り、レーザ光の発射された方向を補正する。また、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)受信機によって航空機の位置(x,y,z)を高精度で決定する。
 地形判読で使用するレーザ測量図は、樹木などの隙間を通って地上まで到達したレーザ光(ラストパルス)を用いて地形を描く。数値標高モデル(DEM:Digital Elevation Model)という。植生や地物(建物など)を含んだ地形図は、数値表層モデル(DSM:Digital Surface Model)という。

 航空レーザ測量の原理などについては国土地理院のウェブサイトが分かりやすい。
( 航空レーザ測量の仕組み:https://www.gsi.go.jp/kankyochiri/Laser_senmon.html

 日本で最初に航空レーザ測量図を地形判読に用いたのは、Chigira, et al(2004)による1998年福島豪災害地域への適用である。航空レーザ測量図によって1998年に発生した地すべりだけでなく、より古い地すべり地形を抽出した。
 2010年代になると深層崩壊の発生場所を航空レーザ測量図から抽出できる可能性が指摘され、いろいろな事例が示されるようになった。

 2021(令和3)年に「三次元点群データを活用した道路斜面災害リスク箇所の抽出要領(案)」(国土交通省:「R3抽出要領案」)が発表された。道路防災点検箇所の絞り込みにレーザ測量地形図を用いることとしている。
 それ以前の2006(平成18)年8月に「GIS を利用した道路斜面のリスク評価に関する共同研究報告書 道路防災マップ作成要領(案)」(土木研究所ほか)が発表されている。そこでは、航空レーザ計測による数値地形図を必要に応じて利用するとしている。

航空レーザ測量図利用の留意点

 航空レーザ測量図を持って地形地質踏査をする場合の留意点を、少ない経験から幾つか述べる。